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ピックアップ お知らせ 2024.12.09

【報告】人と動物の共生およびSDGs推進シンポジウム 2024 「ペットとの暮らしを活用する豊かな社会 -それを可能にする環境整備-」

【謝 辞】

「ペットとの暮らしを活用できる環境整備を行うことで、人もペットもずっと一緒に幸せに暮らせる街」を実現するというテーマに、多くの企業・団体等の皆様のご支援を賜り、皆様と共に考える機会を提供させていただくことができ、ご来場の皆様からも、今後につながる下記のようなご意見を賜りました。参加された講師方々やご関係の皆様との今後の交流も実現し、皆様のご協力により、大変大きな成果をあげることができたと感じております。ご協力を賜りました皆様に、改めて厚く御礼申し上げます。

皆様のお気持ちに心より感謝し、引き続き、「涙マーク」「ハートマーク」にできるよう、どのように社会の仕組みを作っていくかという課題に向き合い、様々な立場の方々との連携を深め、必要な方が必要な支援を受けることができる「ペットとの共生プラットフォーム」構築に貢献し、この仕組みを通じて様々な「結び目=Knots」を作るお手伝いをし、地域の課題解決やコミュニティの再構築にも繋げていければと考えております。 引き続き、皆様方のご支援・ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

《はじめに》主催者趣旨説明

主催:公益社団法人Knots

人と動物の共生およびSDGs推進シンポジウム 2024『ペットとの暮らしを活用する豊かな社会 -それを可能にする環境整備-』を開催するにあたり、新しい視点での研究と事例発表についての提案にご理解をいただき、特別協賛のマスターズライフ株式会社 神戸ジェームス山 中楽坊様をはじめとする、多くの企業・団体からご支援を賜りました。こうした視点での発表が、今後の新たな社会システム構築への第一歩となり、次の計画へと結びつきます。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。
また、開会に先立ち、赤坂動物病院名誉院長・柴内裕子先生と、同院長・柴内晶子先生より祝電を賜りましたので、ご紹介させていただきました。

主催者である公益社団法人Knots 代表理事・冨永佳与子が司会を務めさせていただき、動画を交えながら、本シンポジウム開催の趣旨説明を行いました。

まもなく、阪神・淡路大震災から30年を迎えます。あの震災では、日本で初めて組織立った動物救援事業が行われ、兵庫県、神戸市、神戸市獣医師会、日本動物福祉協会阪神支部を中心に1,545頭の保護・譲渡が行われました。その一年後に譲渡動物の調査が行われ、成犬・成猫も新しい飼い主に懐き、幸せに暮らしていたことがエビデンスとなり、行政の施設でも、成犬・成猫の譲渡が始まりました。この後、各地に動物愛護センターが設置され、1999年には、動物保護法から動物愛護法へと改正となり、人と動物の関係は、制度の大きな転換点を迎えました。動物愛護法は、動物愛護の法律と思われがちですが、その先に「人と動物の共生する社会の実現を図ること」を目的としています。

神戸市では、日本初の「神戸市人と猫との共生に関する条例」を制定され、「神戸市人と猫との共生推進協議会」を設置。官民協働で共生社会実現を進めています。Knotsは、この協議会の監事を務めています。
そして、2021年、公共の施設としては初めて「共生」と名付けられた「こうべ動物共生センター」が設置されました。民間に運営が業務委託され、現在、Knotsが管理運営業務を受託しています。
私共Knotsは、阪神・淡路大震災の譲渡動物の調査に参加したことをきっかけに設立され、来年25周年を迎えますので、私たちの想いを講演会に先立ちましてお伝えしたいと考え、「こうべ動物共生センター管理運営業務」のプロポーザルの際に作成した動画を再編集したものをご覧いただきました。提案内容で実施できているものもあれば、引き続きチャレンジしているものもあります。

当法人の事業は多方面にわたりますが、一言でお伝えすると、市民ひとりひとりの課題を「涙マーク」に例えると、どうすれば「ハートマーク」な解決にできるのかに取り組むということに集約されます。
今回のシンポジウムでは、「涙マーク」は「高齢・単身社会を迎えている今の日本の課題」であり、この課題に対して、「子どもの数より多いペットたちとの暮らしを活用」して、「ハートマーク」にできないかというテーマです。講演と事例発表を通して、「人もペットもずっと一緒に幸せに暮らせる街」を実現する方策を皆様と考える機会といたしました。

【プログラム】
各項目の報告ページは、下記のタイトルをクリックして表示してください。

《はじめに》主催者趣旨説明

《第1部》
講演「動物が人にもたらす健康効果」
講師:谷口 優 先生(国立研究開発法人 国立環境研究所 主任研究員/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 協力研究員)

《感謝状贈呈式》

《第2部》
人とペットが幸せに暮らせる環境整備をどのように行うか?

