はじめに
近年様々な場面で、人と動物との関わりが注目されています。理由は多岐に渡りますが、今、都市化の進む中、社会環境や家族の構成が都市を中心に著しく変化し、育ちゆく子どもたち、独居の人々、孤独な高齢者等が、自然を感じ、息づく命にふれることの出来ない少子高齢化、核家族化と集合住宅化の中にいる現状です。加えて、家庭や地域社会の崩壊、幼少児から高齢者にまで鬱病は増加し、情動の安定を欠き、判断力を失った人々が増えていることです。そのことは多くの障害を生み、更には低年齢化する非行や犯罪、その発生の温床が拡大していることです。それは、親になる自覚を失い、妊娠中、幼少時の子どもに哺乳類として受け継ぐ様々な絆、母乳、スキンシップ、家族の団欒などを見失った結果であり、学齢まで脳のハードが完成する社会化の感受性期に、体感・体得すべき家族としての教育が出来ていないことにあります。
永い歴史を共に歩んだ動物
人類は太古の昔から、豊かなそして時には危険な大自然の中で様々な動物たちとふれあい学び人間としての感性を身につけて来ました。近年、都市化が進み自然は遠のき核家族化の進む先進国では多くの問題を抱えるようになりました。
これらの問題の解決の一助に、伴侶動物が重要な役割を持つことが実証されて、人の健康や福祉、教育にも活用され始めました。
育ちゆく子どもたちは健康な動物たちとふれあい、暮らすことによって優しい言葉、思いやりの動作、忍耐や自尊心を育み、命に気付きます。
また、障害を持つ方や高齢の方々は動物とふれあうことで、心が和み、能動的になり、脈拍や血圧の安定、心臓発作後1年目の延命率の増加、生活のリズムを整える等々が医学的にも立証されてきました。動物たちは緊張を除き、人に内在する豊かな感性を上手に引き出す名手でもあるのです。
1978年に設立した、日本動物病院協会(現)公益社団法人日本動物病院福祉協会は1986年に医学と獣医学を通じて社会に貢献する活動として、Companion animal Partnership Program (CAPP活動)をスタートしました。CAPP活動は世界共通の理念と基準を取り入れ、動物介在活動(AAA)、動物介在療法(AAT)動物介在教育(AAE)を推進してきました。CAPP活動は、依頼された施設と打合せを行い責任者間で覚書を交わし、本会事務局より各地の会員獣医師または資格を得たボランティアがリーダーと連絡を取り、チームを編成して実施しています。
施設会員数(2009年10月現在)・・・169施設
内訳
高齢者施設 121施設
障害者(児)施設 22施設
こども(学校) 1施設
病院 25施設
訪問回数(2009年3月末まで)
のべ訪問回数 10、279回
のべ獣医師参加人数 18,412人
のべボランティア参加人数 84,641人
のべ犬参加数 61,325頭
のべ猫参加数 15,464頭
その他動物参加数 5,829頭
今回はチャイルドケアに焦点を合わせていますので、小児病棟での効果、AAEとしての小学校訪問内容について、画面をもとにお伝えします。 |