お知らせ

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開催告知 2024.01.12

【お知らせ】人と動物の共生およびSDGs推進シンポジウム 2024 「ペットとの暮らしを活用する豊かな社会 -それを可能にする環境整備-」

【企画趣旨】
「ペットを飼っている人の介護費は、飼っていない人の約半分に抑制」「犬を飼っている人は、非飼育者に比べて認知症発症のリスクが40%低い」という東京都健康長寿医療センターの2023年研究発表のリリースは、ペットの存在が、私たち人間にとって如何に有益な存在であるかを、改めて社会的価値として示すものでした。
15歳未満の子どもよりペットが多く、単身世帯が38%(令和2年国勢調査)で、2040年には65歳以上が人口の34.5%と推計される(国立社会保障・人口問題研究所)日本では、「高齢者とペット」がこの効用を活用して、双方が幸せに人生を全うしていく社会の構築が、この国に新たな価値をもたらす可能性があります。「不確実性の時代、自殺の増加、老後の不安」と、漠然とした不安の中で人生を全うしなければならないことが、私達の社会の明るさを奪っています。「大好きなペットと一緒に明るい老後を過ごせる」仕組みができれば、老後の不安がひとつ減り、未来に小さな明るい火が灯ります。貢献できる明るいビジョンが明確になれば、関連する事業におけるイノベーションや新たな事業の創出も起こり易くなります。
当法人では、支援の必要な方が支援を受けられるペットとの共生プラットフォームを構築し、この社会システムを通じて、地域の課題解決やコミュニティの再構築に貢献できると考えています。特に防災の面では、プラットフォームでの日常的な情報共有が、緊急時に「誰をどのように支援すれば良いか」事前に準備することを可能にします。支援の必要な方は、別の面では支援を提供する側にもなり、様々な世代の様々な課題解決を図ることができるコミュニティの力の醸成に貢献します。
犬・3万年、猫・1万年とも言われる、人と犬・猫の共生の歴史の中で今を考える時、ヒトが作った「社会」という場に、彼らを「家族」として位置付けていく途上にあると考えられます。その中で、ひとつの大きな課題は、「居場所」にあります。日本ペットフード協会の調査では、飼えない理由として「集合住宅に住んでいて、飼育が認められていない」ことが最大の理由第1位となっています。行政の引き取り理由の中でも、高齢者の施設入所は大きな割合を占めます。能登半島地震での避難所の課題も、記憶に新しいところです。
今回のシンポジウムでは、冒頭の東京都健康長寿医療センターの研究を行われた神戸市出身の谷口優先生を講師にお迎えして、『ペットとの暮らしを活用する豊かな社会-それを可能にする環境整備-』をテーマとし、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会のひとつのモデルとして、「人もペットもずっと一緒に幸せに暮らせる街」を実現する方策を皆さんと考えたいと思います。

共生プラットフォームの概念図
PIIA Knots ‘Always Be Together’ Platform

【企画概要】
日 時:2024年10月27日(日)13:00~16:00
場 所:神戸ポートピアホテル
入場料:無料
対 象:自治体関係者/動物関連事業関係者/まちづくり関連事業関係者/学生/一般
主 催:公益社団法人Knots

【プログラム】

《はじめに》主催者趣旨説明

《第1部》
講演「動物が人にもたらす健康効果」
講師:谷口 優 先生(国立研究開発法人 国立環境研究所 主任研究員/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 協力研究員)

《第2部》
人とペットが幸せに暮らせる環境整備をどのように行うか?

  • 事例発表 ①「高齢者の住まい(サービス付高齢者住宅やペットと入れる施設事例)調査」(公益社団法人Knots)
  • 事例発表 ②「ペットツーリズムの推進」(一般財団法人 神戸観光局 専務理事 中西 理香子 氏)
  • 事例発表 ③「ITが可能にする飼い主と地域を繫ぐ環境整備 -Wan!Passの取り組み事例から-」(ペッツオーライ株式会社 代表取締役 小早川 斉 氏)
  • 質疑応答

【講師プロフィール】
◎谷口 優(たにぐち ゆう)先生
国立研究開発法人 国立環境研究所 主任研究員
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 協力研究員
東京大学客員研究員
メルボルン大学客員研究員
兵庫県神戸市出身

同センター社会参加と地域保健研究チームの「ペット飼育と社会保障費との関連性」に関する研究論文「Pet Ownership-Related Differences in Medial and Long-Term Care Costs among Community-Dwelling Older Japanese」(和訳:地域在住高齢者におけるペット飼育者・非飼育者の医療費及び介護費の差異について)を米国科学誌「PLOS ONE(プロス ワン)」に発表(2023年1月)。

