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1 はじめに
近年の動物愛護思想の高まりの中で、我々は従来の狂犬病予防、動物保護管理業務の中においても動物福祉の視点を持つ必要が生じているとともに、動物愛護業務についても、幼少期における愛護教育、動物介在活動・療法や動物の譲渡事業等で動物福祉を基礎とした幅広い知識を持つことが要求されている。
さらには、動物虐待と人的暴力(児童虐待、DV、凶悪犯罪等)との関係も注目されはじめており、動物虐待に適切に対応できる能力も要求されはじめている。
しかしながら、我々は動物福祉を始めとするこれらの業務に必要とされる知識を大学時代に学ぶことなく現在の仕事に就いている。また、職に就いた後も系統だった研修等を受けることなく、言わば経験のみで現在仕事をしているに過ぎない。従って、現在我々に要求されているだけの対応が適切に取れているとは必ずしも言えない。
そこで2002年(平成14年)9月にイギリスのRSPCA(王立動物虐待防止協会)のインスペクター(動物査察官)の研修トレーニングの一部を受け、また実際のフィールドを経験することにより、現在我々に必要なスキルは何かということについて考察してみたので以下のとおり報告する。
2 RSPCA
(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)
1.概要
RSPCAは世界で最も歴史が古く、1824年に慈善団体として設立された。動物愛護思想の推進と動物虐待の防止をその使命として掲げている。運営資金は全て寄付による。年間予算は2001年度で約140億円。犬猫、小動物などのペットから野生動物、畜産動物まで全ての動物を対象としており、その活動範囲は、動物福祉に関する法の執行、遺棄された動物のリホーミング(里親探し)、野生動物救助、各種のキャンペーン活動、政治活動と幅広い。
2.組織
(1) Headquarters(本部)
本部はウエストサセックス州(イギリス南部)のホーシャムにある。ホーシムの中心地にあった建物は協会の規模拡大とともに手狭となり、部門毎に分散していたため、ホーャム郊外に新たに本部を建て、2001年9月に移転した。本部には、現在約380名のスタッフが勤務する。本部は約20の部に分かれており、教育部門には教師、法律部門には弁護師、広報には専属のカメマンといったように、その部に必要とされる専門のスタッフがいる。
(2) Branch(支部)及び動物取扱施設
イングランドとウエールズにボランティアによって運営されている187のブランチ(支部)を持つ。
また、低所得者及びアニマルホーム(後述)の動物のための動物病院として、24時間の救急体制が整っている動物病院が4ヶ所、限られた時間開いており外来のみを受け付けているクリニックが46ヶ所。さらに、野生動物専門の動物病院が4ヶ所ある。
また、インスペクターが査察をした結果一時的にRSPCAが保護し、裁判で証拠として用いる動物や、飼い主が飼育を放棄したり、遺棄された動物を収容しているアニマルホーム(いわゆるシェルター)が52ヶ所あり、動物の譲渡を行っている。
3.活動内容
(1)動物保護法の執行
RSPCAが国民から受ける相談は、ペットケアに関する質問から負傷した野生動物の通報、さらには虐待に対する苦情まで及び、その数は1年間で150万回(20秒に1回の割合)に及ぶ。これらのうち13万件以上の苦情が全国で330人いるRSPCAインスペクターによって調査される。
調査の結果、虐待やネグレクト(飼育放棄)のひどいケースについては、多くが動物保護法―1911年の基に起訴され、虐待の程度により罰金や動物の飼育禁止、最も重いもので6ヶ月の懲役が科せられる。
(2)動物のケア
本部もしくは支部により管理され、有給のスタッフとボランティアによって運営されている。RSPCAはこれらのアニマルセンターに独自の基準を設け、許可制としている。また、年1回、本部による査察が行われている。
