・江崎 保男氏(兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科/県立コウノトリの郷公園)
「コウノトリ野生復帰にみる人と自然の共生」
コウノトリCiconia boycianaはかつて(おそらく江戸時代まで)広く全国に分布し、各地で繁殖していたと考えられるが、明治期以降の確たる情報は兵庫県但馬地方に限られるようになり、1971年に国内繁殖個体群は姿を消した。その後、兵庫県と豊岡市が文化庁の財政支援の許で連携しながら、飼育下繁殖にそそいだ多大な努力の結果、1990年代以降、飼育個体は数を増やし、2005年には、兵庫県立コウノトリの郷公園による野生復帰が豊岡盆地で開始された。2015年現在、豊岡盆地には9つがいが繁殖するとともに、若鳥を中心とする単独個体をあわせた約70羽が、但馬地方だけでなく、全国各地の空を舞っている。この成果は、官民学の連携によって得られたものであり、「人と自然の共生」にむけた着実な歩みであると評価できる。本講演では、これまでのコウノトリの歴史と野生復帰の成果を紹介する。 |