ワークショップⅣ「シェルター動物のケア・より良い譲渡に向けて」

座長メッセージ

山崎 恵子 氏
(ペット研究会「互」主宰)

 近年我が国においても犬や猫の処分頭数がかなり減ってきている。このことは官民ともども自らの努力の賜物であると考えてもよいであろう。しかし他方においてはまだまだ処分される動物達の数は決して『少ない』訳ではない。
 これに対処していくためには、不妊処置をさらに推奨していくとともに所有権放棄された動物の新たなる飼い主探しを充実させていかなければならぬのである。その手段としてはこのような動物達の一時的収容を行う施設が必要であるが、その施設のあり方や新飼い主の探し方などにも同時に目を向けなければならぬのである。
収容するということが主たる目標であってはならぬ。
生きていればこそという考え方にも問題がある。
 収容施設は動物のQOLを守るものでなければならぬし、新しい飼い主と動物双方が終生幸せに暮らすことが出来るような配慮をもった引き取り手探しを実行することが必要である。
 それらをすべて考えられるところのみが真のシェルターといえるであろう。
社会全体がもう少しこのような点に目を向けるようになることが大切である。

「英国におけるシェルターワーク」
 ミランダ・ラック 氏
( 国際動物福祉コンサルタント、RSPCA(王立動物虐待防止協会 )インターナショナル
 保護管理部主任トレーナー)

 RSPCAは動物に対する虐待防止のため1824年英国で設立された。 設立当時、動物は食料や輸送、スポーツに使用するための産物ぐらいにしかみなされておらず、それらへの思いやりも限られたものだった。
協会の初期の主な目標は一般の人々の気持ちや意識を引き付け、動物虐待に対する無関心さを変えることであった。この目的は動物たちの苦境を強くアピールし、動物に対する虐待の告発を始めることにより達成された。
1950年代半ばまでにRSPCAは捨てられ増え続ける野良犬や野良猫が新しい住み家を得るまでの一時的避難所の必要性を確認した。
また長年の事業の中で、取り扱う動物も馬からハムスター、野生動物へと多岐に渡るようになる。 現在協会は英国およびウエールズ地方にある70施設を運営し、今年も12万匹に及ぶ数の動物を受け入れる見込みである。
RSPCAが保護し、新たな住処を探すことが出来る動物の数は避難所運営やスタッフ訓練などの様々な要素の結果を反映している。効果的な方針や標準業務は「5つの解消 (自由)」を目指し作り上げられてきた。
これらは飢えと乾きの解消、不快さの解消、痛みや怪我、病気の解消、普通に行動できる自由、恐れや苦悩の解消である。
「里親大使」として相応しい最良の縁組にするため動物たちには詳細な評価がつけられる。またこうした働きにより動物救助に対する人々の考えがより前向きなものになっていくのである。

「より良い譲渡のためのシェルター動物ケア」
 パメラ・バーンズ氏( ハワイアン ヒューメイン ソサエティー会長&CEO(経営最高責任者) )

「より良い譲渡のためのシェルター動物ケア」はまさに、ハワイアン ヒューメイン ソサエティーから新しい家族、そして新しい生活を見つけることができた、たくさんのホームレス動物たちの成功談の源です。人口100万人に30万匹以上のペットのいるオアフ島において、営利を求めず、動物福祉に対してホリスティック(包括的)な姿勢で臨んできた結果、毎年6,000匹もの譲渡を成立させる結果につながっています。

 譲渡成功の秘訣は、動物の福祉と幸福への徹底した取り組み、健康面、行動面での総合的なケア、里親、積極的なマーケティング、譲渡カウンセリング、ボランティアのネットワーキング、質の高い顧客サービス、譲渡後のケアなどであり、全ての要因が上手く連携してこそ最良の譲渡が生まれるものなのです。

 このワークショップの参加者には、最適な、そして「より良い譲渡のためのシェルター動物ケア」のための要因やサービスやプログラムの相乗効果について学んで頂けることを願っています。

「兵庫県の譲渡事業と飼い主の会の活動」
 三谷 雅夫 氏(兵庫県動物愛護センター 三木支所 課長)

