・中塚 圭子氏(人とペットの共生環境研究所)
「日本人の琴線に触れる犬伝説 −弘法大師を高野山へ導いた白と黒」
動物と調和した人間社会を築くためには、これまでの動物を人社会に合うように動物の行動を制限したり管理したりといった人間社会中心の考え方を改め、動物と共生するための新しい考え方を取り入れる必要がある。
犬に纏わる各地の伝説や日本の史実を紐解いていくと、そこには犬をありのままの犬として尊重しながら共生するという日本人的な思考が存在した。
奇しくも今年は高野山開山1200年である。高野山開山に寄与した白犬と黒犬の物語を例に、1)犬の優秀な嗅覚に感謝する姿、2)ナビゲーター役である犬と、「三鈷」と呼ばれる仏具を発見してもらいたい人との高度なコミュニケーションの存在、といった、犬の習性を尊重しながら共生する姿を詳らかにする。
日本には多くの犬伝説が存在する。犬の習性を剥奪するのではなく尊重するという古来より日本に存在した思考は、現代の人と犬との共生を考える上でまさに温故知新の知恵であろう。この思考を次世代の子どもたちに伝説として語り継いでいく意義は大きいと同時に、日本の共生の考え方を世界に知らせることの意義も大きい。 |