りぶ・らぶ・あにまるず国際シンポジウム2004「子ども達と動物たちを救うために~犬と歩む更生の道」

●実施日: 2004年7月11日(日)13:00~16:00
●実施場所: 神戸ポートピアホテル 本館地下1F「布引・北野の間」
●主催: NPO法人 Knots
●特別協賛:
●協賛: アサヒビール株式会社/株式会社カワイ音響システム
●助成: (財)中内力コンベンション振興財団
●後援 兵庫県/神戸市/兵庫県教育委員会/神戸市教育委員会/
(社)日本獣医師会/(社)兵庫県獣医師会/(社)神戸市獣医師会/
(財)日本動物愛護協会/(社)日本動物保護管理協会/
(社)日本動物福祉協会/(社)日本愛玩動物協会/
(社)日本動物病院福祉協会/
駐大阪・神戸アメリカ合衆国総領事館関西アメリカン・センター
●座長 山崎恵子氏 (ペット研究会「互」主宰)
●スピーカー 「話題提供」
『少年院でのドッグ・トレーニング』
 シェルターの犬が譲渡される前のトレーニングを少年院の更生プログラムに取り入れたプロジェクト・プーチ。その驚くべき成果についてご報告頂きます。
ジョアン・ドルトン氏(米国)
         
「パネルディスカッション」
パネリスト
 ・ジョアン・ドルトン
 ・青山 幸克氏 (法務省 奈良保護観察所 所長)
 ・影山任佐氏(東京工業大学教授 精神神経科学)
 ・山口千津子氏(〔社〕日本動物福祉協会 獣医師調査員)

 

   今回は、米国の少年院内でシェルター(保護施設)の犬を新しい飼い主に渡す前のトレーニングや世話を少年達に任せるというプロジェクト・プーチという更生プログラムについて、そのプログラムの責任者であるジョアン・ドルトン氏を招聘し、話題提供をして頂きました。
 

 

このプログラムの特徴は、更生中の少年が一度は人に見捨てられた犬の世話をし、トレーニングすることを通して、責任を持つこと、忍耐、他の命への思いやりをもつこと、そして自分が必要とされていることなど沢山のことを学ぶという点です。トレーニングは、力を使うのではなく、ほめてしつける「陽性強化法」で行なわれます。このトレーニングを通して少年は、自分の行動をコントロールすることを学びます。また、少年と犬との間に生まれる心のつながりを通して、無条件の愛を体験することとなります。これが、将来人間関係を築く上でとても大切な体験となります。また、犬のトレーニングや世話をすることで、トリマー、しつけインストラクター、ペットシッター等の技能を学ぶことにもなります。プロジェクト・プーチを受けた少年達は、受けなかった人と比べリーダーシップ、目的意識を持つこと、問題解決能力が上回っているという結果が出ています。
 そして、最大の利点はプロジェクト・プーチを受けた少年達の再犯率が「ゼロ」という点です。この数字がこのプログラムの素晴らしさを証明しています。
 ドルトン氏のプレゼンテーションに来場者は皆熱心に耳を傾けておられました。最後にプロジェクトプーチを紹介するビデオが流されましたが、プーチを卒業した少年のエピソードに多くの来場者が涙される場面もありました。
 
 

 

次に休憩を挟んでパネラーのお一人である法務省奈良保護観察所の青山所長より、まず少年院の現状についてお話頂きました。平成11年に少年法が厳罰化されたにも拘らず、非行は減少せず、少年院では過剰収容の状態が続いていて、少年一人一人のケースに合わせて十分な矯正教育を行なうには、大変厳しい状況にあるとのことです。
 今回、プロジェクト・プーチが日本で紹介されたことで、収容少年に大きな感銘を与え、少年院教育に一石を投じる機会となれば、とのことでした。また、日本特有の更生保護システムとして、保護司と呼ばれる方々のご説明をされました。更生保護とは、国が民間の人々と連携し、犯罪や非行をした人が地域の中で早期に更生できる様助けると共に、地域の犯罪・非行の予防を図る活動です。保護観察官と連携して更生保護活動をされる民間のボランティアの方々を保護司といいます。日本には48,000人の保護司の方がおられます。これは日本特有の素晴らしいシステムです。

 

  次に東京工業大学 影山教授よりご専門の犯罪心理学に基づいた日本の殺人者率、傷害者率、暴行者率や米国の殺人者率等のデータをご紹介頂きました。日本では犯罪の件数は減少傾向にありますが、10代の女性の傷害者率は増加しているというショッキングなデータも報告されました。また、興味深いデータとして米国で報告されたものですが、不仲の両親が揃っている家庭より、情愛深い母子家庭で育った子どもの方がはるかに重大犯罪を起こす確立は低いという結果が出ているそうです。影山氏は青少年の犯罪を防止する為には、早期介入が有効な手段であると思われ、また、更生プログラムにおいてもそれぞれのケースに即したプログラムを行なうことが有効であろうとお話されました。