「兵庫県の譲渡事業と飼い主の会の活動」
 三谷 雅夫 氏(兵庫県動物愛護センター 三木支所 課長)
兵庫県では、平成5年に人と動物が調和し、共生する社会づくりを目的として、「動物の愛護及び管理に関する条例」が施行されました。また、この条例の目的を達成するための基幹施設として、平成10年4月に兵庫県動物愛護センターがオープンしました。
 兵庫県動物愛護センターで実施している犬の譲渡事業について、譲渡犬の飼育者との連携という視点から紹介します。
 私たちは、社会全体の適正な犬の飼育管理に対する理解を深めることが、犬の処分頭数削減につながると考えています。
 そのため、動物愛護センターでは、新しい飼い主を募り、これらの飼い主と譲渡後も連携し、地域での犬の正しい飼い方を広めることを目的のひとつとして、犬の譲渡事業を行っています。
譲渡犬の飼育者が自ら、地域で犬の正しい飼い方について情報発信するという目的のためには、動物愛護センターからの一方的な働きかけだけでは限界があり、自主的に運営される「譲渡犬飼い主の会」の必要性を、動物愛護センター、譲渡犬の飼育者ともに強く感じていました。
  このような状況の中、平成16年9月に譲渡犬飼い主の会(愛称:『オンリーわん倶楽部』)が設立されました。同会には、多くの譲渡犬の飼育者が参加し、動物愛護センターと連携しながら親睦・交流や情報交換のための事業、犬の正しい飼い方等の知識の習得のための事業を実施しています。

「神戸市と(社)日本動物福祉協会CCクロの官民協働」
 湯木 麻里氏(神戸市動物管理センター 主査)

神戸市動物管理センターでは、(社)日本動物福祉協会CCクロとの協働により、犬の譲渡事業を実施しています。動物愛護団体と覚書を締結し対等な立場で事業を実施している協働運営方式については他都市にも例がなく「神戸方式」とも言われています。

考え方も立場も異なる行政と動物愛護団体とが共に考え共に担うためには様々な課題があります。しかしながらこの体制を維持し続けることができたのは、お互いに補完し合える最良のパートナーになりうることが、阪神淡路大震災の動物救護センターの運営実績を通じて理解し合えていたことが大きかったと思われます。まず、我々はこの協働体制をつくりあげていくために、日々のコミュニケーションはもちろんのこと定期的な話し合いの場により個々人と組織の両方において信頼と共通認識を積み上げていきました。さらに、互いの強みを活かした役割分担の明確化と覚書や委託契約等による体制強化により維持可能な体制を整えつつあります。しかしながら現状において課題も多く、費用負担、施設整備、長期の安定的な協働体制についてはまだまだ十分とはいえません。

今、日本は処分から譲渡への流れが急速に進みつつあります。神戸で生まれたこの協働の取り組みが一助となり、動物の譲渡が単に動物に生存の機会を与えるだけのものではなく、動物の幸せ、飼い主の幸せ、そして社会の幸せにつながるものとなるように神戸市とCCクロは動物管理センターというフィールドで共に活動しています。

 

「神戸市と(社)日本動物福祉協会CCクロの官民協働」
北村 美代子 氏((社)日本動物福祉協会CCクロ)

社団法人日本動物福祉協会CCクロは、神戸市動物管理センターにおける譲渡事業を支援するボランティアグループとして平成14年より活動しています。そもそもの始まりは(社)日本動物福祉協会の会員が中心となった活動でしたが、その後他団体や一般市民の協力も得られるようになり、現在では会員・非会員を問わず多数のボランティアの方々に活動していただいて、譲渡候補犬の犬舎清掃、散歩、グルーミング、子犬の社会化、一時預かりなどを通して「より良い譲渡」を目指しています。

  かつては動物愛護推進員だけで回っていた譲渡申請者宅の事前家庭訪問も、現在では神戸市職員と動物愛護推進員とで分担し、すべての家庭を訪問して飼育環境の確認をさせていただいています。処分から救命譲渡へという国の流れの中で、「どんな動物でも」「誰にでも」譲渡して、不適切飼育を助長するのではなく、「適性のある動物を」「適性のある飼い主に」譲渡して、社会に良い見本を増やし、社会全体の意識を向上させていくことで不幸な動物を減らしていきたいと思っています。

  そのためには、処分と譲渡の両方の現場で活動する私たちが官と民の役割分担の中で、お互いが出来ることを常に探りながら努力を惜しまない姿勢を持ち続けることが大切だと考えています。