「京都動物愛護センター見学」レポート

「京都動物愛護センター見学」レポート

 

訪問日:2016年4月26日

 

 京都動物愛護センターは、2015年5月に京都駅からもアクセスが便利な上鳥羽公園内にオープンしました。京都出身で動物愛護の活動を積極的に行っていることでも知られている女優・杉本彩さんが名誉センター長に就任しておられ、1周年記念イベントでも講演が行われました。

 多くの愛護(管理)センターは、住宅地から離れた山間部や埋立地にあることが多いのですが、この京都動物愛護センターの周囲にはマンションや企業のビルなどが立ち並んでおり、しかもセンターの目の前には有料ですが駐車場も完備されていますので、都心部からのアクセスが非常に便利な場所にあります。市民が気軽に相談に訪れることができる場として、待ち望まれた都市部での運営が期待されています。

 また、都道府県と政令指定都市が共同で愛護センターを運営するのは全国初の試みで、京都府と京都市が共同で「京都動物愛護憲章」という動物愛護に対する基本的な5つの指針を打ち立てたのも日本で初めてとなります。

 その他、「環境先進都市・京都」としての取り組みで、設計の段階から省エネ設備の導入が計画され、太陽光発電システム、太陽熱利用システムの設置や犬猫収容室の床の冷暖房に地中熱使用システムが採用されています。

 それらの取り組みを支えるのが「動物愛ランド・京都」(京都動物愛護センターの愛称)のマスコット・キャラクター「京ちゃん」と「都ちゃん」です。とってもキュートで、このセンターの明るい雰囲気を引き立てていました。

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 事務所棟のエントランスには、センターの活動を分かりやすく解説したパネル類が展示されています。新しい飼い主募集中の動物や新たな飼い主が見つかった動物の紹介、また本当に動物の世話をすることができるのかを事前に考えてみる工夫や、悲しい現実を伝えるパネルまで、なぜこのセンターが必要なのかを広く市民に知ってもらう場となっています。

 その他、公園のドッグランを見渡すことができる場所に会議室が設けられていますが、使用していないときは壁を壁面に収納できるようになっていて、エントランスが広々とした空間になっています。また、事務所からも会議室を通してドッグランを見ることができますので、利用者の安全を確保する上でも効果的な配慮となっているようです。

 これまでは、犬は順調に譲渡数を伸ばしていて、猫はなかなか譲渡されない…というのが全国的な傾向でしたが、京都の場合はこの愛護センターが完成してからは来場者数(譲渡希望申込件数)がこれまでより大幅に増加し、それに伴って猫の譲渡数も増えたそうです。さらに、子犬、子猫の場合は収容している動物がいない場合もあるので、順番待ちの状態になることもあるようで、「ペットを飼う場合は愛護センターから引き取る」という意識が市民に定着し始めた成果が現れているのでしょう。

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 動物棟には、譲渡対象犬猫の部屋である譲渡室、収容された犬猫が最初に収容される収容室と検疫室、その他にトリミングルームなどが設置されていて、器具が揃ったトリミング室は予約をすれば市民が有料で使用することも可能です。一般家庭では毛が舞い散って処理をするのが大変なので、市民が気軽にセンターに来てこの場所のことを知ってもらうと共に、行政として場所のサービスを提供できる良いシステムだと感じました。

 犬、猫の譲渡室にはパドックを設置し、特に猫は飼育モデル室という部屋が設けられており、猫を飼ったことがない人にも、室内で猫を飼育した場合のイメー ジを持てるような工夫が成されています。

 そしてここには、公益社団法人 京都市獣医師会による夜間救急センターが併設されており、夜間の緊急時には市民がここに駆けつけてペットの治療を受けることも可能になっています(夜間の緊急時のみ)。まさに、この愛護センターが京都のペットにまつわる情報とサービスの発信拠点となっているのが分かります。

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 そして、この京都動物愛護センターの立地を最大限に活かした「ヒルズ・ドッグラン」という名称のドッグランが併設されています。京都市ネーミングライツ市民等提案制度の審査を経て、10年間の契約で日本ヒルズ・コルゲート株式会社がネーミングライツパートナーに決定して運営されています。

 このドッグランの利用にあたっては、飼い犬と飼い主の事前登録が必要になりますが、条件さえ満たしていれば誰でも自由に利用することができます。前述のとおり以前からあった公園内にあるため、ケヤキやトウカエデなどの大きな木々が程よい木陰を作り出して、そこから犬たちが駆け回る姿を見ているだけでも、犬との生活の楽しさを感じることができます。

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【京都市動物愛護センターの全景】
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 このセンターでは、動物の保護から譲渡に至るまでの過程で外部の専門家による知識と経験を大胆に活用しています。「京都方式」と呼ばれるこのやり方は、外部の専門家と職員が協働でより適切な譲渡事業を推進していくものです。今後、まだ愛護センターを持っていない自治体がその設置を検討する際、この京都動物愛護センターでのさまざまな工夫は、大いに参考にされるのではないかと感じました。

 先日、オープンから1周年を迎えたばかりのセンターですが、まったく課題が無くなった訳ではありません。開かれた場になった反面、公園やドッグランの管理など、職員の負担が大きくなっているのも実情です。また、来場者が増えて譲渡数も増加し、人と動物との関わりの情報発信の場としての機能は果たされていますが、核家族化が進む中での高齢者とペットとの共存を如何にサポートしていくのかという課題は残されています。今後、更に高齢化が進む中、各自治体が横の繋がりを図りつつ、民間の企業や団体も一緒になって考えていかなくてはいけない大きな課題ではないかと思いました。

 

京都動物愛護センター・ウェブサイト
http://kyoto-ani-love.com/