アニマルホームとはRSPCAのシェルターの呼称である。最も主要な業務は放棄動物の譲渡であり、2001年度で約9万頭の動物の譲渡を行っている。ほとんど全ての動物の受け入れが可能であり、犬猫は言うまでもなく、ウサギ、ハムスターなどの小動物や、小鳥、家畜、野生動物や大型の爬虫類も受け入れる。
動物病院は24時間の受け入れが可能であり、交通事故などの救急治療を行うことができる。一方、診療所は限られた時間のみ開いている。これらの病院では、低所得者が市価よりも安価(もしくは無料)で動物の治療を受けることができる。さらに、インスペクターが虐待のケースとして一時的に保護した動物や遺棄動物の治療も行う。これらの動物は、治療後、アニマルセンターへ送られ、虐待のケース動物は、虐待の裁判の証拠品として、裁判が終わるまで保管され、遺棄動物については、譲渡の機会を待つことになる。
野生動物病院では、病気や負傷した野生動物の治療を専門に行っている。これらの施設とは別に、リハビリテーション施設と研究センターもある。
(3)畜産動物の福祉
畜産動物への福祉に関する国民の意識の高まりを反映して、牛、豚、産卵鶏、ブロイラーやその他食用として飼育される動物に対するより高い飼育基準をUK及びEU政府に求める主導的役割をRSPCAは担っている。
近年、RSPCAは畜産動物の福祉の切り札として、フリーダムフード事業を強力に推し進めている。フリーダムフードは畜産動物が飼育、輸送、と殺といった製品になるまでの全ての過程において、RSPCAが定める福祉の基準を満たす畜産製品(肉、卵、チーズ等)に特別のラベル表示をするもので、これらの基準は、十分な飼料と適切な獣医療といった身体的なものだけでなく、ストレスのない環境と家畜の正常な行動がとれるといった精神的なものも保障されている。
(4)キャンペーン活動
RSPCAが近年行っているキャンペーンが、ヨーロッパ全域における動物実験を行った化粧品の販売禁止要請とUKにおけるキツネ狩りの廃止への継続した取り組みである。2000年11月には、RSPCA及びその他の組織の強力なキャンペーンにより、UKでは毛皮を採ることを目的とした動物飼育を禁止する法律が成立した。
(5)国際的な活動
RSPCA国際部は世界の120以上の組織と連携している、現在は、主に南ヨーロッパと東ヨーロッパ及び東アジア(主に中国と台湾)の3つの地域を中心に活動しており、非政府組織と政府組織のどちらとも連携し、トレーニングの提供や技術的助言、動物福祉思想の向上のための啓発活動や実際の動物の状況を改善するための資金援助などを行っている。
3 RSPCAインスペクター
1.RSPCAインスペクターとは
RSPCAインスペクターは、現在イングランドとウエールズに330人いる。(スコットランドはスコットランドSPCAが独自にインスペクターを養成している。)24時間体制で、動物の救助、動物虐待の通報に基づく調査と動物福祉に関連する法律を犯したものの告発、動物取扱施設(ペットショップやと殺場等)の査察、アドバイスの提供及び初期治療の提供などの業務にあたっており、状況によっては動物の安楽死措置を行うこともある。対象動物はペットに限らす畜産動物、野生動物と多岐に渡るが、任務地によって取り扱う動物や業務に特徴がある(ロンドンでは犬猫などのペットなどの飼育に関する通報が多く、地方では畜産動物の飼育に関することや野生動物のレスキューなどを取り扱う頻度が高くなる)。
インスペクターになるには特別な資格は要しない。健康で、一般的な教育を受けた22歳〜40歳で、車の免許を有し、50mを泳ぐことができるといった程度である。しかしながら、競争率は非常に高く、99年では、24名のインスペクターの募集に対し、9千人の応募があった。
給料は初任給で約250万円、40代平均で300万〜320万円。制服と車は支給される。
2.アニマルコレクションオフィサーとは
アニマルコレクションオフィサーは、インスペクターの業務を補佐し、主に負傷動物の保護や動物レスキュー及び保護した動物の搬送にあたる。
3.RSPCAインスペクタートレーニングコース