犬の飼育及び運動習慣の有無別にみた認知症発症オッズ比

《受賞歴》
2011年 The Gerontological Society of America. Health Science person-in-training award
2016年 日本老年医学会優秀論文賞
2018年 日本公衆衛生学会総会優秀口演賞
2018年 長寿科学賞
2020年 Geriatrics & Gerontology International Best Article
2024年 日本老年医学会Young Investigator Award

◎中西 理香子(なかにし りかこ)氏
一般財団法人 神戸観光局 専務理事
神戸市役所採用後、観光行政を中心に、港湾や広報等の分野でキャリアを重ね、令和2年4月より灘区長として2年間従事。その後、令和4年4月より一般財団法人神戸観光局専務理事に着任。
一昨年より神戸観光局において「ペットと旅するKOBE」事業を立ち上げ、ペット連れでの来神者に対する情報発信とマナー啓発を実施し、神戸のペットツーリズムを推進している。

◎ 小早川 斉(こはやかわ ひとし)氏
ペッツオーライ株式会社 代表取締役
公益社団法人Knots正会員
株式会社リクルートの新規事業コンテストでグランプリを獲得しペットの「病気」「しつけ」「フード」など、24時間いつでもアプリから専門家に相談できるサービス「ペッツオーライ PET’S ALL RIGHT」を事業化。その後、事業成長を目的にリクルートからエグジットし、ペッツオーライ株式会社を設立。代表取締役に就任。
2022年に、犬同伴可の施設・店舗を検索することができ、狂犬病や混合ワクチンの接種証明書をデジタル化し施設や店舗利用時にデータでの証明書野やり取りが可能となるアプリ「Wan!Pass(ワンパス)」をリリース。
また、ドッグトレーナーが犬のしつけ習得レベルを認定する「Wan!Pass認定」を開発し、ペット入店可能な各店舗が入店条件にしつけレベルを設定でき、入店時にアプリを使い入店資格を証明できる取り組みをスタートさせた。
Wan!Passでは一般社団法人軽井沢観光協会やその他自治体や観光協会と協業し、ドッグツーリズムや地方創生の新たな可能性の開拓に挑戦している。


 

参考資料

《人とペットの共生 -阪神・淡路大震災30年の振り返りと現況-》

来年1月には、阪神・淡路大震災から30年となります。発災時には、初めて組織的な動物救援事業が行われ、改めて人とペットとの絆の強さに気付かされました。その後、動物愛護センターの整備、今は当たり前となった行政の成犬・成猫の譲渡も始まり、1999年には、動物愛護法への改正も行われます。当法人も阪神・淡路大震災の動物救援事業をきっかけに設立されました。

■ 人とペットとの関係の変化

阪神・淡路大震災以前には、第1次ペットブームがあり、ラブラドールやゴールデン・レトリーバー、シベリアン・ハスキーなどの大型犬ブームでした。1987年には、日本動物病院福祉協会(現:公益社団法人日本動物病院協会・JAHA)が、厚生労働省より高齢者福祉で社団法人許可を受けます。CAPPー人と動物のふれあい活動(Companion Animal Partnership Program)-高齢者施設、病院、学校などを訪問し、動物のもつ温もりや優しさにふれていただく広義でアニマルセラピーと呼ばれる活動-は、1986年から始まり、無事故で2万3千回を超え、現在も続いています。(JAHAウェブサイトより引用)
阪神・淡路大震災から30年の間に、感染症の8割を占める人獣共通感染症対策や迷惑防止のみならず、人と動物の相互作用を調査し、活用する試みもなされるようになりました。所謂「アニマルセラピー」と言われる癒し効果の活用や、ペットを飼育する責任を自覚することによる「自立支援(生きがい作り)」、「命の大切さや共感力を育む教育・青少年の健全育成」「身体障害者補助犬」「警察犬・災害救助犬・様々な探知犬・付添犬等の活躍」などです。飼い主とペットの間に、ヒトの母子関係と同様に、視線により幸せホルモンのオキシトシンが分泌される生理学的メカニズムが存在する研究成果は、人とペットの特別な関係の科学的な裏付けとして、広く知られるようになりました。また、当法人が2015年に開催した国際会議でも、「ペットを飼育する高齢者の日常生活での不満の少なさ」が報告され、内閣府調査では不満のある高齢者3割に対し、ペットを飼育する高齢者に対しての調査では、不満がある人は、僅か7%でした。
2023年、ペットは社会的存在となりつつあり、マイクロチップの義務化も始まりました。防災の面でも、ペットは同行避難とするなど、制度面も変化してきています。

 

