お知らせ
NEWS2025年7月27日(日)、大阪で開催された WJVF第16回大会(主催:一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)、公益社団法人 日本動物病院協会(JAHA))にて、『JAHA プログラム 市民公開講座「人とどうぶつの絆」』に参加しました。
このプログラムでは、麻布大学獣医学部 教授 菊水健史先生による「One well-being 人と犬と社会の関係」と、KOKOどうぶつ病院(香川県)大林杏子先生による「うちの子も参加できる?人と動物のふれあい活動の実際 ―我が子と一緒に社会貢献!―」の2つの講座が開かれました。
菊水先生の講演では、人と犬との特別な関係についてお話をされました。犬は最初に家畜化された動物であり、オオカミやチンパンジーに比べて人に類似したジェスチャーを利用することに長けており、解決できない課題に直面した時に、人を振り返り、視線を用いて人を操作することさえあります。その家畜化の過程で獲得した、人に似た独自の認知能力は、人との共生を加速させ、人との深い関係の形成に寄与してきたと考えられます。
犬と飼い主の間には、哺乳類の母子間における絆形成にかかわるホルモンであるオキシトシンを介した絆が形成されることが明らかとなっています。犬が飼い主を見つめると飼い主のオキシトシンが上昇、飼い主は、犬に声をかけるなどの行動が増加し、犬の鼻腔にオキシトシンを投与すると、犬が飼い主を見つめる行動が上昇し、飼い主のオキシトシンも上昇したのです。
人と犬の共生や絆の背景には、嬉しいなどの快の情動が深くかかわり、そのお互いの情動を共有する共感性があると考えられています。例えば、犬は長時間の飼い主との分離がストレスとなり、再会は喜びであると想像されますが、後の再会時において、犬の涙液量の増加が認められたのです。
人と犬の共生には、互恵的関係が存在します。循環器系障害の軽減、ストレスホルモンの低下、不安や抑うつの軽減に寄与する、飼い主の要介護認知症リスクが40%低い、散歩することによる周囲の人たちとの社会的つながりの形成など、犬との生活が心身の健康によい影響を与えているとの研究結果が報告されています。また、思春期における児童のWell-being維持・攻撃性の低下・社会性の向上、成人においても地域住民との関わり、地域愛や所属感も高く、Well-beingを高めているそうです。
このように犬との生活は、社会的孤立の軽減や心理的回復力(レジリエンス)の促進に寄与することも示唆されています。飼い主、家族、仲間、地域社会へと広がる犬の効果を新たな「One Well-being」* として捉え、活用する取組が大切になってくると考えられます。
菊水先生のお話にあったように、人と犬は、長い時間を掛けて、深い絆を持つ、相互に特別な存在となりました。この人と犬の深い絆を大切に守り続けられる社会を構築していけるよう、Knotsの事業も展開していきたいと思います。
菊水先生には、今年7月のKnotリレーエッセイへの執筆をいただいています。
https://knots.or.jp/content_page/relay-essay/
* One Well-being
One Well-beingは、人間、動物、環境の「健康」と「幸福」を包括的に向上させることを目指す概念で、身体的・精神的健康だけでなく、社会的包摂、倫理、教育、経済的安定など、多面的なWell-beingの促進を重視している。
【 2025/7 JAHA発行学術雑誌 One Well-being Vol.1 総説 「One Well-being」JAHAの目指す新しい世界(菊水健史先生)p.8より引用】
大林先生の講演では、こうべ動物共生センターでもお世話になっている、JAHAのCAPP活動(人と動物のふれあい活動)についてのお話をいただきました。
大林先生の「讃岐うどんチーム」の高齢者施設でのドッグダンスを取り入れた実際の活動の様子などの動画と共に、「うちの子と一緒に社会貢献できるのかな?」が「社会貢献できる!」になるための、動物と飼い主の資質や活動参加基準などを説明されました。
JAHAのCAPP活動が、チームの皆様の大変なご苦労と喜びをもって培われている、大切な活動であることを再認識させていただきました。
「うちの子」と CAPP活動に参加したいと思われた際には、公益社団法人日本動物病院協会様へご連絡することで、近くで活動しているチームを紹介していただけます。
https://www.jaha.or.jp/hab/