「IAHAIO 2016パリ大会 報告会」のレポート

「IAHAIO 2016パリ大会 報告会」のレポート

日時:10月22日(土)14:00~16:30
会場:東京農業大学世田谷キャンパス 1号館113教室
参加費:無料
主催:JAHA(公益社団法人日本動物病院協会)/HARs(ヒトと動物の関係学会)
後援:一般財団法人J-HANBS・公益社団法人Knots/特定非営利活動法人 日本補助犬情報センター

 

報告者(発表順):
・細井戸 大成 氏(公益社団法人日本動物病院協会 会長)
・吉田 尚子 氏(公益社団法人日本動物病院協会 理事)
・宮脇 亜祐実(公益社団法人Knots 教育部 教育・啓発係)
・時田 真緒 氏(一般社団法人J-HANBS埼玉支部長/NPO法人セラピードッグすまいるわん 代表理事)
・山本真理子 氏(帝京科学大学 HARs評議員・学術委員)
・新島 典子 氏(ヤマザキ学園大学 HARs理事・学術委員)

 

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細井戸 大成氏

 2016年7月10日から13日にかけ、3年に一度の開催となる“2016 IAHAIO 国際大会”がフランス・パリにて執り行われました。参加が叶わなかった方々にも大会の雰囲気や内容について知っていただき、現状や課題などを共有するために、JAHA(公益社団法人日本動物病院協会)とHARs(ヒトと動物の関係学会)が主催する「IAHAIO 2016 パリ大会 報告会」が開催されました。大会に参加された6名の参加者それぞれから20分程の発表があり、その一人として私もお話をさせて頂きました。はじめに、JAHAの会長を務める細井戸大成氏からご挨拶をいただきました。今大会は開催がパリということもあり、ヨーロッパ圏からの発表や参加者も多く、これまでに比べ非常に質の高いもので、日本からもっとたくさんの人に来ていただきたかったというような感想をいただきました。

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吉田 尚子氏

 続いて発表された公益社団法人日本動物病院協会の吉田尚子氏は、今大会における日本からの参加者で唯一口頭発表をされました。その時の発表内容(「児童精神科病棟における被虐待児の攻撃性に対するドッグセラピーとその潜在的な影響」)についてと、大会で発表された研究の一部についてご紹介されました。吉田氏は、児童精神科病棟で3年間に渡って500人以上の子ども達に行ったドッグセラピーの結果を研究報告としてまとめていました。導入部分でアザラシのロボットを使った際には、子ども達が目をつついたり髭を切ってしまったりすることがあったそうですが、実際に犬を介入した際には、そのような攻撃的な行動が報告されたことは一度も無かったというのが印象的でした。セラピーを受けた多くの子どもの行動に落ち着きが見られたとのことですので、今後もドッグセラピーの効果が期待できそうです。 

 僭越ながら私も公益社団法人Knotsからの参加者としてお話しをさせていただきました。今回のパリ大会では、奈良県と共同で行っている「いのちの教育展開事業」についてポスター発表を行いました。今回はその内容と成果についてと、IAHAIOで発表された未成年に関する研究のまとめについてご報告させていただきました。

 平成24年度から始まった奈良県の「いのちの教育プログラム」では、子ども達に動物に対する共感力や責任感を教えるため、体験メニュー、学習メニュー、ワークショップの3つによって構成される「いのちの教育」を実施しています。今回の発表では、学習メニューの一つである動物の張り子を使ったプログラムの内容と、奈良県内の小学校45校に在籍する児童2,712名に対する児童の理解度と共感力について評価した結果をご報告させていただきました。可愛らしい動物のイラストに足を止める方も多く、「フランスでもこのツールは使えないのか?」などのご質問もいただき、たくさんの国の方々に興味をもっていただく貴重な機会となりました。 (「いのちの教育展開事業」について詳しくはこちらをご参照ください)。

