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災害時の危機管理
災害時における人と動物の共通感染症等の問題
 佐藤 克氏((社)東京都獣医師会 危機管理室 感染対策セクション長)

平成12年9月22日、板橋区獣医師会と板橋区は災害時の動物救護についての協定を締結した。この中には、災害時の動物同行避難が明記されている。全国初の災害時の動物の同行避難を決めた自治体として大変注目を集めた。動物が同行することで動物側の一定の安全が保障されたが、避難所における公衆衛生の保持には新たな課題が加わった。
災害時における避難所は、どうしても衛生状態が悪化しがちである。人と動物の共通感染症は200種類ほどあると言われ、感染症法でも約50疾病が指定されている。これらの病原体を飼育動物のすべてが保有し、常に人への脅威となっているわけではない。しかし、衛生状態が悪くなったり、ストレスなどで人の免疫機能が悪くなったりすれば、感染の機会が生まれる懸念がある。特殊な感染症だけではなく、飼育動物に寄生するノミやダニが、避難する住民の間に広がれば直ちに大きな問題となるだろうし、単に吠え声や、被毛の飛散、排せつ物のにおいなども問題視される懸念がある。さらに、災害時には動物も神経質になっているため、咬傷事故なども起こりやすいと思われる。
人と動物の感染症の病原体を動物が保有していても、必ずしも症状が出ているとは限らず、確実にすべてを発見して解決することは不可能と言わざるを得ない。しかし、ノミやダニをコントロールしておくことや、被毛の手入れを怠らない、無駄吠えをしないようにしつけをしておく、ワクチンなどで予防できる疾病については事前に接種しておくなどの策は平常時から可能であり、リスクマネージメントの見地から大変重要である。
災害時の人と動物の感染症対策成功のカギは飼い主一人一人の自覚と住民の理解、さらに事前の備えと言えるだろう。

 
 
 
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