【企画趣旨】

「ペットを飼っている人の介護費は、飼っていない人の約半分に抑制」「犬を飼っている人は、非飼育者に比べて認知症発症のリスクが40%低い」という東京都健康長寿医療センターの2023年研究発表のリリースは、ペットの存在が、私たち人間にとって如何に有益な存在であるかを、改めて社会的価値として示すものでした。
15歳未満の子どもよりペットが多く、単身世帯が38%(令和2年国勢調査)で、2040年には65歳以上が人口の34.5%と推計される(国立社会保障・人口問題研究所)日本では、「高齢者とペット」がこの効用を活用して、双方が幸せに人生を全うしていく社会の構築が、この国に新たな価値をもたらす可能性があります。「不確実性の時代、自殺の増加、老後の不安」と、漠然とした不安の中で人生を全うしなければならないことが、私達の社会の明るさを奪っています。「大好きなペットと一緒に明るい老後を過ごせる」仕組みができれば、老後の不安がひとつ減り、未来に小さな明るい火が灯ります。貢献できる明るいビジョンが明確になれば、関連する事業におけるイノベーションや新たな事業の創出も起こり易くなります。
当法人では、支援の必要な方が支援を受けられるペットとの共生プラットフォームを構築し、この社会システムを通じて、地域の課題解決やコミュニティの再構築に貢献できると考えています。特に防災の面では、プラットフォームでの日常的な情報共有が、緊急時に「誰をどのように支援すれば良いか」事前に準備することを可能にします。支援の必要な方は、別の面では支援を提供する側にもなり、様々な世代の様々な課題解決を図ることができるコミュニティの力の醸成に貢献します。
犬・3万年、猫・1万年とも言われる、人と犬・猫の共生の歴史の中で今を考える時、ヒトが作った「社会」という場に、彼らを「家族」として位置付けていく途上にあると考えられます。その中で、ひとつの大きな課題は、「居場所」にあります。日本ペットフード協会の調査では、飼えない理由として「集合住宅に住んでいて、飼育が認められていない」ことが最大の理由第1位となっています。行政の引き取り理由の中でも、高齢者の施設入所は大きな割合を占めます。能登半島地震での避難所の課題も、記憶に新しいところです。この問題の解決には、ペットの適正飼養の課題も重要です。
今回のシンポジウムでは、冒頭の東京都健康長寿医療センターの研究を行われた神戸市出身の谷口優先生を講師にお迎えして、『ペットとの暮らしを活用する豊かな社会-それを可能にする環境整備-』をテーマとし、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会のひとつのモデルとして、「人もペットもずっと一緒に幸せに暮らせる街」を実現する方策を皆さんと考えたいと思います。

共生プラットフォームの概念図
PIIA Knots ‘Always Be Together’ Platform

【企画概要】

日 時:2024年10月27日(日)13:00~16:00
場 所:神戸ポートピアホテル
入場料:無料(事前登録受付中)
対 象:自治体関係者/動物関連事業関係者/まちづくり関連事業関係者/学生/一般
主 催:公益社団法人Knots
特別協賛:マスターズライフ株式会社 神戸ジェームス山 中楽坊
協 賛:株式会社ピーアンドピー浜松/株式会社福祉開発研究所/株式会社ティエスコーポレーション/株式会社商船三井さんふらわあ/株式会社ラ・ショエット
協 力:NPO法人老いの工学研究所/新日本カレンダー(株)ペピイグループ ペピイ・ハッピープレイス TAMATSUKURI/社会福祉法人神戸海星会 グループホームうみほし魚崎
後 援:環境省/兵庫県/神戸市/一般財団法人神戸観光局/公益社団法人日本医師会/一般社団法人神戸市医師会/公益社団法人日本動物病院協会/公益社団法人日本獣医師会/一般社団法人兵庫県獣医師会/公益社団法人神戸市獣医師会/公益財団法人日本動物愛護協会/公益社団法人日本愛玩動物協会/公益社団法人日本動物福祉協会/社会福祉法人神戸市社会福祉協議会/公益社団法人全国有料老人ホーム協会/公益社団法人全国老人福祉施設協議会/一般社団法人シルバーサービス振興会/一般社団法人全国旅行業協会/一般社団法人日本旅行業協会/兵庫県弁護士会/神戸商工会議所/多可町商工会/株式会社高齢者住宅新聞社
告知協力:神戸北の坂ホテル/ホテルプラザ神戸/六甲山アスレチックパークGREENIA/宮崎カーフェリー株式会社/FARM CIRCUS/阪九フェリー株式会社

