調査報告
ペット同伴避難所に関するアンケート調査
――「情報を知らせる」ことが避難意向を大きく左右する
災害時、ペットと一緒に避難所へ向かうかどうかを、飼い主はどのような情報や条件で判断しているのでしょうか。公益社団法人Knots「ずっと一緒に居ようよプロジェクト」では、こうべ動物共生センターの来場者を対象に、仮想の避難所シナリオを用いたアンケート調査を実施しました。その結果、「受け入れ体制の情報が飼い主に届いているかどうか」が避難意向を最も大きく左右することがわかりました。
調査の方法と対象
こうべ動物共生センターのイベント参加者・来訪者を対象に、複数の仮想避難所シナリオを提示し、「あなたはこの避難所に向かおうと思いますか?」を0〜10点で評価してもらう「要因サーベイ実験」という手法を用いました。シナリオは、避難所の受け入れ情報の詳しさと、次の6つの条件の組み合わせでできています。
• 同室の可否(同室同部屋/同室別部屋/屋内別室/屋外別室)
• ペットへの配慮義務の有無
• 避難所への移動時間(15分以内/30分以内/1時間未満/1時間以上)
• ペットフードと水の提供
• ケージの提供
• 薬・医療(なし/必要な薬の提供/獣医師など専門家の訪問・相談)
調査票の冒頭では、全員に共通の状況として「あなたは1匹の猫と暮らしています。震度7の大地震が起こり、自宅は半壊状態です」と設定しました。1人あたり8問を回答し、205名から延べ1,640件の評価データを得ています。分析には、0〜10点のように範囲が決まった評価に適した「ベータ回帰モデル」を用いました。
回答者数:205名(1,640件・欠損ゼロ)
ペット飼育経験:あり92.2%
性別:女性64.9%/男性33.7%
年齢層:40〜60代が62.4%

- 犬のみ 46%
- 猫のみ 21%
- 犬と猫両方 17%
- その他のペット 9%
- 飼っていない 7%

- 10代以下 14%
- 20代 9%
- 30代 9%
- 40代 18%
- 50代 26%
- 60代 18%
- 70代 5%
- 80代以上 1%
主な発見
1. まず「情報があるかどうか」が最も大きな差を生む
避難所の受け入れ情報の詳しさによって、避難意向は次のように変化しました(0〜10点評価)。
情報の詳しさと避難意向(0〜10点)

同室・フード・ケージなど詳細がわかる:5.3
「ペット可」とだけわかる:3.0
まったく情報がない:1.6
「情報なし」と「詳細情報あり」の差は3.7点(尺度全体の37%幅)
情報の詳しさだけで、避難意向は最大3.7点(尺度全体の37%幅)変わります。しかし、同伴避難が可能な避難所とそのルールを把握している飼い主は9.9%にとどまるというデータもあります(出典:ペッツオーライ株式会社「Wan!Pass 愛犬との防災に関する意識調査」2024年9月1日、アプリユーザー2,247名が回答)。受け入れ体制を整えるだけでなく、その情報を平時から飼い主に届けることが、まず取り組むべき一歩だといえます。
2. 「同室」で「犬と猫の部屋を分ける」配置が最も高評価、屋外への分離は大きなマイナス

