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2010.02.21

【調査報告】集合住宅におけるペット飼育実態についてのアンケート

アンケート実施概要

 
1.実施目的
平成15年度区政振興事業として東灘区「ペット適正飼養推進事業(集合住宅を対象とした)」を行なうにあたり、東灘区内分譲集合住宅における、ペット飼育実態調査及びペットクラブ等の調査を行うことで、東灘区内分譲集合住宅におけるペット飼育現状を正確に把握し、課題等を 分析することにより集合住宅におけるペット適正飼養の為の基礎資料とする。

2.実施方法
書き込み依頼及び聞き取り調査

3.実施期間
平成15年8月中旬~平成15年12月下旬

4.実施対象者
東灘区内でペット飼育可能分譲集合住宅の管理をしている(社)高層住宅管理業協会会員 
の管理会社
 
 

アンケート実施方法及びアンケート数

 
1.東灘区内のペット飼育可分譲集合住宅の抽出
  関西及び関東に所在地を置く(社)高層住宅管理業協会の会員である管理会社全社に電話にて本調査の概要、目的を説明した上で、東灘区内でのペット飼育可分譲集合住宅の管理の有無を確認。

    調査対象となった管理会社数・・・308社
    内 東灘区内にペット飼育可分譲集合住宅を管理していない・・・・285社
       東灘区内にペット飼育可分譲集合住宅を管理している・・・・17社    
       東灘区内にペット飼育可分譲集合住宅の管理の有無に関する回答を拒否 ・・・・6社
 

2.アンケートの手法
  アンケートをとるにあたり、客観的な事実を収集するように努めた。よって、書き手の意思により事実が異なることが危惧される管理組合ではなく管理会社からアンケート収集を行なった。

3.アンケート依頼
1.にて東灘区内でのペット飼育可分譲集合住宅の管理が確認され、なおかつ各住宅毎の標記アンケートの協力または、協力を検討して頂ける管理会社にアンケート用紙を送付。

     アンケート送付数 17社 計61部送付

4.アンケート回答数
     アンケートによる回答  4社 計7部   
     電話での聞き取りによる回答 8社
     回答拒否 5社

5.アンケートの集計、分析
  アンケートの質問事項が細部に渡ったこと、そして、各住宅毎の解答をお願いした事で、管理会社側の手間が多大になったことや守秘義務等の問題により回収率が大変低くなってしまったことで、集計を諦めざるをえなくなった。
  また、ペット飼育可能な集合住宅を東灘区内に何戸管理しておられるかという質問に対しても、調べるのにお時間がかかるとのことで、回答頂くことが出来なかった。
 そこで、アンケートによる回答を頂けなかった8社に、フリートークの形で現状やご意見等の聞き取りを
電話で行った。また、対象地区外(西宮市)ではあるが、アンケートにご協力頂いた会社、ペット飼育禁止ではあるが、ご意見を寄せて下さった会社についても参考資料としてまとめた。
  アンケートにご協力頂いた4社及び電話にてお話を伺うことが出来た8社の担当者の方のご意見、ご要望をまとめることとした。

 

アンケート内容

1.貴マンションの管理規約または、細則等にペットについての記載はありますか。
 該当する答えを○で囲んで下さい。   ある ・ ない

2.貴マンションで飼育を許可されている動物についてお教え下さい。
 (1)動物の種類  (2)サイズ  (3)数  (4)その他の取り決め等(具体的にお書き下さい。)

3.貴マンションでのペットの飼育状況についてお教え下さい。
 (1)飼育率について
   総戸数  戸、 ペットを飼育している戸数  戸、 把握できていない
 (2)ペットの種類(犬、猫等)と数について
   種類:          数:   匹、   種類:         数:    匹
   把握できていない

4.貴マンションにペットのための設備をお持ちでしたらお教え下さい。
 (例:足洗い場、専用エレベーター等)

5.貴マンション内には「ペットクラブ」(ペットの飼い主等による組織)のような
  組織は存在していますか。 
  ある(→6へ) ・ ない(→7へ)

6.質問5.であるとお答えになった方にお伺いします。
  貴マンションに存在する「ペットクラブ」の概要についてお教え下さい。
 (1)その「ペットクラブ」は、規約や細則等で義務付けられたものですか。
  はい(→(3)へ) ・ いいえ(→(2)へ)
 (2)(1)でいいえと答えた方にお伺いします。「ペットクラブ」の出来た経緯を差し支えなければ
  お教え下さい。
 (3)構成メンバーをお教え下さい。(当てはまるもの全てに○をお付け下さい。)    
  ペット飼育世帯(全戸・一部)、居住世帯(全戸・一部)、管理会社、その他
 (4)「ペットクラブ」でどのような活動をされているかお教え下さい。
  (例:月に1回のミーティング、しつけ教室の開催等)