プリント

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Knots教育・啓発係 宮脇

 また、Knotsの教育・啓発係ということで私自身関心がありましたので、今大会で子どもに関する研究はどのくらいあったのか気になり調べてみました(口頭発表のみ調査)。対象が幼児から大学生までと幅広かったため、「未成年に関する研究」という言い方でまとめさせていただきました。数えてみると、全体の約4割が未成年に関する研究でした。とくにヨーロッパ圏からの発表が多く、日本からは吉田先生の発表が1題でした。その中でも印象に残っている発表は、留学生を対象としたドッグセラピーについての研究でした。私自身も留学中に誰にも頼れない、ペットも飼えない状況を経験しているので、このような研究が進み、留学生でも犬と触れ合うことができ、そこから人間関係を広げていけるようなプログラムができると良いなと感じました。

 一般社団法人J-HANBS埼玉支部長でありNPO法人セラピードッグすまいるわん 代表理事の時田真緒氏は、現地で撮影したたくさんの写真を交えながらお話ししてくださいました。とくに印象に残ったのはTemple Grandin氏のお話だったそうです。残念ながら動画での登場でしたが、当たり前のことを分かりやすく説明してくださったGrandin氏の言葉に、ご自身が尽力されてきた団体がやってきたことは正しかったのだと確信されたようです。また、時田氏は英語が分からない参加者としての感想をお話ししてくださったので、英語に自信のない方でも十分に楽しめるということが伝わってきました。

 時田氏とは学会中もお話しする機会が多く、仲良く接してくださりとても感謝しています。行動力があり、多くの実践を積んでいる方で、個人的にもセラピー犬の育成についてなどたくさんの情報をシェアしていただきました。

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山本 真理子氏

  帝京科学大学の山本真理子氏は、ISAZ(International Society for Anthrozoology)の大会にも参加されたことから、IAHAIOとISAZの関わりや双方の研究についてお話しされました。IAHAIOは「HAI(Human Animal Interaction)の現場で活躍する団体の包括的組織」であるのに対して、ISAZは「HAIを研究する個人の組織」であることから、ISAZが学術面の強化を行い、IAHAIOが組織連携を強化することにより、この分野がさらに発展していくのではないかと解いていました。
 私自身ISAZやIAHAIOとの関係についてよく理解できていなかったので、山本氏のお話しはとても勉強になりました。

 ヤマザキ学園大学の新島典子氏は、日本からの発表内容の傾向についてお話しがありました。今大会の参加者リスト356名中、日本人の参加者は27名だったそうです。IAHAIOが定める8つのテーマについてと、その中で発表された日本からの議題についてお話しされました。

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新島 典子氏

  ヤマザキ学園大学の新島典子氏は、日本からの発表内容の傾向についてお話しがありました。今大会の参加者リスト356名中、日本人の参加者は27名だったそうです。IAHAIOが定める8つのテーマについてと、その中で発表された日本からの議題についてお話しされました。

 英語のタイトルを全て和訳してくださったので、英語が苦手な方にも分かりやすかったのではないかと思います。口頭発表に比べ、ポスター発表はハードルが低いので、今後の大会でぜひ挑戦して欲しいとお話しされていました。

 

 

IAHAIOが定める8つのテーマ

全体の発表数

日本からの発表数

①    地球上における領域、文化、社会の枠組みを超えたHAIの実践におけるイノベーション

24題

5題

②    多様な人々や状況における革新的研究

27題

2題

③    HAIやAAIでの動物の認知、情緒、行動における新たな洞察

5題

1題

④    HABにおける新たな理論的視座

10題

0題

⑤    HAI教育における進歩

11題

1題

⑥    動物虐待と対人暴力の件形成についての世界的視座

5題

0題

⑦    研究方法論:HAIや量的・質的・混在型研究方法について

8題

0題

⑧    動物虐待と対人暴力の関係性についての世界的視座

2題

1題

 image 長くなりましたが報告会の様子は伝わったでしょうか?東京農業大学が会場だったこともあり多くの学生さんも聞きに来てくれていました。海外の学会に参加するというのは少々ハードルが高いようにも感じますが、今回の報告を聞き、日本からより多くの方が参加してくださることを願っています!

 

Knots教育・啓発係 宮脇