ヒューメインセンタージャパン(HCJ)事業セミナー
シェルターメディシン~より良い譲渡に向けて第2弾
―シェルターにおける獣医学的管理と行動学―
■主 催 | 社団法人 日本動物福祉協会/公益社団法人 Knots | |
■協 賛 | マース ジャパン リミテッド(ぺディグリー®) | |
■後 援 | 環境省/社団法人 日本獣医師会/公益社団法人 日本動物病院福祉協会 | |
■開催日時 | 平成23年1月15日(東京)/1月22日(大阪) | |
■開催場所 | 東京会場 | ヤマザキ動物専門学校本校舎 |
大阪会場 | 大阪府立大学りんくうキャンパス | |
■講 師 | 田中亜紀氏 (米国カリフォルニア州立大学デイビス校)(略歴) | |
水越美奈氏 (日本獣医生命科学大学獣医学部専任講師)(略歴) | ||
■参加人数 | 東京会場 | 71名 |
大阪会場 | 48名 |
昨年2010年6月に、HCJ事業としての第1回目となるセミナー「シェルターメディシン~より良い譲渡に向けて」を東京と大阪2箇所の会場で2日間に渡って行いましたが、その第2弾フォローアップセミナーが、東京(2011年1月15日)、大阪(同月22日)で開催されました。
セミナーは午前10時~17時までの長丁場となりましたが、両日共にメモを取りながら熱心に講師の話に耳を傾け、後半では活発な質疑応答が行われていました。
開催に先立ち、主催者から、開催に関わる関係者と来場者の皆様に対して感謝の挨拶をさせて頂きました。次に協賛者である、マース ジャパン リミテッドの佐野様(東京会場)、舟喜様(大阪会場)からご挨拶を頂きました。マース ジャパン リミテッド様は、ペットの大切さや命の大切さを感じてもらいたいという願いから、PDA活動の一環として出版協力をされた絵本『ずっといっしょ』をより多くの人に読んで頂くため、セミナー参加関係機関での利用を募り、無料で配布する取り組みも行っておられます。
大阪会場では、会場を無償で提供して下さった大阪府立大学の笹井教授より、「当大学の学生も、多くの民間のボランティア団体で動物に関わる活動に参加させて頂いているので、大学として出来ることを協力させて頂きたい」というお言葉も頂きました。
現場でのデータによるエビデンスを基に行う生産医療であるシェルターメディシンでは、シェルターという特殊な環境下での保護動物の「群れ」の中で、譲渡の妨げになるストレスによる問題行動や疾病を少しでも少なくする予防医療が基本となります。多くのスタッフやボランティアが出入りする施設では、ちょっとした感染症の発症に対する判断を見過ごすことが、他の動物や地域への感染を拡大させることにも繋がりかねません。 そうしたリスクを減らすために、日常的に行われているシェルターワークの中で見落とされてしまうケージの移動による感染や、人間の手や白衣からの感染、またスタッフやボランティアの仕事に対するモチベーションなどもデータでモニタリングし、客観的な判断を行わなければなりません。群管理で重要なことは、保護できる頭数は収容できる場所の広さによって決まるのではなく、ケア出来る頭数と管理が出来るスタッフの数、そして時間によって決めなければならないということです。
このように、より多くのデータからリスクマネージメントを行う考え方は、今後の日本でのシェルターワークにも不可欠なものとなってくるでしょう。
そもそも犬にとって分かりやすいコマンドとは、一体どういったものなのでしょうか?水越氏のお話の中でとても印象に残った例え話は、「関東では左側に立って右側を開けるエスカレーターですが、関西ではその全く逆」というお話でした。同じ行動をとっていても、なぜその事象が良くてなぜダメなのかということがきちんと相手(犬)に伝わっていなければ犬は混乱するばかりでストレスを感じ、病気の発症や問題行動を起こす原因を作ってしまいかねません。犬が信頼できる飼い主になるためには、 「犬が好きな飼い主になる」「一貫性がある飼い主になる」「行動が予測可能な飼い主になる」ということが重要になってきます。
トレーニングや犬や猫を飼育する環境などに関して、これまでの間違った認識で広まっている方法なども多く、行動学的、また医療として、より動物の見地に立った飼い主の認識が求められているのではないでしょうか。さらに、譲渡後の動物たちがどの時期にどういった行動の変化を見せるようになるのかということを知る上でも、シェルターメディシンの観点は今後ますます重要になってくると思われます。
お二人の講演の後に、約1時間半の質疑応答の時間が設けられ、実際に日々、動物たちに関わり、施設の管理等を行っておられる参加者から多くの質問が投げかけられました。こうしたディスカッションの場は、日本文化の中で様々な壁に直面しながら創意工夫を凝らして活動をしている自治体及びシェルター関係者やボランティア、そして獣医学を学ぶ学生たちにとって、非常にリアルで現実的な情報を共有することが出来る交流の場となったのではないかと感じています。
このセミナーに参加して下さった一人一人の経験や知識が日本独自の貴重なデータとなり、今後の譲渡事業がより前進的なものとなることを心より願っております。
また、会場をご提供下さいました、ヤマザキ動物専門学校、及び大阪府立大学の皆様には、改めまして、ご協力感謝申し上げます。