RSPCAインスペクターになるためには、6ヶ月にわたるトレーニングを受ける必要がある。研修内容は、RSPCAの組織と各々の役割に始まり、動物福祉に関する法律、犯罪捜査に関する法律、基本的な獣医学、ボートやロープを使ったレスキューの技術、査察テクニック、インタビューテクニック、裁判に関する実務、動物のハンドリング技術、メディアトレーニング等多岐にわたる。これらのトレーニングによりインスペクターとして必要な知識と技術を習得する。
2002年度のコースは2002年8月19日〜2003年3月まで開講(11月中旬から1月上旬まではクリスマス&ニューイヤー休暇)されており、24名(女性18名・男性6名)のスチューデント・インスペクターがトレーニングを受けていた。研修中も給料と住宅手当は支払われる。
4 今回受講した研修について
1.研修について
研修期間 2002年9月2日(月)〜25日(水)計15日間
研 修 内 容
2.研修プログラムの内容
(1)虐待を告発する上で必要な人間側の法律(PACE・人権法等)
日本と違い、インスペクターが虐待の事実を確認した場合は、警察に告発するのではなく、直接司法に起訴することになる。よって、起訴を行うための証拠を収集するために守るべき法律がPACEであり、被疑者の人権に配慮するための法律が人権法である。インスペクターは動物虐待を行ったものを起訴するという立場にあり、そういう意味からも警察と同様の捜査を行うことになる。よって、これらの犯罪捜査に関する法律についても精通しておく必要がある。
(2)動物福祉に関する法律(動物保護法・遺棄法)
英国には動物に関する法律は動物の種類(野生動物、実験動物、コンパニオンアニマル、畜産動物等)と扱う目的(ペットとしての販売、動物実験、家畜としての飼育やと殺、メディアでの使用、展示等)により細分化されている。
インスペクターはこれらの法律全てについて把握しておく必要がある。従って、インスペクタートレーニングでは、これらの法律の全てについての講義が設けられている。
今回私は「動物保護法1911年」と「動物遺棄法」についての講義を受けた。
「動物保護法1911年」は全15条の短い法律であるが、イングランドとウエールズにおける、全ての家畜と飼育下にある野生動物への虐待に対する法律を統合する基本的な法律であり、他の動物関連法に大きく影響を与えている。RSPCAが最も告発のよりどころとしており重要度は非常に高い。
この法律では、(@)動物を殴打する、殴る、蹴る、冷遇する、乗りつぶす、酷使する、過重労働をさせる、責め苦を与える、激怒させる、恐怖を与える行為、(A)不当な行為を行うことで、あるいは行うべき行為を怠ることで動物に不必要な苦痛を引き起こす行為、(B)不必要な苦痛を与えるような方法で動物を輸送する行為、(C)動物を闘争させること。けしかけて動物を襲わせること。これらを手助けすること。これらの目的のために建物、敷地を使用、維持管理すること、(X)故意に毒薬・有害物質を与えること、(E)十分な注意、及び慈悲なしに手術を行う行為、(F)不必要な苦痛を生じさせるような状況、または方法で馬・ロバ・ラバをつなぐ行為が虐待として定義されている。また、これらの行為を人に勧め、行わせたときも罰則の対象となり、(C)については、動物を闘争させる会への参加及び宣伝行為も罰則の対象となる。
これらの「不必要な苦痛」「虐待」の具体的な行為については、判例の積み重ねにより蓄積されてきている。RSPCAはその組織力と査察の技術により、これまで様々なケースを動物虐待として司法により認めさせてきている。
さらに、この法律では、安楽死や飼育禁止の裁判所命令や、警察の諸権利(立入権限や令状なしで逮捕できる権利、負傷動物を移動する権利、所有者が逮捕された後の動物の預託権)、オリなどに囲まれた動物に対する動物の給餌給水に関する措置などが規定されている。
「動物遺棄法」は、その動物が不必要な苦しみを受ける恐れがあったことを示すだけで罪となる。