7.貴マンションでは、ペット飼育を巡ってのトラブルはありますか。
  ある(→8へ) ・ ない(→9へ)

8.質問7.で「ある」と答えた方にお伺いします。
 (1)トラブルについて具体的にお教え下さい。
 (2)そのトラブルに対して何か対策をとられましたか。具体的にお教え下さい。
 (3)その結果はいかがでしたことは何ですか。
 具体的にお教え下さい。

9.皆様にお伺いします。ペット飼育可マンションにおいて外部からのどのような
  サポートシステムが必要だと思われますか。

10.皆様にお伺いします。
   ペット飼育可マンションにおいて行政に望むことは何ですか。

アンケート結果

  アンケート用紙によりご回答頂いた7件と電話により聞き取り調査を行なった8件計15件についての結果をまとめた。但し、電話による聞き取り調査では、アンケートの全ての項目にお答え頂いていないので、質問によって回答数にばらつきがある。

1.管理規約または、細則等におけるペットについての記載の有無について
   ある・・14件 
   ある(物件による)・・1件
   ない・・0件

2.マンションで飼育を許可されている動物について
   (1)動物の種類
    犬または猫・・7件、小型犬、猫、鳥など・・1件、犬、猫、小鳥、観賞魚・・1件、無回答・・2件
   (2)サイズ 成獣の状態で体長50cm以下・・3件
          成獣の状態で体長50cm以内、体重10k以内・・2件
          体長50cm以内・・1件
          体長60cm以内・・1件、
          体長70cm以内、体重10kg以下・・1件、無回答・・1件  
   (3)数    1匹・・4件、2匹・・2件、無回答・・9件
   (4)その他の取り決め等  細則に準ずる。・・4件、
            共用部では抱きかかえて移動・・7件、
            無回答・・1件

3.マンションでのペットの飼育状況について
   (1)飼育率について 
     約20%・・3件、約10%・・2件、把握不可・・3件、回答不可・・1件
   (2)ペットの種類(犬、猫等)と数について
     回答あり・・2件、把握不可・・1件、回答不可・・1件、無回答・・3件

4.マンション内のペットのための設備の有無
   洗い場・・1件、足洗い場がある場合がある・・1件、なし・・3件、無回答・・2件

5.「ペットクラブ」(ペットの飼い主等による組織)の存在の有無について
   ある・・2件、ある(物件によっては)・・2件、ない・・7件、無回答・・2件

6.「ペットクラブ」の概要について
   (1)義務付けの有無について
        有・・2件、無回答・・2件
   (2)ペットクラブ誕生の経緯について
        無回答・・4件
   (3)ペットクラブの構成メンバー
        ペット飼育世帯全戸・・1件、無回答・・3件
   (4)ペットクラブの活動概要
        現在具体的な活動なし・・1件、無回答・・3件

7.マンションでの、ペット飼育を巡ってのトラブルの有無について
   ある・・8件、ある(物件による)・・1件
   ほとんど無い・・1件、ない・・4件、回答不可・・1件

8.トラブルについて
   (1)トラブルの内容(複数回答)  
     細則違反・・8件、ペットの大きさ、数が守れない。共用部での排泄放置と匂い。
            移動の際にケージまたは抱きかかえるというルールが守られていない。
     鳴き声の問題・・6件  
   (2)対策  注意文の掲示、違反者が分かっている場合は注意文をポス手リング
         住民同士(組合、理事会、ペットクラブ)の話し合い
         飼育されているペット登録の徹底  
   (3)結果 排泄等の問題の場合・・改善に向かうこともある。
         ペットの大きさや数・・一代限りで容認
         マンションを出て行かれる場合もある。

9.外部からのサポートシステムについて
   相談窓口の設置・・2件、専門家の派遣や講習会等の実施・・6件

10.ペット飼育可マンションにおいて行政に望むこと
   相談窓口の設置・・6件、飼主への啓蒙・・2件


まとめと考察

飼育を巡るトラブルについて
1)トラブルの主な内容
 大半の住宅が飼育してよい動物の大きさを体長50~70cm以内、体重10kg以内といった形で、また数を1匹または2匹と制限している。大きさの制限の基準については、エレベーター、廊下、エントランス等の共有部分で抱っこまたはケージに入れての移動を義務付けている事から人が抱えられる大きさまでとしている。何故地面を歩かせてはいけないかという点については、排泄の問題が大きいようだ。多い苦情として、共有部分での匂いや毛、排泄の不始末が上げられる。管理会社としては、移動の際動物を下におろすことなく外へ出ることで、このような問題が発生しにくくなると考えられている。また、動物が苦手な方、怖い方への配慮でもある。
 ところが最初に挙げた、飼ってよい動物の大きさの基準を上回る動物を飼育する人が多いのも現状らしい。すると共有部分での抱きかかえまたはケージに入れての移動が守られなくなる。
  また、排泄物の後始末をしない、ベランダで動物をブラッシングまたは飼育する、といった問題もある。このように規約や細則が守れないのは、モラルの問題につきるとする意見も多い。また、加えて鳴き声の問題もある。

