第11回 ペットとふれあいシンポジウム
テーマ:“より健やかな社会の構築におけるペットの役割” 主催:アメリカ・ペットフード協会(PFI) 後援:米国大使館アメリカ農産物貿易事務所(ATO) 日時:2014年12月6日(土)13:00~17:00 場所:TKP大手町カンファレンスセンター 22階ホール |
基調講演:人と動物の絆の重要性―より健やかな社会の構築におけるペットの役割 演者:ポーリーン・ベネット氏 (ラ・トローブ大学准教授、人と動物に関する国際学会(ISAZ)会長) |
パネルディスカッション 座長:左向 敏紀氏(日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医保健看護学科臨床部門 教授) パネリスト: 安藤 孝敏氏(横浜国立大学教育人間科学部 大学院環境情報研究院 教授) 加隈 良枝氏(帝京科学大学生命環境学部 アニマルサイエンス学科 准教授 博士(農学)) 柴内 裕子氏(赤坂動物病院 総院長) |
アメリカ・ペットフード協会主催の『第11回ペットとふれあいシンポジウム』に参加させていただきました。今年の基調講演は、ラ・トローブ大学准教授で人と動物に関する国際学会(ISAZ:International Society for Anthrozoology)会長のポーリーン・ベネット氏でした。ベネット氏はオーストラリアで小さい頃から動物に囲まれて育ち、ジョッキー(騎手)を5年程されていましたが、その後大学に戻り臨床神経心理学修士、行動神経科学博士を取得され、現在に至るそうです。
では、心理学専攻だったベネット氏がなぜ動物と人との絆に興味を持ったのでしょうか。それは、ベネット氏が大切にしていた愛犬が近所の犬に殺されてしまったことがきっかけでした。もともと論理的であまり感情的にはならないベネット氏でしたが、愛犬の死に直面してずっと泣き続けた…、自分自身のことでありながら、これは心理学的にすごいことなのではないかと気がついたそうです。ペットを飼うことは私たちに心理的負担を与えることもあります。たとえば、ペットのにおいや鳴き声、出かけるときには置いていかなければいけないという罪悪感もあります。では、なぜ動物を飼うのでしょう。このような疑問に対し、ベネット氏はバイオフィリア仮説やオキシトシンによる生理的効果を用いて、ペットを飼うことの重要性をご説明されました。また、心理学的に生じるポジティブな感情のうち、とくに“幸福感”が大切だとお話されました。昔はそれほど重要視されていなかった幸福感ですが、実はたくさんのメリットがあることが分かり、幸福感を感じている人ほど、関係性が改善したり、仕事の能率が上がったり、より健康で長生きしたりするそうです。このようなことから、様々なかたちで幸福感を高めてくれるペットの存在は、より健やかな社会を築いていくために重要な存在だということです。研究結果だけでなく、ベネット氏の経験談などもたくさん交えてお話してくださりとても分かりやすかったです。
写真:ポーリーン・ベネット氏
ベネット氏の基調講演後、3名の演者による講演がありました。横浜国立大学教育人間科学部 大学院環境情報研究院 教授の安藤 孝敏氏は、今話題となっている「高齢者とコンパニオンアニマル」についてお話されました。メリットがある反面、高齢者が先に亡くなったときにどうやって残された動物をケアするかなどの問題もあり、この分野に関する研究はまだまだ必要なようです。帝京科学大学生命環境学部 アニマルサイエンス学科 准教授の加隈 良枝氏からは、「日本におけるペットの役割」についてお話がありました。動物側の研究をされている加隈氏は、日本と海外の動物をとりまく状況の違いを比較することで見えてくる、動物の価値観の違いなどについてお話されました。赤坂動物病院 総院長の柴内 裕子氏は、ベネット氏のお話を踏まえてご自身の子どもの頃の経験談やJAHA(公益社団法人 日本動物病院協会)のCAPP活動についてお話されました。
写真:安藤 孝敏氏 写真:加隈 良枝氏 写真:柴内 裕子氏
パネルディスカッションでは、オーストラリアの高齢者とペットの話題が出ました。オーストラリアでは、高齢者が犬を飼うことを勧めているそうです。ただし、高齢者は子犬を飼ってはいけないようになっており、成犬など中々引き取り手のいない犬にとっても良いシステムだそうです。犬の世話が十分にできない高齢者のところには、ボランティアが伝ってくれるプログラムもあるそうです。今回のシンポジウムでは、様々な角度からペットの役割について考えることができました。ペットとのより良い社会を創るためにも、高齢者が安心してペットを飼うことのできるシステムが確立されるようになるといいですね。
写真:(左から)左向氏、安藤氏、加隈氏、柴内氏、ベネット氏
報告:Knots教育部 教育・啓発係 田沼