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ピックアップ お知らせ 2026.09.01

ペット同伴避難所アンケート(2026)調査報告

自然災害が多発し、ペットとの同行避難をする避難所の環境整備が重要となっています。

「ずっと一緒に居ようよ」プロジェクトの一環として、避難所の環境に対する意識調査を行いました。集計、分析の結果を報告します。

 

 

調査報告

ペット同伴避難所に関するアンケート調査
――「情報を知らせる」ことが避難意向を大きく左右する

実施:公益社団法人Knots ずっと一緒に居ようよプロジェクト
調査期間:2025年10月〜2026年5月 | 公開日:2026年8月7日
調査・分析:冨永佳与子(滋賀大学大学院経済学研究科/滋賀大学研究推進機構 客員研究員)
2026年7月28日、令和8年熊本地震が発災し、激甚災害に指定されました。本調査は熊本地震を受けて新たに実施したものではありませんが、公益性を優先し、通常の学術発表に先立って速報的に公開するものです。

災害時、ペットと一緒に避難所へ向かうかどうかを、飼い主はどのような情報や条件で判断しているのでしょうか。公益社団法人Knots「ずっと一緒に居ようよプロジェクト」では、こうべ動物共生センターの来場者を対象に、仮想の避難所シナリオを用いたアンケート調査を実施しました。その結果、「受け入れ体制の情報が飼い主に届いているかどうか」が避難意向を最も大きく左右することがわかりました。

調査の方法と対象

こうべ動物共生センターのイベント参加者・来訪者を対象に、複数の仮想避難所シナリオ(情報の詳しさ/同室の可否/配慮方針の有無/移動時間/フード・水の提供/ケージ提供/薬・獣医師相談の有無)を提示し、「あなたはこの避難所に向かおうと思いますか?」を0〜10点で評価してもらう「要因サーベイ実験」という手法を用いました。1人あたり8問を回答し、205名から延べ1,640件の評価データを得ています。

回答者数:205名(1,640件・欠損ゼロ)
ペット飼育経験:あり92.2%
性別:女性64.9%/男性33.7%
年齢層:40〜60代が62.4%

回答者のプロフィール(n=205)
飼っているペットの種類
  • 犬のみ 46%
  • 猫のみ 21%
  • 犬と猫両方 17%
  • その他のペット 9%
  • 飼っていない 7%
年齢層
  • 10代以下 14%
  • 20代 9%
  • 30代 9%
  • 40代 18%
  • 50代 26%
  • 60代 18%
  • 70代 5%
  • 80代以上 1%
※本調査はこうべ動物共生センターの来場者を対象とした調査であり、女性・中高年がやや多く含まれます。全国のペット飼育者全体を代表する数値ではない点にご留意ください。統計的な分析モデルの詳細(回帰係数・有意水準等)は、学位論文としてのとりまとめを経て別途公開予定です。

主な発見

1. まず「情報があるかどうか」が最も大きな差を生む

避難所の受け入れ情報の詳しさによって、避難意向は次のように変化しました(0〜10点評価)。

情報の詳しさと避難意向(0〜10点)

同室・フード・ケージなど詳細がわかる:5.3
「ペット可」とだけわかる:3.0
まったく情報がない:1.6

「情報なし」と「詳細情報あり」の差は3.7点(尺度全体の37%幅)

情報の詳しさだけで、避難意向は最大3.7点(尺度全体の37%幅)変わります。しかし、飼い主全体の約8割が近くの指定避難所のペット受入れ体制を「知らない」というデータもあります(出典:アイペット損害保険株式会社「ペットのための防災対策に関する調査」2024年12月26日)。受け入れ体制を整えるだけでなく、その情報を平時から飼い主に届けることが、まず取り組むべき一歩だといえます。

2. 「同室で過ごせるか」が次に重要

避難所の条件:何がどれだけ避難意向に影響するか
屋外別スペース:−2.2
移動1時間以上:−2.0
移動〜60分:−1.0
屋内別室:−0.3
ケージ提供:+0.6
フード・水提供:+0.7
獣医師相談:+0.7
同室別部屋:+0.7
配慮義務あり:+1.2

