奈良県いのちの教育プログラム 手法説明会

HCJ 奈良県いのちの教育普及支援事業

奈良県いのちの教育プログラム 手法説明会

実施概要
日時: 平成25年7月9日(火) 13:00~16:00
     
場所: 奈良県うだ・アニマルパーク 動物学習館
 
共催 奈良県うだ・アニマルパーク振興室
手法説明会

 

 2年前に奈良県が企画開発をして、地域の小学生を対象に取り組み始めた「いのちの教育プログラム」ですが、昨年、平成24年10月〜11月にかけて4度にわたってその内容の報告会が行われ、12月にはモニター家族を対象とした授業の内容を全国の教育・行政関係者が見学する研修会が開催されました。そして、本年3月には、宇陀市文化会館・かぎろひホールにて公開授業が行われ、教育評論家の尾木直樹氏の講演会『共感する心を育む』も開催されました。

 これら一連の取り組みのディスカッションの中で、動物に関わる行政の関係者から「愛護教育に関するツールが欲しい!」という切実な要望が多数あることが分かりました。動物愛護(管理)センターでは、日常の業務に加えて地域の要望などの対応に追われている中、熱意のある職員によって独自の教材を用いて愛護教育を実施していますが、なかなか教育活動ツールの企画開発をするところまで手が回らないというのが現状です。しかし、「飼えなくなった」と言って飼い主からセンターに持ち込まれる動物を日々目にしている現場の職員にとって、「いのち」に対する教育活動が必要不可欠であることは、他の誰よりも切実に感じていることなのです。

 こうした愛護センターを取り巻く環境の中から、教育ツールの必要性を訴える声があがるは自然な流れであり、同じ公的な目的のために開発されたツールを他の自治体でも使用して実施できるようにすることは、奈良県にとっても望ましいことです。そして、昨年の10月から始まった「いのちの教育普及支援事業」のプロジェクトに参加を希望した8つの自治体に対して、「いのちの教育プログラム」の簡易版ツールの提供と実施方法を解説する手法説明会が開催されることとなりました。

「いのちの教育プログラム」簡易版のツール一式「いのちの教育プログラム」簡易版のツール一式 奈良県で実施されている「いのちの教育プログラム」のオリジナル版は、大型の張り子を使った授業ですが、この簡易版では半立体の張り子の動物やパネル類が全てマグネットで黒板(ホワイトボード)に付くようになっています。

 

公益社団法人日本動物福祉協会・山口千津子氏公益社団法人日本動物福祉協会・
山口千津子氏
奈良県動物愛護センター所長・本岡氏奈良県動物愛護センター所長・
本岡氏
 手法説明会当日、最初に奈良県動物愛護センター所長の本岡氏から挨拶があり、続いて奈良県と公益社団法人Knotsと共に「いのちの教育展開事業」に関する連携協定を結んでいる公益社団法人日本動物福祉協会の山口氏から、生体を使わず動物にストレスを与えない教育方法の意義をお話頂きました。

 

 引き続き、奈良県の地域振興室の中で「いのちの教育」に特化して実施している谷野先生と大森先生のご紹介があり、まずは谷野先生が先生役となって参加者を子ども役に見立てて、プログラムの導入部分である「プログラムⅠ・私たちと動物との関わり」の実演がありました。プログラムはⅠからⅢまでありますが、そのいずれも、相手の意見を尊重しつつ自ら考え、共感をするということに重点が置かれています。

谷野先生の授業に参加者も惹き込まれています谷野先生の授業に参加者も惹き込まれています実際にやってみます!実際にやってみます!

 奈良県では、愛護センターなどの動物に関わる職員だけでなく、学校教育のプロを指導員として専属のスタッフとして授業を行っています。こうした試みは他府県ではあまり事例がなく、獣医師免許を持つ行政職員の経験と学校教育の教員の連携によって、より子どもたちの心に響く指導方法を実施しています。

 

地域振興室・藤井氏から、これまで奈良県が取り組んで来た遍歴も踏まえて説明がありました地域振興室・藤井氏から、これまで奈良県が取り組んで来た遍歴も踏まえて説明がありました 次に、地域振興室の藤井氏からプログラムⅡとⅢの概略説明がありましたが、各プログラムの実施前には、必ず前回の内容の「ふりかえり」を行うことを心掛けているという説明がありました。この「ふりかえり」は、これらのプログラムの評価を行う研究協議会に参加している教育の専門家からもその重要性を指摘されていて、子どもの心の中に内容を定着させる重要な要素のひとつであるということです。大人が決めた正解を導くことが目的ではなく、子どもたちの「なぜ」という疑問を大切にする内容となっていて、動物だけでなく人間の福祉にも当てはまる発展性のあるプログラムであることが伝えられました。また、これらのプログラムを今後どのように定着させていけば良いのか、さらに継続的に学習することができる中高生用のプログラムの開発などの課題も示唆されました。

奈良県では、子どもたちが書いた動物との約束を記録に残して学校に贈呈する工夫も行っている奈良県では、子どもたちが書いた動物との約束を記録に残して学校に贈呈する工夫も行っている子どもとの接し方の質問に答える大森先生子どもとの接し方の質問に答える大森先生
 
 
 プログラムの説明が一通り終了し、参加者からの質疑応答の時間となりましたが、Knots理事長の冨永氏からもこれまでの経験や現場での体験から教育の重要性を訴える話があり、参加者が自由に語り合える雰囲気の中で疑問点や不安点を共有する場となりました。

 動物に関わる行政の参加職員からは、谷野先生、大森先生に対して、子どもに接するにあたっての注意点やそれぞれの学年ごとに対する理解度など具体的な質問があり、有意義な質疑応答の時間となりました。

 内容の濃いプログラムのレクチャーでしたので、あっという間に予定の3時間が経過しました。最後に、所長・本岡氏の子どもたちが目を輝かせてこのプログラムを受講している様子を見て、「いのち」に優しい子どもの育成に地域で連携をして取り組んで行くことの大切さを再認識したという挨拶で締めくくりとなりましたが、終了してからも個別にそれぞれの質問点を聞いたり意見交換をしたり、今後の連携を話し合ったりして、さながらこのプロジェクトチームの第一期生の集まりのような雰囲気となりました。

 ひとつの自治体で企画開発されたプログラムを、全国の自治体の有志が共有して実施に取り組むというのは、動物行政の分野ではあまり事例が無い画期的な取り組みです。これらの取り組みが参加自治体ごとに教育現場で実施され、さらに地域ごとに特色のある内容へと発展させ、再び内容をグレードアップさせることに繋がれば、この公的な事業の共有化の大きな意義となることでしょう。これから先の各自治体の取り組みと、このプログラムのさらなる発展に大いに期待が寄せられています。