奈良県が取り組む
動物のいのちを通した子どもへの「いのちの教育」
この日は、台風27号の接近に伴って、予定をしていた2校の内の1校が遠足中止となり、王寺北小学校の1年生65名のみの授業となりましたが、台風が逸れて、ほとんど雨が降りませんでした。
研修会への参加者は7名ですが、午後からの王寺北小学校の「プログラムⅢ」の見学の前に、「Ⅰ」と「Ⅱ」を研修会の参加者を子どもに見立てて模擬授業を行いました。指導役の谷野先生と大森先生が交代で授業を行いましたが、参加者をすっかり小学生という設定にして、とても和やかな雰囲気で模擬授業を行うことができました。ときには、動物に関わる専門知識が必要な質問などが出る場合もありますが、そういったときには獣医師である職員・藤井氏が専門家として説明する体制になっています。大人の参加者にとっても、大型の張り子を抱えて移動させるという行為は、物珍しくて皆さま興味津々のようでした。子どもたちが興味を持って、授業に参加することができるというのも、このプログラムの大きな特徴になっています。
午後からは1組と2組に分かれて「プログラムⅢ」の学習をしました。この小学校では、同年5月に「プログラムⅠ」を実施したのですが、「ふりかえり」の時間では、半年前のことでもしっかりと記憶に残っており、多くの子どもたちが次々と手を挙げて発表してくれました。このプログラムが子ども達にとって心に残るものであることをあらわしています。
このプログラムでは、「人間と動物は繋がっている」「動物にも心がある」など、いくつかの大切なキーワードがあります。そうしたポイントは、指導者と一緒に、子どもたちが大きな声を出して読み上げます。それが、「ふりかえり」の効果と共に、彼らの心の中にしっかりと刻み込まれることになるのです。
授業見学の後には、奈良県のこれまでの取り組みと経緯報告があり、その後に参加者との意見交換の時間も用意しました。この日、参加者の中には、7月の支援事業で簡易ツールの申込みをされた和歌山県動物愛護センターの職員の方も参加されており、すでに小学校で自ら実施したときのエピソードや、今後、和歌山県でどのようにこのプログラムを普及させていけば良いのかという相談もありました。
昨年の意見交換での要望が形となり、こうして他府県の職員によって、より多くの子どもたちに「いのちの大切さ」を伝えることができるプログラムが動き始めました。今後、各自治体によって様々な反省点や改良点などが報告されることになるかと思いますが、まさにこのプログラム自体が「いのち」を持った内容となって、各地域で愛されるものとなることを願っています。
また、これらの内容は、来年7月に神戸で開催される第3回神戸アニマルケア国際会議2014(ICAC KOBE 2014)のシンポジウムで報告されることになっています。国外からも多くの講演者やパネリストが参加する会議ですので、日本発のアジア型ヒューメイン・エデュケーションを知ってもらう良い機会となることは間違いありません。
この研修会にご参加頂いた全国の動物行政の皆様、教育関係者の皆様、そして授業の見学にご理解を頂きました小学校の皆様に、改めて感謝申し上げます。