第14回シンポジウム 「高齢者とペット」 報告

特定非営利活動法人 動物愛護社会化推進協議会
第14回シンポジウム 「高齢者とペット」 報告

日時:平成26年10月25日(土) 14:00~17:00
場所: 大阪ペピイ動物看護専門学校2F セミナーホール
主催:特定非営利活動法人 動物愛護社会化推進協議会(HAPP)

 

 ICAC KOBE 2014のシンポジウムⅣ「ずっと一緒に居られる社会へ」-飼い主を支えるシステムが実現する豊かな社会においても、皆さんの関心の高いテーマであったのが、高齢者とペットでした。

 平成26年10月25日に特定非営利活動法人動物愛護社会化推進協議会(HAPP)の主催で「高齢者とペット」と題したシンポジウムが大阪ペピイ動物看護専門学校セミナーホールで開催されましたので、報告いたします。

 

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 まず最初に、東京大学名誉教授でおられる正田陽一会長よりHAPPは2007年より毎年シンポジウムを開催している。この年は、IAHAIO(人と動物の関係に関する国際会議)東京大会が開催された年でもあり、動物愛護社会化元年ともいえる。毎回多くの方々にご参加いただき、特に本日は若い方がたくさん来ていただいているようで感謝します、とのご挨拶がありました。

 次に、本日のシンポジウムのコーディネータである、(独)国 立科学博物館館長の林良博氏より、1995年にヒトと動物の関係学会を立ち上げたときの最初のテーマが「犬の問題行動は飼い主が作る」であったが、当時はそのような概念はなく大変な驚きをもってマスコミにも紹介された。それから20年、世の中は大きく変わってきた。動物と人が暮らすメリットとデメリットがある。本日のテーマである高齢者とペットはまさにその最たるものである。有意義なシンポジウムにしたい、とのご挨拶がありました。

 

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 パネリストのトップバッターは、関西学院大学図書館長であり、関西学院大学社会学部教授、HAPP常務理事である、奥野卓司氏による「高齢化社会におけるペット」の社会学と題した講演でした。

 奥野氏からは社会学者のお立場から、急激な勢いで進む高齢化社会の中における現状分析のお話がありました。高齢者社会における様々な問題は複合的であり、少子化との連動、都市化、「おひとりさま」と言われる単身世帯の増加といった事象が複雑に絡み合っている状況にあるとのことでした。ペットが家族の一員としての存在となり、犬猫と人間が長期的な絆でつながっている状況にある中で、ペットに対する高齢化社会の価値観は高まっており、それが故に、家族としての形態が一人暮らしや高齢化というものに変化していくに伴い、飼い主とペットの老々介護、依存する対象となるが故のペットロス、ペットと共にひきこもる、飼育不能になるといったことが生じている。HAPPが行ったペット飼育の意識調査では、ペットとの暮らしは規則正しい生活や健康、友人知人の増加、近所づきあいが良くなるといった効果をもたらすが、自分の年齢や健康状態がペットを飼育する上で不安材料となっており、自分の年齢を考えると最後まで世話を続けられないという理由で飼いたいが飼えないと考えている割合が高く、それに呼応するかのようにペットフード協会の調査では、犬猫の飼育頭数は減少傾向にある。しかしながら、高齢者は不幸なのか?というとそうではない。経済面や健康面で心配のない状況であればという前提ではあるが高齢者ほど自由で楽しいものはないと思っている。高齢者がペットと暮らす効用は十分あり、飼い主の適切な飼育と終生飼養を基本とした高齢者とペットとの暮らしを支援することは社会的にも望まれている。ペットと同居できる介護施設、動物を伴った訪問活動、サービス付高齢者向け住宅での共同ペット飼育などが望まれる。といったお話がありました。

 