当法人は、兵庫県が県内の企業や団体など、多様な主体が連携して「オール兵庫」で社会的課題の解決と地域活性化の両立を図る公民連携組織として設置した「ひょうごSDGs Hub」のメンバーで、この事業は以下のウェブページで紹介されています。

「ひょうごSDGs Hub」での紹介ページ

シンポジウム当日に、会場で配布させていただいた抄録
開催報告書

 

参考資料

《人とペットの共生 -阪神・淡路大震災30年の振り返りと現況-》

来年1月には、阪神・淡路大震災から30年となります。発災時には、初めて組織的な動物救援事業が行われ、改めて人とペットとの絆の強さに気付かされました。その後、動物愛護センターの整備、今は当たり前となった行政の成犬・成猫の譲渡も始まり、1999年には、動物愛護法への改正も行われます。当法人も阪神・淡路大震災の動物救援事業をきっかけに設立されました。

■ 人とペットとの関係の変化

阪神・淡路大震災以前には、第1次ペットブームがあり、ラブラドールやゴールデン・レトリーバー、シベリアン・ハスキーなどの大型犬ブームでした。1987年には、日本動物病院福祉協会(現:公益社団法人日本動物病院協会・JAHA)が、厚生労働省より高齢者福祉で社団法人許可を受けます。CAPPー人と動物のふれあい活動(Companion Animal Partnership Program)-高齢者施設、病院、学校などを訪問し、動物のもつ温もりや優しさにふれていただく広義でアニマルセラピーと呼ばれる活動-は、1986年から始まり、無事故で2万3千回を超え、現在も続いています。(JAHAウェブサイトより引用)
阪神・淡路大震災から30年の間に、感染症の8割を占める人獣共通感染症対策や迷惑防止のみならず、人と動物の相互作用を調査し、活用する試みもなされるようになりました。所謂「アニマルセラピー」と言われる癒し効果の活用や、ペットを飼育する責任を自覚することによる「自立支援(生きがい作り)」、「命の大切さや共感力を育む教育・青少年の健全育成」「身体障害者補助犬」「警察犬・災害救助犬・様々な探知犬・付添犬等の活躍」などです。飼い主とペットの間に、ヒトの母子関係と同様に、視線により幸せホルモンのオキシトシンが分泌される生理学的メカニズムが存在する研究成果は、人とペットの特別な関係の科学的な裏付けとして、広く知られるようになりました。また、当法人が2015年に開催した国際会議でも、「ペットを飼育する高齢者の日常生活での不満の少なさ」が報告され、内閣府調査では不満のある高齢者3割に対し、ペットを飼育する高齢者に対しての調査では、不満がある人は、僅か7%でした。
2023年、ペットは社会的存在となりつつあり、マイクロチップの義務化も始まりました。防災の面でも、ペットは同行避難とするなど、制度面も変化してきています。

 

■ ペットの数

2000年頃からの第2次ペットブームにより小型犬にシフトし、2008年には、犬の飼育が1310万頭、猫が1090万頭と過去最高となります。その後、ペットの飼育数は減少傾向となり、2023年の犬の飼育頭数は、6,844千頭、猫は、9,069千頭(合計1591.3万頭)となっています。日本人の人口も、2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じており、2023年は、1億2435.2万人(日本人1億2119.3万人)となっています。15歳未満の人口は、1417.3万人で、ペットの飼育頭数が上回っている状況です。

 

