アドバイザーメッセージ



植村 興氏(四条畷学園大学 教授)

 

私の子供の頃、半世紀以上前、エスという名の犬が私の家族の一員でした。娯楽のない時代、近所のオジサンから世間話を聞くのが楽しみでした。ある日、エスもいる前で、犬は食用になるそうでっせ。私は思わずエスを抱きしめました。
 当時、犬を飼うのは大変で、毎年生まれてくる子犬の嫁ぎ先を探さねばなりません。A兄貴は、目が開かんうちに処分してしまえば気が楽やと教えてくれました。ある朝、4,5匹の子犬が庭から突然消えていました。誰も尋ねもしませんでしたが、B親爺が夜のうちに何処かに捨てたに違いありません。その家の母も犬のお母さんも、そして悪童仲間も涙をこらえていました。
子犬の引き取り先を確保するために、日頃から良い友達関係を築き、新鮮な地域情報網を確保しておくことに力を注ぎました。食糧難や感染症に責められて人も犬も生きるのに必死でした。猫も同様でした。とにかく酷い状況でしたが、何か、人と犬猫との間は理解の絆で結ばれていたように思います。
 今は21世紀。人にも動物にも「ゆりかごから墓場まで」の福祉は整えられています。食は充たされ、産児制御技術も進歩しました。しかし、捨て猫の数は増加し、動物虐待事例も跡を絶ちません。国内外では、ヒトの「野性」むき出しとしか思えない社会現象が目立ちます。動物もあきれていることでしょう。

 「命」の本来の姿は、純粋で、愛と慈悲に満ちています。純粋な命に対しては、人よりも動物の方が正直です。謙虚になって、動物から「命」の大切さを学んでみたいものです。本シンポジウムでは、人と動物の絆を深めるための多くのプログラムが準備されています。原点に戻って、健康社会を復権したいものです。


柴内 裕子氏
(公益社団法人日本動物病院福祉協会 顧問/赤坂動物病院 院長)

 

人類は地球の責任者

 

 私たち人類は、地球上の生物の歴史からみれば、哺乳動物としても後発、新参者です。しかし、考えてみましょう。現在人類は70億にも増えて、大地を、水を、空気を汚し続けています。そのために地球環境は悪化し、気温の上昇、豪雨、洪水、竜巻、地震、津波、そして人災である原子力発電事故と、次の世代にも影響が及ぶような大事故が続発しています。更に都市化が進み、人間関係の希薄化と孤立、鬱病と自殺者の増加、不安定な情動から勃発する無差別殺人等、日々枚挙にあまりある現状です。
 このような地球上の大問題を本気で取り組む人々が増えなければ、あらゆる問題を阻止、回復させることは不可能です。
 2011年3月11日の東日本大震災は命のはかなさ大切さを、そして自然を含む環境と生命について衝撃的なショックを受けました。
 この会議は、地球上の全ての生命のために、各分野が協力し、今、すべきこと、出来る事に気付き力を合わせて繋ぎ動く会議でありたいと強く願います。



玉井 公宏氏 (社団法人 和歌山県獣医師会会長)

 

 2009年12月、「神戸アニマルケア国際会議2009」が初めて開催されました。その後の2年間、アニマルケアに関する研究・活動はさらに深まり、貴重な実績とともに多くの成果が示されてきました。主催者Knotsはじめ本会議にかかわる多くの団体が改正法による「公益認定」を受けました。このことは、連綿と継承されてきたアニマルケアの理念と実績が社会全般に大きく貢献していたことへの評価であり、今後もより広く深く発展継続していくべき社会責任が課せられたものです。また、野生生物保全協会が提唱し、OIEが追認する「One World-One Health」(動物と人の健康は一つ。そして、それは地球の願い)は2010年6月、獣医師会の活動理念としてその指針にあらためて示されました。

    ところが、この2年間は、同時に私達に更なる試練を与える期間ともなりました。口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザの発生とその対応、病原性大腸菌による食中毒等々、そして2011年3月11日に発生した東日本大震災・大津波、それに伴う放射能汚染です。 私達の想定如何にかかわらず、現実にとてつもなく大きな問題が次々と起こっています。既に多くの皆様が対応に当たり、汗と涙の乾く間もなく奮闘しています。

    理不尽も不合理も不備・不足も不満も乗り越えて「今、何ができるか」を考え、行動して下さっています。 このような状況の中、「りぶ・らぶ・あにまるず 第2回神戸アニマルケア国際会議2012『その医療と健康管理』−人と動物の未来の為に」が開催されます。人と動物の絆(human-animal-bond)における人の責任を果たしていく為に進化する議論が交わされ、幅広い分野が互いに連携連帯して「次に何ができるか」と将来に向けた姿勢が示されることを期待しています。


 山口千津子氏 (社団法人 日本動物福祉協会 獣医師調査員)
 

 

 神戸アニマルケア国際会議も第2回目を迎えました。今回は東日本大震災に津波というとてつもない自然災害に襲われ、さらにその上に、原子力発電所事故という今までに経験したことのない災害が覆いかぶさって、いまだに先行きが見えない中、人と動物の絆・飼い主責任・社会における動物の地位等、人と動物の関係が改めて問い直されています。小動物についてはすでにいくつかの自治体では同行避難を基本としていますが、多くの人や動物が一つの場所に集まりますので、普段からの健康管理、感染症(特に人と動物の共通感染症)の予防や他人に迷惑のかからないようにしつけることは必要不可欠なことです。飼い主が動物への責任も社会への責任もきちんと果たすことによって、動物は市民権をえられ、緊急災害時にも同行避難が当たり前という社会になるのです。私は、人も含めたすべての動物にとってストレスは万病の元であると思っています。今回のケア会議で、人と動物の双方の幸せのために、社会の安全・安心のために、人と動物の絆・動物の福祉に基づいた健康管理・医療についてそれぞれのワークショップで幅広い議論が交わされ、人と動物の心身の健康に寄与できればと願っています。

山崎 恵子氏(ペット研究会「互」主宰)

 

 

   2011年の震災において再び我が国における動物たちの状況に世界の注目が集まりました。阪神大震災の時から比べると進歩した面もあれば同じ間違いが繰り返されてしまった面もあったようです。しかし多くの国民が動物との共生の意味を真剣に考える良い機会にもなりました。私たちが自分たちの生活圏に引き込んでしまった動物たちにはあらゆる意味で選択権が与えられていません。彼等には人間があたえる生活以外の暮らしはないのです。これは決して伴侶動物たちのことだけを言っているのではありません。家畜、学校動物、動物園動物、実験動物等はすべて人間に完全に依存せざるを得ない状況におかれているのです。何かが起きた時には彼等の保護者である人間が十分な対処をしなければならないのです。そのためにはまず彼等を知ることが必要でしょう。私たちにとって彼等の存在とは果たしてどのようなものなのか、また私たちと彼等の間にはどのような問題があるのか。このようなことをじっくり考える機会を今回のような会議が提供してくれるのではないでしょうか。あらゆる側面から私たちの周りの動物たちを見つめるために必要な有益な情報が会議の場で沢山提供されることでしょう。各界の専門家の方々の講演を通して今後の動物たちとの共生を見直すこともできるのではと考えています。動物に関心のある方々や動物に関わる仕事についておられる方々のみならず一般の市民の方にもぜひ参加していただきたいと思います。家庭で動物と共に生活をしていないという方々であってもどこかで、何らかの形で動物とつながっているのです。彼等は人間とこの時空を分かち合っている存在なのですから。