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 次のパネリストは、ICAC KOBE 2014のシンポジウムⅣにおいてもお話いただいた、神戸市保健所垂水衛生監視事務所の獣医師である湯木麻里氏による「高齢者とペット」と題した講演でした。神戸市に引き取られる犬猫の状況において、犬の引取り理由の第一位は所有者の病気死亡によるものである。第二位は転居で、施設への入所といった理由が見られる。所有者の病気死亡という理由で引き取られる犬の平均年齢は9.2歳であり、犬自身もシニアから老齢域に達しており、譲渡というセカンドチャンスを与えることが非常に困難である。引取りの現場で一番強く思うことが、引取りを求めてくる人も苦しんでいるということである。その人たちに向かってなぜ動物を捨てるのか?と責めても問題は解決しない。動物を置いて帰る飼い主の背中を見送るときにこの飼い主のこれからを支える人はいるのだろうか、ということをいつも考えさせられる。犬猫は人と共に生活する動物であるために、動物に起因する様々な問題は人間の福祉を切り離して考えることができない。改正動物愛護法により飼い主責任が強化されたが、それを支える社会システムが十分でなければ、責任を十分に果たすことができない人と動物たちが社会の中で置き去りにされてしまうことになりかねない。そのような現状において、神戸市でも犬の新規登録数は減少し続けている。ペットと暮らすことによるメリットについては十分に認識されており、飼い主が動物と共に生活し続けられる社会にするということを動物に関わる全ての者が意識することが必要である。そうすれば行政に来る動物たちも減少する。殺処分ゼロではなく、捨てられる命がゼロになることを目指すことが必要である。そして同時に動物たちを護るためには、動物福祉の考えを社会に根付かせることが必要である。といったお話がありました。

 

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 3人目のパネリストは、特定非営利活動法人ペッツ・フォー・ライフ・ジャパン(PFLJ)理事の川崎千里氏より、PFLJの高齢飼い主の支援事業である「ペット飼育支援センター」の活動内容についてのお話がありました。ペット飼育支援センターは、飼い主によるペットの終生飼育を支援するために、飼い主の入院、療養時にPFLJでペットを一時預かりする制度で、日本競輪協会の助成金を利用し、平成23年から25年で571件の相談を受け、今まで延43名の方が利用した。当初は70代の単身世帯の方の利用が多いのではないかと想定していたが、実際は幅広い年齢や様々な家族構成の方からの相談や利用があった。ペット飼育支援センターでは預かるという活動だけでなく、ペットの寿命まで自分自身の寿命がもつかといった意識づけや、万が一のときペットが困らないために準備しておくべきこと、ペットへの責任を引き継いでくれる人はいるかといったことも併せて話をし、飼い主の意識改革も進めてきた。今後はこれらのことを全ての飼い主や人の福祉の担当者にも知ってもらい準備していただくための広報活動の充実や、預かりを安価で行うことのできるしくみづくりといったことも目指していく。さらに、飼い主がギブアップしてしまうような状況になった場合に、動物福祉団体として動物を救済する事業もさらに進めていく。PFLJでは老犬フォスターファミリーという制度を2002年から始めた。PFLJが所有権を持ちながら動物たちを一般家庭で家族のペットとして飼育してもらう制度である。老犬猫たちは一般家庭で飼育されることにより安定した安全な環境が確保され、PFLJは飼育に係る相談と指導をしながら終末期ケアをサポートする。老犬猫たちの譲渡先を探すことは困難である。こういった制度を充実させ動物たちの福祉を確保していきたいと思っている、といったお話でした。

 

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 パネルディスカッションでは林先生より、会場にお越しの皆さんもそれぞれのお立場でがんばっていらっしゃるが、現状はその取り組みが一つの力になっていない、とのご指摘があり、人と動物が共に幸せに生活できる社会の実現のためにそれぞれが協力してがんばっていきましょうというとても前向きな雰囲気でシンポジウムは終了しました。高齢者とペットという課題は社会的に関心のあるテーマであり、NHKをはじめ新聞社の方々も取材に来られていました。来年のICAC KOBE 2015でも「高齢者を幸せにする飼育支援システム(仮題)」と題したシンポジウムを予定しています。ずっと一緒にいられる社会をつくるために、動物たちに携わる全ての方たちが力を合わせて社会を変えていけるようがんばっていきたいと思います。会議へのご支援も引き続きよろしくお願い申し上げます。