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「J-HANBS 年次大会 2015」の報告

 

日時:2015年11月7日(土)PM13:00~17:30
場所:神戸ラッセホール 会議室「ハイビスカス」
主催:一般財団法人 J-HANBS

 

《プログラム》
・加藤 元氏挨拶(J-HANBS理事長)
・講演 1 「リバティーペットケアカレッジ(名古屋)における HANB 講座」
吉村 徳裕氏(愛知県支部長/あいち動物病院 院長)
井口 治美氏(愛知県支部長/井口動物病院 獣医師)
・講演 2 「和歌山県における動物介在活動の歩み」
渡邊 喬氏(和歌山市保健所 生活保健課 動物保健班 獣医師)
石田 千晴氏(和歌山県支部長/石田イヌネコ病院 看護士)
・「J-HANBS マスター・インストラクター・オブ・ザ・イヤー」表彰式
・<特別講演> 「ワンメディスン・ワンヘルスセンター 構想」
加藤 元氏 (J-HANBS 理事長/ダクタリ動物病院 総合院長)
・閉会の挨拶 柴内 裕子氏(J-HANBS 理事/赤坂動物病院 総院長)

 

 

人と動物と自然の絆(ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド=HANB)の普及促進をテーマに、様々な活動を続けている一般財団法人 J-HANBSの2015年度年次大会が、神戸市で開催されました。

まずはじめに、J-HANBS理事長の加藤元氏より開会の挨拶があり、改めてJ-HANBSの名前の由来であるHANB精神について簡単にお話がありました。団体の名称通り団体の枠にとらわれずに、幅広い分野で人との繋がりを通して活動が広まることを願っておられます。

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この日は、講演1&2として、HANBの精神に基づいた二組の演者から講演が行われ、講演1では、名古屋のリバティーペットケアカレッジでHANB精神について学生に2年間講義を行っている吉村先生と井口先生からお話がありました。1年目の指導を担当している井口先生からは、学生が目指すアシスタント・インストラクターとしてHANB精神を体得するため、自ら答えを導き出すための授業内容が報告されました。井口先生の授業では、班に分かれて話し合うということと、学習する内容を自分の手で「書く」ということに重点が置かれているようです。
班に分かれて他の生徒の前で発表を行う授業では、人と動物の関わりについて発表内容を自分たちで決め、プレゼンの方法も自分たちで考えます。犬を頭の上から急に触ろうとする手を表現するために、手作りの手のひらを紙芝居に組み合わせたりして、見る人を惹き込む工夫がなされていました。

1年目で井口先生の授業を受講した生徒の2年目を担当する吉村先生からは、実際に現場で働く専門家としての具体例こそが学生たちの心に響くというお話がありました。先生の講演そのものもほとんどスライドを使うことがなく、自身が獣医師として現場で経験した内容を中心に話が伝えられ、特に末期のペットを看取る家族の心の動きと、獣医師としてその思いを受け止める具体的な話はとても印象的でした。

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講演2では、J-HANBS和歌山県支部長であり看護師の石田先生が最初にお話をされ、和歌山県での同行避難などの取り組みについての報告がありました。和歌山県では、今後の南海トラフ地震に備えて県民の防災への意識が高く、子どもたちにも楽しみながら防災のことを自然に意識できるような取り組みが工夫されています。昨年開催されたシンポジウムでは、裸足で卵の殻の上を歩くイベントが行われ、災害時の疑似体験を通して自らの身を守る大切さが伝えられたようです。また、石田先生の口からは何度も和歌山市保健所の職員への感謝の意が述べられていたので、行政と民間との信頼関係が構築されていることが伝わってきました。

次に、その和歌山市保健所・生活衛生課の渡邊先生から市と県の取り組みが紹介されました。和歌山県では、以前からWAWクラス(Wakayama Animal Welfare)という県が独自に開発した愛護教育のプログラムが平成14年から実施されていて、市でも平成19年から取り入れられています。プログラムは全11回にわたる充実した内容で構成されており、主に小学校への訪問活動で実施されています。
犬との接し方に始まり、生き物を飼うということ、盲導犬について、野良犬・捨て犬について、命を感じることなど、人と動物の関わりを様々な視点で子どもたちに伝える試みです。こうした取り組みを県や市がボランティアスタッフと共に実施しています。和歌山県では、行政と学校とボランティアが協働する理想的な関係が構築されているようです。

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休憩を挟んだ後に、「J-HANBS マスター・インストラクター・オブ・ザ・イヤー」と題して、2015年度に最もHANBの精神の普及啓発に貢献したJ-HANBSのマスター・インストラクターに表彰が行われました。今年度この賞に選ばれたのは、子どもたちにHANB活動を熱心に進めてこられた長野県の支部長・齊藤富士雄氏と小坂由里子氏でした。お二人に加藤理事長より表彰状が渡され、後半の特別講演へと移りました。

「ワンメディスン・ワンヘルスセンター 構想」と題された特別講演では、加藤理事長が獣医師を目指すきっかけとなった「愛馬読本」という書籍の中に書かれていた馬の姿から、現在のHuman Animal Bondの考えへと続くベースになる考えが生まれたことが伝えられ、その後の獣医学の発展を考えると、ここで提示している「One Medicine One Health」という考え方に繋がる流れはごく自然なことであり、そうした長年の思いを具体化するのが、ここで示された「ワンメディスン・ワンヘルスセンター構想」です。

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最後に、J-HANBS理事の柴内先生から先日のIAHAIOの発表の中で、今後、AAIの中にAAEとAATがまとめられるという発表があったという報告がありました。動物との関わりや教育の在り方は時代の流れと共に変化し、経験と共に内容も変容していく必要があります。
そして、とても印象的だったのがフィンランドの子どもの教育に関する話の中で、社会全体が人間を信じ、物や自然を大切にする文化が定着しているということです。日本では、校庭や公園に邪魔になる石や岩があると怪我をする前に撤去してしまうという考え方ですが、フィンランドではそれらを撤去するのではなく、安全に登れるようにして自らの身を自分で守る人間を育てることに主眼を置いた教育が成されているとのことです。そうした教育によって、個人の尊重と自己責任のバランスが守られているようです。

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最後に事務局長の松沼氏から、加藤理事長のコメントが収録されているテレビ番組の告知があり、2015年年次大会が閉会となりました。アメリカUCLAの医師 バーバラ・ナッターソン・ホロウィッツ先生の「獣医が知っていて医師がしらないこと」というプレゼンテーションです。是非ご覧ください。


「NHK スーパープレゼンテーション(TED)」(Eテレ)

日時:11月25日(水) 夜10:25~10:50(再放送11/30(月) 0:45~1:10(日曜の夜中)