※「屋内・別室」は基準(同室同部屋)と統計的に有意な差はありません。
一方、屋外に別スペースが設けられる場合は−2.2点と大きく評価が下がりました。大きな分かれ目は「屋外に隔離されるかどうか」にあり、屋外への分離は、移動時間が1時間以上かかる場合(−2.0点)と同程度のマイナス要因です。
3. 配慮方針の明示と物資支援は、屋外分離のマイナスを補える
避難所がペットへの配慮義務を明示すると+1.2点。フード・水(+0.7点)、ケージ(+0.6点)、獣医師など専門家の訪問・相談(+0.7点)も、それぞれ評価を押し上げます。これらを組み合わせた場合の予測評価は次のとおりです。
• 同室同部屋・配慮義務なし・支援なし:約4.9点
• 屋外別室・配慮義務あり・フードと水・ケージ・専門家の訪問・相談あり:約5.9点
ペットが屋外別室になる避難所でも、配慮義務と物資支援がそろえば、同室でも支援が何もない避難所を上回ります。同室での受け入れが難しい場合でも、配慮義務と物資支援を両輪で整えることで、避難意向の低下を補えることを示しています。
4. 移動時間は「30分」が目安
避難所までの移動時間が30分以内であれば、15分以内と比べて統計的に有意な差はありませんでした(−0.2点)。30分を超えると評価は下がり始め、1時間未満で−1.0点、1時間以上で−2.0点と段階的に低下します。ペットを連れて30分以内でたどり着ける場所に受け入れ可能な避難所があることが、避難意向を支える条件のひとつです。
5. 猫を飼う世帯には、特に手厚い配慮を

犬と猫両方:2.31
猫のみ飼育:2.23
猫のみ飼育者は、犬のみ飼育者より屋外別室への抵抗感が1.4点強い
屋外別室となった場合の評価を、ふだん飼っているペット別に見ると(他の条件は基準のまま)、犬のみ飼育で3.26点だったのに対し、犬と猫両方で2.31点、猫のみ飼育で2.23点と、猫を飼う世帯ほど評価が下がりました。猫のみ飼育者の屋外分離への抵抗感は、犬のみ飼育者より1.4点強く(統計的に有意)、犬と猫両方の飼育者にも同じ傾向が見られました(こちらは統計的には境界的な差です)。
猫にとって犬の存在はストレスになりやすく、猫の飼い主は特にすみ分けを重視すると考えられます。猫専用の屋内スペースを確保するなど、ペットの種類を考慮した居場所の区分けが効果的です。
6. 条件の組み合わせで、避難意向は5倍以上変わる
避難所の「タイプ別」予測評価(0〜10点)

避難所運営者・自治体の方へ
ペット飼育者が災害時に避難所へ向かうかどうかは、「情報があるかどうか」に大きく依存します。受け入れ体制の整備と同時に、その情報を平時から飼い主に届けることが最も重要な一歩です。
まず「知らせる」ことから――「ペット受け入れ可」と知らせるだけで避難意向は+1.4点、受け入れの詳細情報を示すとさらに+2.3点上がります。60代以上の飼い主は避難所への評価が全体的に約1.3点低い傾向があり、高齢の飼い主に向けた丁寧な情報提供・周知が特に必要です。
1. 「同室」を確保し、犬と猫の居場所を分ける――屋外へのペット分離は避難意向を−2.2点下げます。飼い主と同室のまま犬と猫の部屋を分ける「同室別部屋」が最も高評価です(+0.7点)。
2. 配慮義務+物資支援を両輪で――配慮義務の明示(+1.2点)に加え、フードと水、ケージ、獣医師など専門家の訪問・相談がそろえば、屋外別室でも予測約5.9点となり、同室でも支援のない避難所(約4.9点)を上回ります。
3. 移動時間は30分以内を目安に――30分を超えると避難意向が下がり始め、1時間以上では−2.0点となります。
4. 猫を飼う世帯には特に配慮を――猫の飼い主は屋外分離への抵抗感が犬の飼い主より強い傾向があります。猫専用の屋内スペースの確保が効果的です。
まとめ
• 情報の詳しさだけで、避難意向が最大3.7点(尺度全体の37%)変わる
• 同室の確保が最優先。犬と猫の部屋を分ける「同室別部屋」が最も高評価で、屋外分離は避難意向を大きく損なう(−2.2点)
• 同室が困難なら、配慮義務と物資支援の組み合わせで補える(屋外別室でも予測約5.9点)
• 避難所への移動時間は30分以内が目安
• 猫飼育者への配慮として、猫専用の屋内スペースの確保が特に効果的
• 条件の組み合わせ次第で、予測評価は1.5点から8.2点まで5倍以上変わる
