【審査員のコメント】
ヒトと動物の関係学会 常任理事 横山章光氏
(熊本市動物愛護センター「犬殺処分ゼロ 熊本市の挑戦」をグランプリに選出)
熊本市では、様々な関係者が一つの目標に向かって一丸となり、素晴らしい仕事を成し遂げている。これは、「協力体制さえできれば、どこでも可能である」ことを証明したと言ってもいい。そのモデル事業を見事に展開したということは、大いにたたえられるべきである。もう、言い訳はきかないのだ。
ペットウェル編集 斉藤則子氏
(熊本市動物愛護センター「犬殺処分ゼロ 熊本市の挑戦」そグランプリに選出)
現在、各地の自治体で、犬猫の殺処分を減らす取り組みが本格化していますが、熊本市の犬の生存率82.1%(2007年度)はすごい数字だと思います。
犬の生死を分かつ最前線で、一つでも多くの命を救うために、どれほどの努力をされているのかと思うと本当に頭が下がります。
譲渡のご苦労はもちろん、安易に手放そうとする飼い主の説得は、非常にストレスフルなエネルギーのいる仕事だと思います。
熊本市の実績が、全国の同じ立場で仕事をする方々の大きな励ましになるよう願っています。
私自身は、ペットと暮らす素晴らしさや楽しさについて、日々情報発信していく立場にありますが、気づかない間に、うわべだけのペットライフに憧れて、無責任に犬猫を飼い始める人を増やすことに加担することになっていないか。
あらためて自戒の機会にしたいと思います。
どうぶつ写真家 児玉小枝氏
(熊本市動物愛護センター「犬殺処分ゼロ 熊本市の挑戦」をグランプリに選出)
私たちの家族の一員である犬たち猫たちの命と心がまるでゴミのように捨てられ“殺処分”されているという残酷な現実。
この問題の元凶はひとえに「無知で無責任な飼い主の存在」にあります。
そして、この問題を改善し、犬猫の命と心が尊ばれる社会に近づけていくためには捨てられる命を減らす努力(啓発、法律改正など)をしつつ、捨てられてしまった命を救う(譲渡)、という両輪の活動が不可欠です。
さらには、やむなく殺処分をしなければならない場合も、最も苦痛の少ない方法で行う配慮が必要だと思います。
熊本市動物愛護センターさんは、まさにそのすべての課題に真正面から真摯に取り組み、多大な成果をあげてこられました。
市民に対して、命の大切さや終生飼養の責任について啓発・指導しつつ、それでも捨てられてしまった犬猫たちには、新たな家族を探す努力を惜しまず、数多くの命を救ってこられた功績は甚大です。さらに、やむなく殺処分を行う場合も全国の都道府県で一般的に行われているガス室での窒息死ではなく、注射による、極めて苦痛の少ない方法が選択されていると聞きました。
この熊本市動物愛護センターさんの素晴らしい取り組みと成果が、モデルケースとして全国のほかの自治体にも広がっていき、この世に生を受けながら人間の身勝手によって命を奪われていく不幸な犬猫の数が、いつか「0」になる日が来るよう、願ってやみません。
厚生労働大臣指定法人 社会福祉法人 日本聴導犬協会 会長 有馬もと氏
(キャノン株式会社 CM「EOS Kiss X2」をグランプリに選出)
熊本市動物愛護センター様の取り組み、本当にすばらしいです。
無責任な飼い主にかわって、捨てられた命を保護したり、しつけをほどこしたり、または、残念ですが、殺処分をしなくてはならない職員の方々の努力と熱意に、深い敬意を表します。
私事になりますが、(福)日本聴導犬協会は伊那保健所の小林美智子元所長(現・長崎県の活水女子大学教授)の英断で創立し、今年14年目を迎えることができます。
一人の勇気ある決意が、世の中を動かす現実を身をもって感じ、勇気をいただいております。
熊本市動物愛護センター様の勇気ある宣誓と活動にエールを送ると同時に、日本にちらばっている同じ意志をもつ同士でのコラボ・ワークがなんとか図れないものかと、頭をめぐらします。命を救う活動に国境はなく、日本を人にも動物にもやさしい国にするためにも、協働のネットワークの必要性を感じるからです。
熊本市の勇気ある取り組みにエールを送らせていただきます。
キャノン様のCMをグランプリに推薦させていただいた理由は、動物保護活動へのひとつのヒントをいただいたからと、身近な感じがしました。
愛犬家の方のしつけ教室を13年行っておりますが、犬が好きな方であっても、犬に感情があり、悲しかったり、さびしかったりすることを、思いつかない方も意外と多いんですね。
当たり前のことですが、動物たちも、人と同じように感情があり、家族愛があり、ひとつひとつが大事な命であるということが、楽しく、軽妙な音楽と共に伝わることが、お子さんから大人やお年寄りまで、高い影響力を持つのではないかと、考えました。動物愛護の推進も、固く、重いものではなく、歌やビジュアルから、浸透する方が効果的だと、私も考えているので、映像的、音楽的にも、動物愛護の活動的にも効果があると思いました。
【総評】
NPO法人 Knots 理事長 冨永佳与子
ノミネートにも、環境に配慮した商品や活動が増えてきました。地球規模の環境問題に関心を持ち、身近な動物だけでなく野生動物の生息環境にも想いを馳せる方も増えておられるのでしょうか。
勿論、人々と生活を共にする伴侶動物達との関係においても、災害時の同行避難や補助犬と共に働ける企業など、人と動物の共生に対する行動は年々深いものへと進化していっていることが分かります。
そのような中、グランプリに選ばれた熊本市動物愛護センターは、むしろ問題としては長い歴史のある取り組みです。厚生労働省、環境省からの通達もあり、全国の行政施設は、処分から譲渡へと大きな方向転換を迫られています。
このような施設へ持ち込まれる動物達を減らしていくのも大きな課題ですし、責任ある譲渡をどう実現していくかが問われています。動物達の問題の背景には、関わる人々の様々な問題があります。これらの人々の問題を解決しない限り、根本的な解決は難しいでしょう。
『人の福祉を解決してこその動物の福祉』。どちらも整った時に初めて、共に幸せに生きられる豊かな社会が実現するのだと思います。
2009年も更に人と動物が幸せになれますよう沢山の商品、CM、活動が生まれることを願って、皆様のノミネートをお待ち申し上げます。
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