日本ペットサミット:「スウェーデンにおけるどうぶつたちの暮らしから日本のどうぶつ事情を考える」 報告

開催日時:2016年2月24日(水)18:00〜20:00
会場:東京大学動物医療センター4階
 
IMG_0062スウェーデンの森の中で犬1頭と馬3頭と暮らしながら世界の犬文化についての取材に奔走し続けている藤田りか子さんをメインパネラーとして招待し開催されました。
 
当初予定していた定員50名を大幅に超え、臨時座席も用意されるほど。
そんな大勢のペット業界の方々が集まる中、藤田りか子さんによる日本とスウェーデンでの犬との暮らし方の違いについての講演が始まりました。
 
まず前提として北欧では犬のメンタル福祉の研究が豊富で、
・自分が犬のことが好きでも、犬は自分のことを好きでないといけないのではないか。
・医療の発展は犬にとっての幸せなのか?(動物保護方に沿っているのか?)
など、犬を擬人化せずに「犬としての生き方を尊重する」という点を聞いたときに、犬に対して自分たちの都合を押し付けていることもあるのかもしれない。とハッといたしました。
 
そんな中、特に気づきとして、
1、犬との暮らし方の法律が細かく定められている
2、エンリッチメントという考えを持ち、動物が動物らしく行動できる空間や過ごし方の提供が大切
という2点が日本との大きな違いだと感じました。
 
まず、犬との暮らし方の法律が決められているという点ですが、おもしろかったのが、保護法の中で自分の監視がちゃんとペットに対して行き届いているかどうかという点が重視されているということです。
ここで話している「自分の監視」という表現ですが、スウェーデンもリードを着用することを日本と同じぐらい厳しく指導さているのですが、犬をリードで連れていなくても犬をコントロールできているという点がクリアできていれば良いという考え方を持っています。
ということは、リードを着けていたとしてもちゃんと監視ができていない(コントロールできていない)場合は飼い主としての義務を果たせていないということになるんです。
 
この「犬を管理することの条件」が行き届いていることもあり、去勢している犬が22%しかいなくとも、問題なく機能しているというのにも驚かされました。
 
犬の飼養管理についても
・少なくとも1日2回は人間の目が届いていること。
・家の中で犬を飼う場合、少なくとも6時間ごとに外に出しあげること
・犬をケージに入れたままにしないこと
など、かなり詳細に定められています。
 
実際は犬を家で留守番させる家庭は75%いるそうなのですが、近所の人やペットシッターがいつでも駆けつけられる状況にしていることを前提としているというところも、意識の違いを感じました。
 
そして、このような保護方の根底には、「犬は社会性を持つ生き物であり他の個体との交わりを欲求としてもつもの」「犬は群れをなすもの」ということへの理解など、犬としての自然な行動を尊重し、体現させる考えがあるそうです。
 
これが、2つ目の気づきである「エンリッチメント」の中の「環境エンリッチメント」という考え方でして、その他、採食エンリッチメント、嗅覚エンリッチメント、社会性エンリッチメント、身体的エンリッチメント、精神エンリッチメントが存在し、それぞれに定められたルールが存在しているとのことでした。
 
このように「動物とどのように向き合うのか」ということを明文化し、国民の当たり前行動としていることが、動物と上手に共存できている秘訣なのかもしれません。
 
IMG_0061そして、藤田さんの講演後、「犬が社会に溶け込むためには」「高齢者とペット」「ワーキングドッグ」という3つのテーマについて西村亮平会長(東京大学教授)をモデレーターとして、会場で議論が繰り広げられました。
 
なぜ日本では犬が社会に溶け込めていないのか。どういうことをしていけばいいのか。 スウェーデンのブリーダーと日本のブリーダーは何が違うのか。 血統を守るために何が行われているのかなど、様々な視点から「日本のペット産業をどうしていくべきか」という点について白熱した議論が繰り広げられました。
 
日本がちゃんと飼育環境の規制を整備し、高い品質(管理された環境下での繁殖)でペットたちを提供できれば、結果として動物も飼い主も幸せな生活を過ごすことができるのかもしれません。
 
私の中では動物愛護という考え方は、まだまだとてもあいまいだと感じた1日でした。
人が介在してしまったことで、野生で生きていくことが困難になっている、いわゆる家畜化された動物たちに対して、人はどのように介在していくべきなのか。
 
同じ生き物という考え方ではなく、動物ごとの種特異性を尊重することで、お互いが理解し合い「共存」できる世界を実現するために動くことが本当に正解なのか。
 
これからも様々な意見を素直に受け止めながら、日本として、日本人として、人として。私たちは物事を点で見るのではなく、大きな面で考え、発言・行動していかないといけないのかもしれません。
 
そんな、これからの自分の動き方を考えさせられると同時に、この場に集まった多くの方々と前向きに議論できたという意味で、とても良い場だったと感じております。
 
次の開催もとても楽しみです。
 
Knots 正会員 小早川 斉