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2011.06.24

ワークショップ Ⅲ「東日本大震災から学ぶ今後の緊急災害時の動物救護 ~法的裏づけの必要性と平時からの準備」

 

主催者メッセージ/座長メッセージ/発表趣旨


山口千津子氏
公益社団法人日本動物福祉協会 獣医師調査員

2011年、東日本全土を激震が襲い、今までとは比較にならない大規模災害が起こりました。
広域の上に、地震、津波、火事、そして、福島県では原子力発電所の事故と4つもの大災害が重なり、長期化は必至です。人と共に暮らしていた動物たちもこの大震災から逃れることはできず、津波に飲み込まれた動物、飼い主とはぐれた動物、そのまま留められた動物、飼い主と共に避難できた動物と様々な境遇に置かれています。死者行方不明者が2万人を超えるという甚大な被害の中、人も動物も地震・津波を経験した恐怖や不安でいっぱいで、多くの方が家族である動物と寄り沿っていることで心の支えとなっているようでした。人と動物の絆に配慮し、動物の福祉を基本にしたすべての動物に対する災害対策を国が音頭を取り、全国の市町村まで行渡らせる必要があります。2012年はちょうど「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正案が国会で審議される予定です。ぜひ、国法の中に緊急災害時の動物救護が取り入れられますようにと願っています。

このワークショップⅢでは、まず、(公社)日本動物福祉協会の山口から東日本大震災被災地における小動物救護活動と活動中に面したさまざまな問題点をご報告し、国や自治体及び飼い主の平時からの準備等についてお話させていただきます。次に(社)日本動物園水族館協会副会長荒井一利先生から被災園館への対応と防災対策について、そして、新潟大震災のときに行政の中心となって被災動物の救護を担われた川上直也先生から災害時における行政の役割についてお話いただきます。その上で、今回及びこれまでの経験を踏まえた今後の緊急災害における動物救援のあり方、国および各市町村における官民協働の対策・組織作りについて話し合いたいと思います。

 

(社)日本動物園水族館協会における東日本大震災被災園館への対応
荒井 一利/社団法人日本動物園水族館協会 副会長
鴨川シ—ワールド 館長

(社)日本動物園水族館協会(以下JAZA)は、動物園水族館事業の発展と共に、日本の文化や科学技術を振興させることを目的として、1939年に発足した組織で、現在、国内の153園館(動物園87:水族館66)が会員として加盟しています。
3月11日に発生した東日本大震災では、JAZA加盟園館のうち13園館が被災しました。地震による被害はさほど大きくはなく、動物園における主な被害は、断水による水不足と物流の遮断による飼料の入手でした。一方、水族館では津波による浸水などのため、電気設備や飼育水供給設備などが機能不全となり、結果として多くの生物が死亡した施設がありました。JAZAは震災当日より、被害状況や支援に関する情報収集を行い、初期支援として、飼料の輸送や飼育動物の緊急避難を実施することにしました。飼料の輸送は、3月18日から4月4日の間に10回にわたって6園館に対し実施し、その内訳は、固形飼料、肉、魚、野菜、果物などで、各園館から提供されたものを担当園館に集めた後、緊急車両指定を取得したトラックによる陸路輸送をはじめとして、空路や水路により、園館の職員と協力業者によって輸送しました。飼育動物の緊急避難は、3月16日から4月1日までの間に5回実施しました。環境省より国内および国外希少野生動物種の緊急移動許可を得て、7園館が保護収容を行いました。緊急避難した飼育動物は、トド、セイウチ、ゴマフアザラシ、エトピリカ、オオサンショウウオ、シロチョウザメなど37種266個体におよび、この中には、妊娠中のゴマフアザラシも含まれ、避難先で4月7日に無事出産しています。その後、被災園館は、JAZA加盟園館や関連団体の協力のもとで、復興に向けた活動を開始し、7月15日までに全園館が営業を再開することができました。
見舞金の募集は、3月14日よりJAZAのホームページやフェイスブックによって国内外に広く訴えるとともに、各園館が独自に施設内で実施し、12月28日現在、56,930,483円(うち国内1,119件35,470,318円、国外35件21,460,165円)の協力を得ることができました。適切な支援を行うために、「被災動物園水族館会議」を被災地で4月に2回開催し、被災状況や支援要望などの確認と情報交換を行い、さらに、見舞金を適切に配分するために、外部有識者を含めた「見舞金分配委員会」を設置し、配分のための方針や内容などの検討を行いました。その結果、7月末には見舞金配分方法の最終決定をし、8月8・9日に第1回目、12月20~26日に第2回目の見舞金の贈呈を行い、詳細について加盟全園館長に報告するとともに、ホームページやフェイスブックなどで公表をいたしました。また、海外の諸団体からも多くのご支援をいただきましたので、10月4日にチェコのプラハで開催されたWAZA(世界動物園水族館協会)年次総会において、山本会長がこれまでの経緯と現状について発表し、あわせて謝辞を述べました。
今回の震災対応に際しては、多くの方々からご協力、ご支援をいただきました。この場をお借りしまして、心から感謝を申し上げます。

新潟県中越大震災での動物救済活動
川上直也/新潟県新発田食肉衛生検査センター 所長

 

東日本大震災で被災された皆様にお見舞い申し上げるとともに犠牲となられた皆様に心からお悔やみ申し上げます。新潟県でも平成16年に「新潟県中越大震災」が発生し未曾有の被害をもたらしました。家屋は壊れ道路は寸断され、孤立した山古志村(現長岡市)では全村民が長岡市に避難し、一緒に避難できなかった動物たちが村に残されました。動物と一緒に避難した人たちも動物が避難所に入れず離ればなれの生活を送らなければなりませんでした。 このような状況の中、飼い主と動物の絆を守るための様々な活動が行われました。新潟県は、山古志村にヘリコプターで職員を派遣して動物の救護活動を行いました。獣医師会は、被災動物の無料診療や預かり、県動物愛護協会は、ペットの飼育支援を行いました。

  これらの活動は、環境省と「緊急災害時動物救援本部」のご支援により立ち上げた「中越大震災動物救済本部」によって実施されました。この震災の経験から、その後策定された「新潟県地域防災計画」に「愛玩動物の保護対策」を掲載し、飼育者、県、獣医師会、県動物愛護協会、市町村、動物救済本部の役割を明記しました。 そして平成19年に発生した「新潟県中越沖地震」の際には、直ちに動物保護活動を実行することができました。