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2016.06.13

【レポート】平成28年 熊本地震 震災取材

去る5月18日・19日に熊本震災で被害を受けた地域の調査へ行ってまいりました。

IMG_0372初日は益城町の避難所である益城町総合体育館へ訪問し、クーラー付きのペット避難施設を作られた 動物愛護団体HUG THE BROKENHEARTSの主宰をされている富士岡さんにお話を伺うことができました。

実は、熊本の避難所は震災当初はペットと一緒に避難所に避難することができたそうなのです。
しかし、数日もするとお互いのストレスからか「ペットと人間様が同じ場所で避難するなんておかしいだろ」などというクレームが発生し始めて、ペット飼い主たちはペットと一緒に避難するためには避難所から出ることを余儀なくされてしまったそうです。

その時にいち早くピースウィンズ・ジャパンが動き、ペットと一緒に避難できるテントを提供出来たことで、一部の飼い主たちは救われましたが、そこに入ることができなかったり別の避難所にいた人々は車中泊などを余儀なくされてしまったそうです。

そんな時、富士岡さんはペットがちゃんと避難できる場所を提供できないかと発想し動き出した所、クーラー付きのコンテナを提供できる先を見つけ、現地に設置する事を計画しました。

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そもそも、ペットが避難できるコンテナがあったとしても、公共の避難所に設置するのは難しい状況だったのですが、益城町総合体育館の所有者が熊本YMCAであったことから、早期に動くことができ、ペットが避難できる場所の提供が実現したとのことでした。

この避難施設の話を聞いていた時に特に特徴的だと感じたことは、「ペット達の世話は飼い主がやらなくてはならない」ということです。

ペットホテルなどに預けた場合、ペットの世話は基本的にはホテルのスタッフが行います。
しかしそれでは、一緒に居れる時間が少ない上に飼い主に世話をしてもらえないことから、ペットにストレスを与えてしまう可能性があります。

それを、ケージに預けていながらも散歩やご飯は常に飼い主が行うことで、ペット自身も「ちゃんと飼い主さんが帰ってきてくれる」という事を理解し、ストレスを低減できるのだと思います。

しかしながら、現地に訪問してみた時に泣き叫ぶペットもいました。この姿を見ていた時に富士岡さんはこう話しています。

「こういう事態に備えて、ペットたちをケージ慣れさせることは飼い主がしっかりやらないといけない。しっかりとしつけができていれば、震災の時でもペットが当たり前に避難できる世界が実現すると思う。ペットと一緒に避難できないということを、世の中のせいにするのではなく、飼い主たちの日々の教育にも問題があることをちゃんと認識しないといけない」と。

ペットと暮らすということは、ペットが安全に社会で生きていくための方法をペットに教育しなくてはなりません。飼い主はただただ「かわいい」とかそういう感情だけで生活し、人間社会へ当たり前に「ペット優先にしてくれ」と発言するだけでは今の業界構造をかえることはできません。

人の子供も同じだと思います。
社会の中でちゃんと生活できるように教育をしないと、問題を発生させたり、まわりから煙たがられる存在になってしまうことがあります。

人と同じ生命である事を認識しているのであれば、ペット達がちゃんとみんなから受け入れられるようにしてあげることも飼い主にとって大切な愛情なのだと思います。

IMG_0389クーラー付きのペット避難施設の他にピースウィンズ・ジャパンが提供するテントエリアにも訪問致しました。

現在気温が上がってきており、テント生活では厳しい状況になってきております。このままだと熱中症で倒れる人が出てくる可能性もあり、テントの屋根に遮熱シートを設置したり、充電式の扇風機を手配したりと日々暑さ対策と戦っているそうです。

支援物資として、食品などは集まってきている状況ですが、今後も9月後半ぐらいまでは熱中症対策グッズなどの提供が必要とのことでした。今後支援を考えている方はぜひとも熱中症対策グッズの支援を考えてみてください。きっと現地の方に喜ばれると思います。

IMG_0387そして、益城町の避難所を訪問後、19日に熊本市獣医師会の会長である小澄先生と対談することができ、熊本の震災によって起こったことと今私達が考えなくてはならないことについてお話を伺うことができました。

今回の震災で、熊本市獣医師会が動き、被災したペット飼い主とペット達のケアに踏み切りました。

熊本市獣医師会が震災直後に動くことができた背景には熊本市と熊本市獣医師会が災害協定を結んでいたことに加えて、熊本市獣医師会の中で素早く連絡を取り合い、獣医師会として連携を取り活動したことによって実現しました。

愛護センターの所長とも連絡を取り合い、情報が錯乱しないようにも注意を払うなど細かい部分までケアしたそうです。

しかし、阪神淡路大震災、東日本大震災など近年で複数の大震災からペットの避難については問題視されていたにも関わらず、未だ市町村での対応はしっかりとしたガイドラインが設定されておらず、災害時に混乱が発生してしまうのが現状であると、小澄先生は問題視されておりました。

今回、熊本市獣医師会はペットと暮らせる住宅の提供についての請願書を5月6日に提出し、早く被災したペット飼い主とペット達が安心して暮らせる環境を提供できるように活動もされております。

  • 「ペットと飼い主が離れて生活をしてはいけない」
  • 「ペットがいる生活・空間は被災して
    落ち込んでいる人々にも笑いや幸せを提供してくれる」
  • 「人と動物の共生はこのような時だからこそ大切である」

このような小澄先生のお言葉が心に響きました。
ペットにとっても飼い主と一緒に安心して暮らせることが一番の幸せだと思います。

このように、今やるべきことを的確に判断し動かれた熊本市獣医師会の皆様がいらしたからこそ、少しでも改善の道を歩めたのだと思います。

しかし、まだまだ獣医師会は人間の医師会のように正式なガイドラインが設定されておらず、属人的な動きになってしまっているということも事実です。

今回の震災の経験をしっかりと学び、業界全体として次に活かすことが必要です。また、地震が来た時だけでなく、災害が来る前に災害が来ることを想定して、動くことはもっと必要です。

「ペット可物件」というくくりではなく、もっと当たり前に人と動物の共生が実現できる世界になれば、もっと当たり前の選択ができる世界になるのかもしれません。

Knots 正会員 小早川 斉

今回、飼い主さん情報支援を行う中で、以下のことがわかりました。

一時避難は公営住宅提供が主となり、担当は地方行政の住宅部局となります。しかし、通常公営住宅はペット可ではない為、住宅部局には、そもそも、ペットと一緒に入居するという概念がありません。

動物関係の部局は、動物の担当なので、保護は出来ますが、飼い主さんの住宅に関わる部分は担当外です。

ペットと一緒に暮らすことに対して、担当する部署がないため、制度の狭間で、ペットと一緒では、一時避難の公的支援を受け難い状況となっています。

ペットとの同行避難に際し、今回のような車中泊といった避難状況は、今後も起こり得るということであり、平時からの人と動物が暮らせる場所の在り方を、考えていかねばならないようです。

PIIA Knots 事務局