ポスターセッション《発表要旨》
・野口 真麿子(兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科)
「”豊かすぎる餌”がコウノトリのなわばり社会に与える影響」
兵庫県但馬地方においては、コウノトリをかつて生息していた場所へ再導入する野生復帰の取組が2005年から始まり、2007年には46年ぶりに野外個体が巣立ちをした。そして2015年6月現在81個体が豊岡盆地を中心に野外で生息している。この野生復帰事業の中心的な機関として、1999年に豊岡市祥雲寺に兵庫県立コウノトリの郷公園(以下、郷公園)が設立され、野外個体のマネジメントを行う一方、約90個体のコウノトリを飼育している。
郷公園では、コウノトリの姿を自然な形で見学できるよう、上部を解放したオープンケージの中で9個体を展示している。上部が解放されているので、多くの野外個体が飼育個体への給餌を狙って飛来し、ここで採餌している。本研究では、このオープンケージの存在に着目し、郷公園のすぐそばになわばりを構え営巣しているペアと、豊岡盆地中心に営巣しているペアを比較することにより、オープンケージが野外コウノトリの社会に与える影響について明らかにする。
コウノトリは性成熟するのに雌雄共に3年の年月を要するということが既に明らかになっており、豊岡盆地内にも成熟前の若鳥がフローター(あぶれ個体)として数多く生息している。本研究により、これらの個体が、ペアのなわばり内にフローターとして滞在していることが分かった。そこで、フローターの存在に着目し、彼らのなわばり内滞在パターンを明らかにするとともに、オープンケージの存在が、コウノトリ社会にどのように影響しているのかを考察する。