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2024.11.25

保護中: 【報告】人と動物の共生およびSDGs推進シンポジウム 2024 「ペットとの暮らしを活用する豊かな社会 -それを可能にする環境整備-(谷口 優先生)」

《第1部》
講演「動物が人にもたらす健康効果」
講師:谷口 優 先生(国立研究開発法人 国立環境研究所 主任研究員/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 協力研究員)

最初に、「健康」の概念について「元気で長生き」、つまり「健康長寿」と定義し、健康を阻害する要因としては、体の予備力が低下し、身体機能障害に陥りやすい状態となる「フレイル」や認知症をはじめとした「老年症候群」が挙げられました。
また、伴侶動物が健康長寿に及ぼすフレイルに関する研究では、「犬と生活しているシニアは、犬を飼っていない人に比べてフレイル発生リスクが約20%低い」ことがわかりました。

谷口先生がオーストラリアで実施した「伴侶動物の種類で死亡発生リスクが異なるのか?」という研究で、猫、鳥、魚ではなく、「犬と生活している人は、死亡リスクが23%低い」ことが明らかになったことが今年8月に発表されました。2019年に10の研究結果を統合して分析された研究データでは、「犬の飼育者は非飼育者に比べて死亡リスクが24%低い」という結果が報告されているそうですので、谷口先生の研究成果と合わせてみても、犬の飼育者の死亡リスクが低いことがわかります。
「伴侶動物の有無で要介護または死亡発生リスクが異なるのか?」という研究については、「犬と生活しているシニアは、自立喪失(要介護・総死亡)発生リスクが約45%低い」ことがわかったそうです。また、「伴侶動物の有無で認知症発症リスクが異なるのか?」についても追跡期間を延ばして調査をされたところ、「犬と生活しているシニアは、要介護認知症発症リスクが40%低い」ことがわかりました。
さらに、「伴侶動物の有無で社会保障費(医療費・介護費)が異なるのか?」という研究の結果もご教示いただき、医療費については有意差がなく、「ペットがいる群は、いない群に比べて月額介護費が半額」との結果が出たそうです。

猫の飼育に関しては、多くの研究で猫が愛猫家に心理的に良い効果を与えていることがわかっているので、引き続き研究を続けていきたいと語っておられました。
最後に、オーストラリアの公共交通機関や店舗などでペットを受け入れている状況等もご紹介いただきました。そして、どうすれば伴侶動物を迎えたいシニアがペットと共に暮らすことができるのか方策を考えていきたいと締め括り、第2部の事例発表へとつないでいただきました。

「抄録」と「開催報告書」のデータをダウンロードしていただくことができます。
※表紙の画像をクリックするとPDFのデータが表示されます。

抄録
開催報告書

【講師プロフィール】
◎谷口 優(たにぐち ゆう)先生
国立研究開発法人 国立環境研究所 主任研究員
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 協力研究員
東京大学客員研究員
メルボルン大学客員研究員
兵庫県神戸市出身

「ペット飼育と社会保障費との関連性」に関する研究論文「Pet Ownership-Related Differences in Medial and Long-Term Care Costs among Community-Dwelling Older Japanese」(和訳:地域在住高齢者におけるペット飼育者・非飼育者の医療費及び介護費の差異について)を米国科学誌「PLOS ONE(プロス ワン)」に発表(2023年1月)。

犬の飼育及び運動習慣の有無別にみた認知症発症オッズ比

《受賞歴》
2011年 The Gerontological Society of America. Health Science person-in-training award
2016年 日本老年医学会優秀論文賞
2018年 日本公衆衛生学会総会優秀口演賞
2018年 長寿科学賞
2020年 Geriatrics & Gerontology International Best Article Award
2024年 日本老年医学会Young Investigator Award

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