〔審査員のコメント〕
・ヒトと動物の関係学会監事 井本史夫氏
迷い子になった自分の犬猫に関する情報に早くたどり着きたいのが飼い主の気持ちです。
また、知らない人の犬猫であっても、迷い子になった犬猫が飼い主の元に戻ることはうれしいことです。
知りたいことが載っている、ネット社会ならではの秋田市の対応です。
・P-WELL通信編集長 斉藤則子氏
登録台帳の電算化により、保護犬の返還率が激増したとのこと。家に戻れる犬が増えたことは、それと同じ数だけ悲しむ飼い主が減り、さらに不本意な処分をする立場の人の心をも救うことになる。まさに一挙三得の施策だと思いました。
ペットブームの中で、ペットに至れり尽くせりの新サービスが次々と生まれ、話題を集めています。しかし、幸せなペットがもっと幸せになる活動より、不幸な動物を一匹でも減らす活動をこそ高く評価したいと考えました。秋田市では、保護された動物の里親探しにも積極的とのことで、こうした取り組みが全国に波及していくことを願っています。
・どうぶつ写真家 児玉小枝氏
放し飼いにされたり捨てられたりしたあげく、迷い犬になり、行政に捕獲される犬が後を絶ちません。
捕獲された子たちは、数日の抑留期間が過ぎても飼い主が現れなければ、殺処分されてしまいます。
そんな不幸な命を増やさないためにも、飼い主側は、自分の犬に鑑札や迷子札をつけておき、もしも犬が行方不明になったとわかったら即日、保健所や警察に届けるなどして全力で探すべきだし、行政側は、捕獲された犬の身元を割り出し、無事、家族の元に戻すための最大限の努力をすべきだと思います。
自分の犬が迷子になり、最寄りの保健所に届けておいても、万が一、遠くまで放浪していて別の地域の保健所で捕獲された場合、保健所同士、横の連携ができていないので、知らせてもらえない…つまり、そのまま処分されてしまうことがある、という話しを聞き、各保健所間のネットワークの重要性を痛感しました。インターネットなど双方向・即時性のあるツールを使って行う、今回の「秋田市」のような取り組みが、当たり前の事として、今後、全国に広がり、言葉を持たないばかりに飼い主の元に戻れなくなってしまう子たちの命が一つでも多く救われる一助になるよう祈っています。
・社会福祉法人 日本聴導犬協会会長 有馬もと氏
「素敵ですね。行政人」
2年か3年で転属になる行政の担当者の方たちですが、秋田市の取り組みは、そんな時間の壁をうちやぶった快挙ですね。
市民活動でも本当にがんばっている方々に出会えますが、秋田市のように、行政の方々で意欲的に取り組んでいらっしゃる姿を拝見して、もっともっと「すみやすい、人にも動物にもやさしいニッポンになれる」と、信じられます。
動物福祉だけでなく、すべての福祉について言えますが、一般市民、行政、福祉団体など、さまざまな方たちの協力があって初めてできることばかりです。
できないと思われていたことでも、心ある人たちの支援や力によって、成就できた経験を、うれしいことに私も持っています。欲を言えば、行政だ、市民だという垣根なく、秋田市の方々のような意志ある方々と一緒に活動ができる機会がもっとあれば「いい仕事」の可能性が増えていくのではないかと、将来の期待も膨らみました。
〔総評〕
・NPO法人 Knots 理事長 冨永佳与子
動物愛護法の施行から、伴侶動物の社会への受け入れが私達も驚くほどのスピードと多様性を以って進んでいることは、大変喜ばしいことです。
今回のノミネートでも、共に出掛ける為の商品やサービスが多くありました。
特に商品部門賞のJALペットクラブを始めとする、航空各社の受け入れの変化は、隔世の感がある方も多いのではないでしょうか。まだ始まったばかりの友人達の空の旅。今後一層快適なものになることを祈ります。
一方、動物と暮らす者としては、この社会の寛容さを裏切らないよう、ルールとマナーに気を配ることを忘れてはならないと思います。
このような中、動物の命という、ある意味基本に戻ったグランプリが選出されたことは、大変意義深いことだと思います。
日本は、良くも悪くも官僚社会です。今回の秋田市の事例は、行政の積極的で意欲的な取り組みがあれば、大きな結果を導くことが出来るという証明だと思います。川崎市立動物園のケースもそうですが、『何とかしたい!』という気持ちが、新しい技術やアイデアといったものを生み出していくということなのでしょう。ディズニー映画『リロ&スティッチ』のように管理センターを訪れて、NTT西日本フレッツのCMのように『ずっといっしょ』に暮らすのが当たり前になる社会はもうすぐかもしれません。(ちなみに、『リロ&スティッチ』の舞台は、ハワイのカウアイ島です。あの管理センターは、Knots海外リポートにあるKauai
Humane Societyではないかと思うのですが・・。)
『何とかしたい!』多くの方々が、この「気持ち」で動き続けておられます。そしてそのような方々に、できることをお手伝いしたいという方も増えています。損保ジャパンちきゅうくらぶのような活動もそういった現れだと思います。結局は、世の中を変えることができるのは人の「気持ち」なのでしょう。「気持ち」を持ち続けることの大変さと大切さを改めて認識させて頂きました。りぶ・らぶ・あにまるず賞も3回目を迎えましたが、
Knotsも「最初の気持ち」を大切にしていかなければと決意を新たに致しました。
|