ヒューメインセンタージャパン(HCJ)事業講演会
動物愛護法 ヨーロッパの運用の現状
―アメリア・タルジ氏による報告―
■主 催 | 社団法人 日本動物福祉協会/NPO法人 Knots |
■協 賛 | マース ジャパンリ ミテッド |
■後 援 | 環境省近畿地方環境事務所 / 奈良県 / 奈良市 |
■開催日時 | 平成22年7月23日(金)10:00〜12:30 |
■開催場所 | 地方職員共済組合 奈良宿泊所 猿沢荘 わかくさ |
■参加人数 | 約50名 |
本講演会の演者であるアメリア・タルジ氏(講師略歴ページ)は、現在、フランス、ティエルネの動物保護協会理事および副会長、アルプ マリティームCDSPA動物保健保護部 動物保護団体代表、ジュネーブ パテトンデュー(ペットセラピー団体)副会長をお務めになっておられる他、法律家そして通訳者としても沢山の実績をお持ちの方です。
タルジ氏は、2001年に開催した、「神戸21世紀・復興記念事業/環境省動物愛護週間地方行事「りぶ・らぶ・あにまるず21 ~21世紀の人と動物の共生へ向けて~」国際シンポジウムにおいて、当時スピーカーをお務め頂いており、今回は10年ぶりのご来日となりました。
タルジ氏は、法律は、社会が望んで初めて作られるものであり、大切なことは、その法律が適正に運用されることであると話され、主にフランスでの運用の事例を幾つかご紹介下さいました。
動物虐待の問題はフランスでもありますが、動物の法律上の地位は「物」として扱われているとのことです。虐待等の報告があると、まずは動物愛護団体が調査に乗り出し、その後行政と協力して問題解決にあたるそうです。
その為には、行政と動物愛護団体の間に信頼関係がなければなりません。信頼関係を築く為には、団体の方々が行政の信頼に足るプロにならなくてはいけない、と話されました。
但し、法の適用にあたっては、法律への理解が大切であり、法律を運用する人々、守る人々の意識が大きく影響するため、若い頃からの人々への教育、ヒューメインエデュケーションの重要性を強調されました。
また、タルジ氏は動物関係の法律には2つのタイプがあることを話されました。
アニマルウェルフェアを推進する前向きなものと虐待を罰する為のものの2種類です。これからは、前者の科学的根拠に基づいた飼育環境の設定等を行って行く前向きな法律の強化が必要となるであろうと話されました。それぞれの動物達の行動や生態への理解が深まれば深まる程、私達の責任も重大となります。
最後に、16歳になる犬のお写真をご紹介されました。その犬は、以前にひどい虐待を受けましたが、今は、幸せに暮らしているそうです。世界中の全ての動物達がこんなふうに気持ちよく過ごせれば良いと思っています、という言葉で講演会は終了しました。
その後の質疑応答では、ヒューメインエデュケーション(人道教育)、安楽死について、フランスにおける行政の施設(パウンド)とシェルターの役割等様々な質問に幅広い知識と経験をもとにお答え頂きました。また、日本の動物愛護センターの役割に付いてもタルジ氏は 大変評価をされ、機会があれば、改めてフランスからメンバーを連れてご見学をされたいとのことでした。
また日本の動物愛護行政のシステムをフランスの行政府に是非、ご紹介したいとお話されました。
※タルジ氏は、2001年に来日された際に兵庫県動物愛護センターを見学しておられます。
タルジ氏のお話から、法律の運用に関して抱えている問題や課題は、国を超えて共有出来るものであることを改めて認識することができました。そして、今後の法律の改正、運用のヒントとなるお話を伺うことの出来た貴重な機会となりました。