バングラデシュにおける集団狂犬病予防接種 (MDV=mass dog vaccination)
ゴラム・アバス氏
金沢大学 分子神経学・総合生理学/感染症病院
これまで避けられてきた人畜共通感染症である狂犬病は、バングラデシュで人々の深刻な健康問題であり続けている。狂犬病は世界中で、わずかな例外国を除いて存在している。最も被害を受けているのがアフリカ、アジアであるが、南アメリカでも流行している。世界で年間7万人が狂犬病で死亡していると推定されている。アジア地域では、東南アジアが発症最多でインド年間2万ケースで現在世界ナンバーワンである。バングデシュでは毎年2千人が狂犬病で死亡している。その大半88%が田舎の地域で、49%が子どもである。99%が犬からの感染である。バングラデシュでは約120万匹の犬がいるが、そのうちの83%が野犬である。犬の群の集団予防接種(MDV)が狂犬病撲滅には適した方法であるとされている。その他の3つの戦略と共に、MDVは2020年までにバングラデッシュから狂犬病をなくすためには最も重要な事項である。2011年、バングラデシュ政府はコックスバザール市地域で試験的にMDVを実施してみた。それからその規模を拡大し、64の地域のうちの54で実施した。2016年中にMDVを3クールこれらの全ての領域で実施しなければならない。狂犬病撲滅は、人間、動物の分類を超えた「One Health」の良い例となっている。政府の健康省の伝染病管理部が他の二つの政府の省と、複数の国際機関、開発団体などと共に狂犬病撲滅活動の指揮をとっている。このMDVキャンペーンには約2000万USドルが必要で、バングラデシュ政府がこの資金を捻出している。またバングラデシュでは、2010年、噛む犬の管理(DBM=dog bite management)を、一つのセンターでスタートさせ、研修を受けた医師と無料の予防接種制度により2012年までに64全ての地域のセンターで実施させた。これまでに国内で、約50%まで狂犬病の発症を抑えることができている。このまま続行すれば、国が掲げている、2015年までに90%減少という目標の達成に明るい兆しが見えてくる。DBMとMDV、さらにDPM(犬の頭数管理)(dog population management)を行うことで、そして政策の提唱とコミュニケーション、社会的な動員によって、バングラデシュはその国家独立50周年(2021年)を狂犬病のない国として祝うことができるであろう。