2)問題への対応
 このような問題が起きた際に、どういった対応を取られているかについては、ペットクラブが  ある場合は、住民同士で話し合いをしてもらう事で問題解決を図っている。
 飼い主同士の交流があることで連帯感が生まれ、一人の問題が飼い主全体の問題となることという認識が生まれる。お互いに監視作用も働くし、何か困った際には相談も出来る。このようにペットクラブが上手く機能している所では、問題解決に対応することも可能だが、規約でペットクラブの設立を義務付けていても実際には機能していない所も多いようだ。ペットクラブの立ち上げが上手くいかない理由としては、居住者が日中勤め等で留守の場合が多いことや住民間の交流が希薄な場合等考えられる。ペットクラブがない場合は、段階を踏んだ対応を行なっている。文書等による注意で効果がない場合は組合での話し合いを行い、それでも解決出来ず問題がこじれた場合には、住んでいる場所から出て行く、ペットを手放す、裁判となる場合もある。また、話し合いの末規約を改正し、ペット飼育を禁止してしまった例もある。
 
 

考察

 
 マンション内で起きている問題の多くは、飼い主のマナーの問題、飼育している動物に対する基礎的な知識(生態や習性等)の不足が考えられる。また、飼い主自身が気づかないうちに周囲で問題になってしまっているという場合もある。ペット飼育に限らず戸建てからマンションに越して来られた方の中には、集合住宅で暮らす際のマナーを理解していない方もおられるようだ。この場合には、適切なアドバイスで飼い主に問題を認識して頂き、納得してもらうことで解決出る場合が多い。

1)ペットに関する適切な情報を伝えることの重要性
 例えば法律の周知、講習会等による飼育動物への基礎的な知識の向上、飼い主では手に負えない問題が起きた場合に、指導を行ったり専門家を紹介できるシステム等が考えられる。
 何社かのご意見にもあったように、例えば行政機関に上記のようなシステムを備えた、動物の飼育に関する相談窓口を設け、情報の共有化が図れる仕組みを作ることが出来れば、多くの問題が早期に解決に向かうのではないかと思われる。
 また、これから飼育を考えている方へも情報提供が出来れば、将来起こりうるトラブルを未然に防げる可能性も考えられる。
 当法人では、ペット飼育が可能な集合住宅にて、ご依頼があればマナーやしつけ等についての講習会の開催を通して情報提供を行なうこともあるが、上記のような窓口が出来ることによって、より多くの方に適切な情報を提供できる可能性は広がると考えられる。

2)住民間のコミュニティつくりの重要性
 マナーの問題については、住民同士の交流が大きく影響すると考えられる。
 住民同士が顔見知りになること、そして共有部の清掃を徹底することで、監視の目が働きマナー違反 を犯しにくい雰囲気を作ることが出来ると考えられる。 
  ペット飼育可マンションで何らかの問題が発生した場合、ペットクラブが上手く機能していると、対個人では無いため苦情を言いやすい、受け取りやすいという利点がある。比較的問題が深刻化する前に表面化することで、早期解決につながることも考えられる。また、先述したように、監視の目が増えること、一人の問題が飼い主全体の問題という認識も深まるので、マナー違反の抑制にもつながる。このようにペットクラブが上手く機能しそれらの問題を解決に導くというのは、理想的な姿であるが、ペットクラブを立ち上げるに至るまでには住民間のコミュニケーションの問題等克服しなければならない課題が多いのも現状である。

3)規約、細則の明確化
  各管理会社のお話を伺っていると、分譲当初よりペット飼育可をうたい、規約や細則で飼育条件やペットクラブの立ち上げを義務付けているところでは、問題が起こりにくく、また、起こった場合でも比較的解決可能であることが多いようである。
  問題は、ペットに関する規約がなく、ペット飼育の是非がうやむやな状態でペットを飼育されてい る住宅の場合である。このような住宅でトラブルが起きると、飼育反対住民の反発もあり、規約等がないが故に解決もままならないまま問題が深刻化する場合があり、新たに飼育禁止の規約が作られ、飼主に処分を求めるといった対応が取られることもある。
  このような結末を迎えないためにも、動物愛護法の理念に基づく指導の下、規約へのペット飼育についての明文化、また、細則設置の義務化等を条例等で支援出来るしくみづくりも今後必要となるのではないかと思われる。