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2014.11.11

【レポート】「長野県動物愛護センター(ハローアニマル)」訪問

「長野県動物愛護センター(ハローアニマル)」訪問報告

 

訪問日:2014年8月21日
場所:長野県動物愛護センター(ハローアニマル)

 

長野県小諸市にある、長野県動物愛護センター(ハローアニマル)を訪問しました。

ハローアニマルは「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づき、人と動物が共生する潤い豊かな地域社会を構築することを目的に、動物愛護に関する事業を総合的に行う拠点として平成12年4月に設置されました。(長野県動物愛護センター 事業概要より)

施設の設立には公益社団法人Knotsのアドバイザリーボード メンバーでもある赤坂動物病院 院長の柴内 裕子氏も関わっており、普及啓発棟には、どうぶつ探Q館(展示室)、ふれあいルーム、レクチャールーム、アニマルシアター、図書ルームなどがありました。

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ふれあいルーム

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ふれあい教室での「いぬとのあいさつ」の説明

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どうぶつ探Q館(展示室)

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どうぶつ探Q館(展示室)の一部

 

屋外には様々な用途に応じて使用されるハロードームや、ヤギ飼育棟、可愛らしい形の屋外トイレなどがありました。広々とした敷地内はボランティアさんもお手入れをしてくださるそうです。

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右手に見えるのが「ハロードーム」

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犬型トイレ

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猫型トイレ

 

今回はKnots教育部として、ハローアニマルで行われる子どもを対象とした事業のひとつ、学校不適応傾向の児童生徒の受け入れについて取材をさせていただきました。お話を聞かせてくださったのは、獣医師であり、設立当初からハローアニマルに関わる長野県動物愛護センター 課長補佐・松澤 淑美氏です。

【ハローアニマルで行われている子どもを対象とした事業】
  • 動物ふれあい教室・・・犬とのあいさつなど基本的な知識の学習
  • 動物ふれあい出前教室・・・学校等へ出向いてのふれあい教室
  • 学校飼養動物支援・・・学校飼育動物の相談など
  • 職場体験・・・中高生を対象とした職業体験
  • 子どもサポート・・・学校不適応傾向(不登校)児童生徒の受け入れ
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自然と動物に囲まれた環境からか、ハローアニマルには開設当初から不登校(年間30日以上の欠席者)の子どもたちが次第に集まるようになり、動物に関わることで表情が明るくなっていったことから受け入れが開始されました。これを学術的にも裏付けるための調査研究が行われ、心療内科医の指導の下、動物介在療法を用いたシステムアプローチ(問題を個人ではなく家庭・学校・地域・社会という文脈で見立てて問題解決を試みる方法)を行った結果、9名中6名が登校可能となり3名に改善がみられたことが報告されました。以後、2014年現在に至るまで不登校児童生徒の受け入れが継続されているそうです。

詳しい支援内容はこちら:「不登校支援ネットワークにおけるAATを活用したシステムアプローチ」
http://www.pref.nagano.lg.jp/dobutsuaigo/jigyo/shiryoshitsu/documents/system_approach.pdf

2003年以降は毎年20名前後の子どもたちが受け入れの対象となっており、その数は13年間で220名を超えています。そのうちの何割が登校に至ったかについて詳しい情報は出されていませんが、多くの子どもたちの状況が改善されたということです。驚いたのは、子どもの保護者だけではなく教育委員会や学校の相談員、養護教諭からもハローアニマルに相談があるということ。ハローアニマルがいかに地域から必要とされているかが分かります。

ハローアニマルでは獣医師が中心となって働いていますが、教育関係者や心理の専門家が常駐していれば、より効果的かもしれません。これだけの環境が整っているため心理士や研究者の方々にぜひ有効に活用していただきたいと松澤氏はお話して下さいました。

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印象的だったエピソードは、子どもたちの多くがフレンドリーな犬猫よりも、脅えて一人でいる子や怪我をした子に興味をもつというお話。これは一般的な動物介在活動の常識を覆すため驚きました。不登校の子どもたちは、どこか自分に似た雰囲気の動物に惹かれるのでしょうか。以前、ハローアニマルに住んでいた右目のないシーズー「しんさつしつのシーちゃん」が子どもたちに愛されていたのも、そんな理由からかもしれませ
ん。人間に捨てられた動物による動物介在活動は、まさに愛護センターならでは。まだまだ色々な可能性がありそうです。

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図書「しんさつしつのシーちゃん」

 

平成24年度の学校基本調査によると11万人を超える子どもたちが不登校であるとされていますが、その対策は十分であるとは言えない状況です。今回の訪問では、ハローアニマルのように地域に根付いた支援機関は非常に重要な役割を果たしており、様々な地域で活用の余地があると強く感じました。

報告:Knots教育部 教育・啓発係 田沼

 

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