〔審査員のコメント〕
・ヒトと動物の関係学会監事 井本史夫氏
地方自治体が、音頭をとってはじめたことに意義があります。
地域社会を作っていくに際して、飼い主としての人は無論のこと犬たちも十分お役に立てるのだということが、地域住民に目でわかる方法だと思いますので、高く評価します。
・P-WELL通信編集長 斉藤則子氏
(近畿タクシー株式会社をグランプリに選出)
私自身、愛犬をタクシーで遠方の救急動物病院に運び込んだ経験があります。幸い犬好きの運転手さんだったので、嫌な顔もされず乗車できました。深夜3時頃で、帰りのタクシーが拾えないだろうからと、診療が終わるのをずっと待ってくださいました。気が動転している時だっただけに、親切さが身にしみました。車の運転のできない高齢の飼い主さんも増えています。ペットOKのタクシーがあれば、とても心強いと思います。
・どうぶつ写真家 児玉小枝氏
平成12年の総理府世論調査によると、「ペット飼育による迷惑」という問いへの答えの第一位が「散歩している犬のふんの放置など飼い主のマナーが悪い」というもので、調査対象者の58.1%が、この項目を挙げていました。 欧米に比べて日本ではまだまだ犬の地位が低く、「ペット同居可」の集合住宅も増えつつあるとはいえ、犬猫を家族に持つ家庭は地域社会の中で肩身が狭いのが現状です。その原因の一つに、「飼い主のマナーの悪さ」があげられます。
また、飼い主が犬を“不用”になったと保健所に持ち込み殺処分する理由の中に「咬みぐせ」「鳴き声」「犬を制御できない」というものがあります。
そういった問題を解決し、犬が地域の一員として安心して暮らせる社会を実現するためにも、子犬時代からのしつけや糞尿の処理など、飼い主のモラルとマナーの向上が求められています。
そんな中、犬と飼い主さんとが腕章をつけ、地域防犯や子どもの情操教育に一役買うという「わんわんパトロール隊」の活動は、社会への貢献という意味に加え、犬や飼い主さんの社会的地位を上げるという意味でも、大変有意義な取り組みではないかと感じました。わんわんパトロール隊に参加される飼い主さんたちには、しつけやマナーの面でも、他の飼い主さんの良きお手本になっていただければとの期待と願いを込めて、グランプリに選出させていただきました。わんわんパトロール隊の今後ますますのご活躍をお祈りいたしております。
・厚生労働大臣指定法人 社会福祉法人 日本聴導犬協会会長 有馬もと氏
◆近畿タクシー株式会社
運転免許をもっていない私にとっては「救いの神」とも言えるサービスですね。心から、近畿タクシーさん、ありがとうございます。
以前、大阪で黒塗りのタクシーに新大阪から乗ったときに「お客さん、車の中、犬臭くないですか?」と、聞かれました。「気づきませんでしたけど、犬、乗せられたんですか?」と、聞くと、飼い主さんが病気の犬をかごに入れて困っていたので乗せたとおっしゃってました。
「困ってはるから、しゃーない」と運転士さんは、苦笑いしてましたが、『犬を乗せてくれる』かどうか、各々運転士さんの心つもりで決まるのでは、1台、1台聞いて回らなければならなかった飼い主さんもしんどかったでしょう。精神的なつらさもよく理解できます。
近畿タクシーさんのように、それをサービスの一環として打ち出していただければ、私たち愛犬家にとって、どんなに気が楽になることか。
このサービスを長きにわたって続けていただくためにも、もっと多くのタクシー会社さんが参入してくれるためにも、私たち愛犬家は、愛犬を常に清潔にしておくとか、緊急時であっても、乗せてくれたタクシーに迷惑をかけないように、粗相した場合を考えてかごの中にペットシーツをひいておくとか、毛取りローラーくらいはもって出かけたいものですね。
◆シエンタのCM (トヨタ自動車株式会社)
ネコって、意外に車好きですよね。
ウチのにゃん太君も、出かけるためにドアを開けて車内を掃除していると、いつのまにか、入っていて、車のすみっこに隠れていたりするんです。
子猫の時は、何回か犬たちと一緒に車でおでかけしましたが、大人になると、活発で行動範囲が広くなりますから、それが心配で「にゃん太連れドライブ」はできなくなりました。
シエンタのCM、「そうそう、昔はにゃん太も一緒だったよね」と、思い出させるCMで、なおかつ、愛猫家にとっては「猫も一緒のドライブ」という新発想になった方もいらっしゃるでしょう。
◆わんわんパトロール隊 (尼崎市役所市民局生活文化部コミュニティ推進課)
長野県でも、わんわんパトロール、行っていらっしゃいますよ。ステキな発想ですよね。
散歩時間をお子さんたちの登校時間に合わせることで、お子さんたちにとっては、大人同伴、頼もしいワンちゃん同伴と、心強い限りでしょうね。
通学中の安全も確保できるし、もしかしたら、登校拒否になりかけの子の通学の張り合いになるかもしれない。
それに、今まで「あの角の家の柴犬吠えるんだよな。犬ってこわいなー」なーんて、通学路の悪者扱いだったポチが、 お父さんと一緒に散歩の時だったら、しっぽフリフリのポチになっていて、「結構、かわいいんだポチって」みたいな。
子どもと動物とのかかわりをかえるきっかけにもなりますでしょうね。きっと。
わんわんパトロールに登場するのは、年代も異なる大人と、犬と、お子さんですが、通学路中に、さまざまなあったかいドラマが生まれてくるのではないかと、期待いっぱいです。
〔総評〕
・NPO法人 Knots 理事長 冨永佳与子
りぶ・らぶ・あにまるず賞も4回目の表彰を迎えました。
その間、社会においての動物との共生も随分と進んで参りました。
これまで、動物を守るという観点での推薦が多かったのに対し、動物達がしっかりと人間社会に参加しているというものが増えてきているように思います。
そのような意味で、今回受賞されたわんわんパトロール隊は、全国でも実施するグループが増加傾向にある中、地方自治体が呼びかけ、地域社会への参加を動物達が求められたことが評価されました。
また、グランプリを争いました近畿タクシーさんも、タクシーという公共交通にペットを乗せて頂けるという、家族の一員として暮らす存在を認めて頂けたということだと思います。
そのような意味でも、トヨタ・シエンタのCMは、猫と暮らす夫婦が、離れて暮らす息子夫婦をお迎えに行くシーンで、行きはいつも通り猫と3人、帰りはシートアレンジを変えて、猫も息子一家も快適という何げない日常を描いたものでしたが、そこにはしっかりと家族として認識された一匹の猫が確かに存在していました。
年々、りぶ・らぶ・あにまるず賞のノミネートや選出の難易度が増してきているように思います。
これはある意味、それが当然となってきているという私達にとっては隔世の感も感じられることです。
この追い風を大切に、様々な命が明るく快適に暮していける社会へりぶ・らぶ・あにまるず賞に、また2005年度のノミネートをお願い致します。
|