基準:同室同部屋・配慮義務なし・支援なし・移動時間15分以内(グレーの縦線がゼロ地点)

避難所の条件:「どこにいられるか」で評価はこう変わる

飼い主とペットが同じ部屋にいられる状態(同室同部屋)を基準に比較すると、犬・猫別に部屋を分けた「同室別部屋」は+0.7点とわずかに評価が上がる一方、屋内で別室になる場合は−0.3点、屋外に別スペースが設けられる場合は−2.2点と大きく評価が下がりました。屋外への分離は、移動時間が1時間以上かかる場合の影響(−2.0点)と同程度の、大きなマイナス要因です。

3. 配慮方針の明示と物資支援は、屋外分離のマイナスを補える

ペットへの配慮方針を明示するだけで+1.2点、フード・水・ケージの提供や獣医師相談の体制を合わせると+2.0点、合計で+3.2点の押し上げ効果があります(2のグラフ参照)。これは、屋外分離によるマイナス(−2.2点)を十分に相殺できる水準です。同室での受け入れが難しい場合でも、配慮方針と物資支援を両輪で整えることで、避難意向の低下を補えることを示しています。

4. 猫を飼う世帯には、特に手厚い配慮を

屋外別室の場合の予測評価(0〜10点・飼育ペット別)
犬のみ飼育:3.26

犬と猫両方:2.31
猫のみ飼育:2.23

猫のみ飼育は犬のみ飼育より抵抗感が−1.4点強い

屋外別室となった場合の評価を飼育ペット別に見ると、犬のみ飼育で3.26点だったのに対し、犬と猫両方で2.31点、猫のみ飼育で2.23点と、猫を飼う世帯ほど評価が下がる傾向が見られました。猫は環境の変化に敏感で、見知らぬペットと近くに置かれることへの不安が犬より強いと考えられます。屋外分離への抵抗感は犬飼育者よりも−1.4点強く、猫専用の屋内スペースを確保することが効果的です。

5. 条件の組み合わせで、避難意向は8倍以上変わる

避難所の「タイプ別」予測評価(0〜10点)
理想型

同じ部屋・配慮義務あり・15分以内・全支援あり:8.5
中位型
屋内別室・配慮義務あり・30分以内・フード水あり:5.5
悲観型
屋外別室・配慮なし・1時間以上・支援なし:1.0

受け入れ体制の整え方次第で、避難意向には8倍以上の差が生じることがわかります。

避難所運営者・自治体の方へ

ペット飼育者が災害時に避難所へ向かうかどうかは、「情報があるかどうか」に大きく依存します。受け入れ体制の整備と同時に、その情報を平時から飼い主に届けることが最も重要な一歩です。

まず「知らせる」ことから――「ペット受入れ可否」の掲示・広報だけで避難意向+1.4点、「ペット受け入れの詳細情報提示」でさらに+2.3点。高齢の飼い主には個別の声かけが有効です。

  1. 「同室が可能か」を最優先に――同室を基準として、屋外へのペット分離は−2.2点避難意向を下げます。同室内に犬・猫別に専用スペースを設けるだけで基準より+0.7点になります。
  2. 配慮方針+物資支援を両輪で――ペットへの配慮方針の明示(+1.2点)とフード・水・ケージ・獣医師相談(合計+2.0点)で、屋外分離のマイナスを相殺できます。
  3. 猫を飼う世帯には特に配慮を――猫は環境変化に敏感で、屋外分離への抵抗感が犬より強い傾向があります。猫専用の屋内スペース確保が効果的です。

まとめ

  • 情報の詳しさだけで避難意向が最大3.7点(尺度全体の37%)変わる
  • 同室の確保が最優先。屋外分離は避難意向を大きく損なう(−2.2点)
  • 同室が困難なら、ペットへの配慮義務と物的支援を組み合わせて補う(合計+3.2点)
  • 猫飼育者への配慮として、猫専用の屋内スペース確保が特に効果的