■ ペットの数

2000年頃からの第2次ペットブームにより小型犬にシフトし、2008年には、犬の飼育が1310万頭、猫が1090万頭と過去最高となります。その後、ペットの飼育数は減少傾向となり、2023年の犬の飼育頭数は、6,844千頭、猫は、9,069千頭(合計1591.3万頭)となっています。日本人の人口も、2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じており、2023年は、1億2435.2万人(日本人1億2119.3万人)となっています。15歳未満の人口は、1417.3万人で、ペットの飼育頭数が上回っている状況です。

 

■ 集合住宅のペット可

1997年には、「中高層共同住宅標準管理規約(現:マンション標準管理規約)」で、ペット飼育については管理規約に定める事項とされ、マンションみらい価値研究所のレポート(2022年)によれば、2003年にペット可に大きく切り替わり、2012年以降竣工の専有部分が住居でペット不可とする管理組合は存在していない一方、ペット可の管理組合の割合は、51.8%に止まっています。賃貸住宅では、2022年12月の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」『できれば検索』ランキングで、近畿圏で第4位、首都圏で第6位と高いニーズを示していますが、同サイトの実際の物件は、18.4%と日本ペットフード協会の飼わない理由の調査第1位「(住んでいる)集合住宅で許可されていない」を裏付けるような状況です。

 

■ ペットを取り巻く産業

阪神・淡路大震災以降、「ペットは家族の一員」とする考え方が広まります。ペットの室内飼育が一般的となり、ペットのケアにも消費が向かうようになります。「ペットフード・おやつ」「トイレタリー用品」「歯磨き・サプリメント」「獣医療の高度化」「トリミング」「しつけなどのトレーニング」「ペットシッター・ホテル」など、飼育頭数は減っても、掛ける費用は多様化し、増大しています。矢野経済研究所によれば、この市場規模は、2022年見込みで、約1兆8千億円です。現在、ペットの平均寿命は、犬が14.2歳、猫が14.7歳となり、介護予防や高齢化に対応する商品や言葉で状況を伝えられないペットの為にA Iを使って状況を把握するアプリなど、異業種からの参入も増えています。
特にペット保険は、これまで子会社などで販売していた大手保険会社が、直接販売するようになり、注目されています。

 

■ 「一緒にお出掛け」する需要も-ペットツーリズム

当法人も2000年にペットと同宿希望の調査を行い、8割を超える飼い主が潜在希望を持っている調査結果から、JTBの「ペットと行く旅行」開発に尽力しました。また、2001年には、阪神・淡路大震災復興記念事業にて「ドッグラン21」を開催。その後、六甲山カンツリーハウスで春・秋に期間限定営業が実施されました。「ペットと泊まれる宿」は、近年、高級感のある宿泊施設も増え、都市型ホテルにもペット可の部屋が整備されるようになってきています。「ドッグラン」も高速道路のサービスエリアにも整備される程、身近なものとなりました。この他にも、一緒に入れるカフェやレストランなども関心を集めています。所謂「猫カフェ」のような触れ合いができるものや、これを活用した保護犬・猫の為のカフェ営業の取り組みもあります。
ペットツーリズムによる地域活性化にも注目が集まっており、ペットと安全に楽しく過ごせる場所や移動手段の情報収集とその提供方法への取り組みも課題です。暑い日の車による移動の際の熱中症対策は、ペットの命にも関わる為、対策が求められます。

 

■ ペットと暮らせる場所

一緒に住む為の部屋にこだわり、戸建住宅の設計時や、賃貸住宅にペットと暮らす工夫を取り入れるところも出てきました。
高齢者の施設といっても様々ですが、ペットと入居できる施設も見かけるようになりました。最近、関西で注目されているのが、分譲タイプのサ高住(サービス付き高齢者住宅)です。分譲マンションのペット可と基本的には同じなので、特別なこともなく、自然に受け入れられています。単身入居の方も増えているそうです。ここで唯一の課題は、万が一のことが飼い主さんにあった場合の対策です。病気になった場合の預け先や、亡くなられた場合のペットの行先の保証ができれば、課題は解決していけそうです。その際の費用のカバーに、保険や信託なども活用できる可能性があります。
また、介護状態になった場合、ヘルパーさんに助けて頂くことになりますが、現況では、介護保険の対象ではないので、これが、介護保険の対象とできれば、国家資格となった動物看護師の存在もあり、介護の世界にも新たなビジネスチャンスとなります。
最近では、ペットと一緒に入れるお墓も登場しています。様々な理由から、一緒に入ることは難しいとされてきましたが、そもそものお墓の在り方について、永代供養や墓仕舞いが社会課題となる中、檀家さんの希望に応えるなどして、ペットと一緒に入れるお墓を整備されるお寺や一般分譲墓地にも専用区画が設けられるところも出てきています。

「ゆりかごから墓場まで、家族の一員としてのペットのケアと、ペットと一緒に〇〇できる」ことが、新たなビジネス機会を生んでいます。