第78回 日本獣医史学会 研究発表会   報告

「第78回 日本獣医史学会 研究発表会」

日時:平成26年10月25日(土)13:30~17:10 

場所:東京大学農学部7号館1階104/105号室

 

 第78回 日本獣医史学会研究発表会に参加させていただきました。日本獣医史学会は公益社団法人Knotsのアドバイザリーボードメンバー・柴内 裕子氏の御兄弟である、小佐々 学氏が理事長を務めており、1972年に発足した歴史ある学会です。Knots理事長の冨永も評議員を務めさせていただいております。獣医学、畜産学や動物学ばかりでなく、人と動物との関係など、広い分野にわたる史実を明らかにすることによって、それらを現在の視点から考究し、その成果を社会に普及するとともに、さらに後世に伝えようとする者の集まりであるとされています。(日本獣医史学会ウェブページより:http://jsvh.umin.jp/index.html

 

<発表内容>

  • 「日本のブルセラ病清浄化の歴史」   

座長:政岡 俊夫氏  

演者:伊佐山 康郎氏(元家畜衛生試験場・麻布大学)

   

  • 「豚流行性下痢(PED)の歴史」    

座長:佐藤 国雄氏 

演者:津田 知幸氏(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所)   

 

  • 「ペット保険の歴史と現状」     

座長:小佐々 学氏 

演者:井上 舞氏(アニコム損害保険株式会社経営企画部)

  

  • 「農場HACCPの生立ちと課題」    

座長:唐仁原 景昭氏

演者:宮島 成郎氏(公益社団法人中央畜産会)    

 

 「日本のブルセラ病清浄化の歴史」では、元麻布大学所属の伊佐山 康郎氏が人獣共通感染症であるブルセラ病についてお話になりました。ブルセラ病はマルタ熱とも呼ばれ、ウシの流産の原因になり、ヒトに感染すると発熱や頭痛などの症状を起こすとされています。日本では1912年に発見され、1940年にはじめてヒトへの感染が報告されたブルセラ病が、30年後の1972年に清浄化されるまでの過程を丁寧にお話してくださいました。

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写真:伊佐山 康郎氏

 

 「豚流行性下痢(PED)の歴史」では、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所の津田 知幸氏がお話されました。豚流行性下痢(PED)は、PEDウイルスによって起こる豚の急性伝染病です。どの年齢の豚でも感染しますが、とくに赤ちゃん豚では致死率が高く、養豚業にとっては重要な伝染病とされているそうです。津田氏はPEDに加え、同属のウイルスによって引き起こされる伝染性胃腸炎(TGE)の歴史をお話され、これらを照らし合わせることで、今後のPEDの長期的な発生形態の変化を予測できるのではないかと推測されていました。2013~2014年にわたり甚大な被害をもたらしたPEDの対策としては、感染豚の隔離と消毒、清掃、乾燥の徹底などの環境対策を速やかに行うことだそうです。

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写真:(左)佐藤 国雄氏 (右)津田 知幸氏

 

 「ペット保険の歴史と現状」では、獣医師でもある、アニコム損害保険株式会社 経営企画部の井上 舞氏がお話されました。家庭どうぶつ医療は高度化・多様化しており、近年では高額医療を受けさせたいという飼い主も増えているため、ペット保険の歴史と現状についてお話してくださいました。世界では1924年にスウェーデンのAgria社ではじめて犬の保険が誕生し、日本では1986年に東京海上火災保険株式会社で発売された「わんわん健康保険」が最初だそうです。しかし、このときは飼い主と動物病院の間にペット保険が定着せず、わずか2週間で停止してしまったようです。現在のペット保険普及の転機となったのは2000年のアニコム創業で、人の健康保険制度を参考にしたことにより、現在全国で約5,600の動物病院が保険対応をしているそうです。どうぶつの保険加入頭数は2000年以降増加しているが、現状は飼育頭数全体の5%前後と言われており、健康な若い個体への普及が課題とされているようです。

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写真:井上 舞氏

 

 最後は「農場HACCPの生い立ちと現状」について、公益社団法人中央畜産会の宮島 成郎氏がお話されました。HACCPは、人の健康に悪影響を及ぼす可能性のある生物的、科学的または物理的要因(Hazard)を挙げて分析(Analysis)・評価し、重要な必須の管理点(Critical Control Point)を設定し、その点を重点的に管理することによって生産物の安全性を確保するシステムであるとされています。食品の安全性を向上させるシステムとして農場HACCAPが誕生し、日本では2012年から現在までに45の認証農場が指定されているそうです。今後は指導員の養成や審査員の確保を行い、農場HACCAPの普及を進め、生産段階での衛生管理の向上、安全性の確保の要請に応えていくことが重要であるとお話されました。

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写真:宮島 成郎氏

 参加者は獣医師である必要はなく、一般の方にもこうした実情を知ってもらいたいと願っておられるようです。私は獣医師ではないので少し難しく感じる場面もありましたが、普段このような内容のお話を聞く機会は少なく、とても勉強になりました。歴史を辿ることで様々なことが分かり、改めてその重要さを感じることができました。

 

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写真:会場の様子

 

報告:Knots教育部 教育・啓発係 田沼