  

 

最後に、(社)日本動物福祉協会 獣医師調査員の山口氏は、人間も動物であり、人間の福祉と動物の福祉は一緒であると話されました。プロジェクト・プーチでは動物を救うことで子どもも救われます。そして、最後に動物が幸せになることが子ども達に大変良い影響を与えていると考えられます。日本では何かとブームに乗る傾向がありますが、動物を介在とした様々なセラピーが行われる時、動物達が幸せであること、そして動物達の福祉が最大限に確保できる状態でないと、プロジェクト・プーチのような素晴らしい成果は上がらないであろうと話されました。
 

 

 その後、座長の山﨑氏による進行の下、パネルディスカッションと質疑応答が行われました。 
最後に山﨑氏は、素晴らしい成果を上げているプロジェクト・プーチを日本で導入する場合、プロジェクトに関わる人材というソフトウェアの部分が大変重要であると話されました。プログラムに参加する少年達の心身のケアや犬達の幸せと福祉が最大限確保された状態での犬の世話、トレーニングなど、関わるスタッフやプログラムの理念が確固たるものでないとかえってネガティブな結果を招きかねないことを警告されました。
 今回は、昨年に引き続き定員を大幅に上回る来場者の方々で会場が埋めつくされました。特に遠方の他府県からや学生の方が多数参加されていらっしゃいました。また、時間を延長しての開催となりました。
青少年による悲しい事件が続いている昨今、今回のシンポジウムを通して関わる関係者の方々は勿論のこと、今後、これ以上加害者も被害者も増やさない為に大人達が子ども達や動物達の為に何が出来るのか、何をすべきなのか考え、実行して頂ける機会となることを願って止みません。

 

 


 

 シンポジウム終了後、ジョアン・ドルトン氏を始めとするスピーカーの先生方を囲んでの、ささやかなウェルカムパーティを開催致しました。このパーティは一般の方が自由に参加できる形(会費制)で、直接スピーカーの先生方とお話して頂いたり、シンポジウムに集まって下さった方同士が交流できる機会となるようにとの想いから実施させて頂きました。全部で66名のご出席となりました。
 まずは、Knots理事長の冨永よりご挨拶をさせて頂き、その後、本事業にご支援を頂いているネスレピュリナペットケア株式会社 マーケティング部マーケティングマネージャー ティム・ウィルソン様よりご挨拶を頂きましたが、その際に2005年度の事業に対するご支援もお約束下さいました。本当に有り難うございました。そして、ウィルソン様の乾杯のご発声を頂いた後に歓談に入りました。
 会場では、スピーカーの先生方と熱心に話しこまれる方々や名刺交換をされて歓談されている方々が随所で見られ、終始和やかに進行致しました。

 

また、本事業にご支援を頂いている株式会社カワイ音響システム様が会場内にペット用防音室「ワンだぁルーム」の試作品を展示されました。ドルトン氏を始め多くの参加者の方がご覧になって様々なご意見やアドバイスをされているご様子でした。
 今回のシンポジウムは、青少年の更生や犯罪防止について、そして不幸な動物の救済の可能性など、大変重要且つ深刻なテーマでの開催となりました。多くの方がこのテーマにご興味を持たれ、ご一緒に考えて下さったこと、そして、 多くの方々の間で新たな結び目が沢山生まれた一日となりましたことを、大変心強く思いました。
 

2日間のレクチャーを通し、「プロジェクトプーチ」は十分な企画に基づいて実行されている更生プログラムであるということを改めて認識させていただきました。非行青年を救う夢物語ではなく、動物虐待の経験をもつ青年は参加できない等のルールを設け、高い基準を維持し運営継続されるプログラムであることを知りました。
  非行少年と犬が支えあい共に成長するという、誰もが飛びつきたくなるような側面以外に、多くの責任が伴うプログラムであることを警告していただいたと思っております。

 しかし、同時にこのレクチャーを通じて同じアイディアを持つ人に出会うことができました。このようなプログラムは簡単に実現することではありませんが同じベクトルに向かう人が集まり、確実なステップを踏むことで実現することができるように感じております。


第2回 兵庫県動物愛護センタースペシャルレクチャー

「青少年更生プログラム プロジェクトプーチ 
-その驚くべき成果について-」
~プロジェクトプーチ代表ジョアン・ドルトン氏と共に~


ジョアン・ドルトン氏 奈良少年院訪問レポート


りぶ・らぶ・あにまるずシンポジウム2003
 「高齢者と伴侶動物の楽しい暮らし」