■ 集合住宅のペット可

1997年には、「中高層共同住宅標準管理規約(現:マンション標準管理規約)」で、ペット飼育については管理規約に定める事項とされ、マンションみらい価値研究所のレポート(2022年)によれば、2003年にペット可に大きく切り替わり、2012年以降竣工の専有部分が住居でペット不可とする管理組合は存在していない一方、ペット可の管理組合の割合は、51.8%に止まっています。賃貸住宅では、2022年12月の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」『できれば検索』ランキングで、近畿圏で第4位、首都圏で第6位と高いニーズを示していますが、同サイトの実際の物件は、18.4%と日本ペットフード協会の飼わない理由の調査第1位「(住んでいる)集合住宅で許可されていない」を裏付けるような状況です。

 

■ ペットを取り巻く産業

阪神・淡路大震災以降、「ペットは家族の一員」とする考え方が広まります。ペットの室内飼育が一般的となり、ペットのケアにも消費が向かうようになります。「ペットフード・おやつ」「トイレタリー用品」「歯磨き・サプリメント」「獣医療の高度化」「トリミング」「しつけなどのトレーニング」「ペットシッター・ホテル」など、飼育頭数は減っても、掛ける費用は多様化し、増大しています。矢野経済研究所によれば、この市場規模は、2022年見込みで、約1兆8千億円です。現在、ペットの平均寿命は、犬が14.2歳、猫が14.7歳となり、介護予防や高齢化に対応する商品や言葉で状況を伝えられないペットの為にA Iを使って状況を把握するアプリなど、異業種からの参入も増えています。
特にペット保険は、これまで子会社などで販売していた大手保険会社が、直接販売するようになり、注目されています。

 

■ 「一緒にお出掛け」する需要も-ペットツーリズム

当法人も2000年にペットと同宿希望の調査を行い、8割を超える飼い主が潜在希望を持っている調査結果から、JTBの「ペットと行く旅行」開発に尽力しました。また、2001年には、阪神・淡路大震災復興記念事業にて「ドッグラン21」を開催。その後、六甲山カンツリーハウスで春・秋に期間限定営業が実施されました。「ペットと泊まれる宿」は、近年、高級感のある宿泊施設も増え、都市型ホテルにもペット可の部屋が整備されるようになってきています。「ドッグラン」も高速道路のサービスエリアにも整備される程、身近なものとなりました。この他にも、一緒に入れるカフェやレストランなども関心を集めています。所謂「猫カフェ」のような触れ合いができるものや、これを活用した保護犬・猫の為のカフェ営業の取り組みもあります。
ペットツーリズムによる地域活性化にも注目が集まっており、ペットと安全に楽しく過ごせる場所や移動手段の情報収集とその提供方法への取り組みも課題です。ペットツーリズムによる、「高齢者が安心して犬とお出掛けしやすくなる仕組みづくり」は、その地域の方にも活用されるものであり、ペットツーリズムの推進は、「健康で楽しく温かい街づくり」としても機能します。
暑い日の車による移動の際の熱中症対策は、ペットの命にも関わる為、対策が求められます。

 

■ ペットと暮らせる場所

一緒に住む為の部屋にこだわり、戸建住宅の設計時や、賃貸住宅にペットと暮らす工夫を取り入れるところも出てきました。
高齢者の施設といっても様々ですが、ペットと入居できる施設も見かけるようになりました。最近、関西で注目されているのが、シニア向け分譲マンションです。分譲マンションのペット可と基本的には同じなので、特別なこともなく、自然に受け入れられています。単身入居の方も増えているそうです。ここで唯一の課題は、万が一のことが飼い主さんにあった場合の対策です。病気になった場合の預け先や、亡くなられた場合のペットの行先の保証ができれば、課題は解決していけそうです。その際の費用のカバーに、保険や信託なども活用できる可能性があります。
また、介護状態になった場合、ヘルパーさんに助けて頂くことになりますが、現況では、介護保険の対象ではないので、これが、介護保険の対象とできれば、国家資格となった動物看護師の存在もあり、介護の世界にも新たなビジネスチャンスとなります。
最近では、ペットと一緒に入れるお墓も登場しています。様々な理由から、一緒に入ることは難しいとされてきましたが、そもそものお墓の在り方について、永代供養や墓仕舞いが社会課題となる中、檀家さんの希望に応えるなどして、ペットと一緒に入れるお墓を整備されるお寺や一般分譲墓地にも専用区画が設けられるところも出てきています。

「ゆりかごから墓場まで、家族の一員としてのペットのケアと、ペットと一緒に〇〇できる」ことが、新たなビジネス機会を生んでいます。