RSPCAインスペクターが査察を行う場合、法律に基づく権限の主体を把握することが非常に重要となる。つまり、RSPCAは民間団体であるため、法律に基づく権限を持たない。従って査察を行う場合は、インスペクターとしてできる事とできない事を把握し、できない場合は誰に通報し協力を求めるのか(その多くが警察になるのであるが)を知っておく必要がある。従って、トレーニングコースではこの点に重点を置いて講義が行われる。
(3)と殺及び安楽死
畜産国であるイギリスにおいては、動物福祉に配慮した畜産動物のと殺方法は絶対に無視できない事項である。今回の講義では、人道と殺協会の方が講師となり、牛、羊、ヤギ、豚の人道的なと殺方法について講義を行った。
これら家畜のと殺について共通して言えることは、すばやく命を絶つことであり、命を絶つ直前までその動物の正常な行動が妨げられることがないよう配慮している(例えば羊については1頭で係留することはせず常に群で行動させる等)。と殺は銃、電気、二酸化炭素(豚)等が用いられている。
さらに、命を絶った後は、必ず死んでいることを確認する作業(豚の場合はフォークのようなとがったもので鼻先を刺し反応を見る)があり、その後すばやく放血を行うというのがポイントのようであった。
また、安楽死については、RSPCAはガイドラインを作成し、動物種ごとの安楽死の方法が決められており、それを実行することをRSPCAの全ての職員に対して義務付けている。RSPCAが認めている安楽死方法は、鳥、小動物、中型動物についてはペントバルビタールの静脈注射(中型動物については銃を使用することがある)、大動物については銃である。
インスペクターがフィールドで安楽死を行う場合において、静脈に入れる事が困難な場合は、腹腔に入れることもよくあるようである。また、RSPCAでは保護した猫についてFIVが陽性であったものは全て安楽死の措置を取っているとのことであった。
インスペクタートレーニングコースでは、まずどういう時に安楽死を行うのかという理由と方法を生徒たちに理解させた後、動物病院やと殺場において安楽死及びと殺を行う実施研修があり、全ての生徒たちが自ら手を下し動物の命を絶つことを経験する。
(4)ISO(Inspector Standard Order)
ISO(Inspector Standard Order)は、インスペクターの業務マニュアルであり、インスペクターが職務を遂行する上で必要となる事項や様式について14章にわたり細かく規定されている。
第1章
動物取扱施設
(法的根拠、権限の主体、譲渡の手順等)
第2章
コミュニケーション
(査察に係るコミュニケーションツールの使用方法について)
第3章
装備
(インスペクターに必要な装備の使用方法について)
第4章
銃
(銃の適正な使用方法について)
第5章
ファイナンス
(給料、手当、休暇等について)
第6章
健康と安全
(労働安全について)
第7章
査察、ケースファイル、有罪
(虐待を告発する際の手続きについて)
第8章
作業方法
(動物を救助する際の動物のケア、ハンドリング、輸送方法について)
第9章
公的な関係
(行政、警察、メディアその他関係団体との協力体制について)
第10章
ルール、規律、苦情
(インスペクターとして守るべきルールについて)
第11章
研修
(インスペクターの研修について)
第12章
輸送
(車の貸与とその使用について)
第13章
ユニフォーム
(ユニフォームの貸与とその着用について)
第14章
動物薬の使用
(使用及び管理方法について)
(5)査察のためのインタビューテクニック
インスペクターが動物虐待を起訴する場合、虐待を行った人物から事情を聴取する必要がある。これらを効果的に行うために、このインタビューテクニックはインスペクターのスキルとして絶対に外せないものであり、トレーニングコースにおいても十分な時間を割いている。研修は講義というよりも、ロールプレイを含むワークショップという形で行われる。
(6)アニマルホスピタルについて
9月16日の日記
を参照
(7)アニマルホームについて
9月12日の日記
を参照
(8)インスペクター同行実地研修
9月19日の日記
を参照
(9)その他
9月17日及び18日の日記
を参照
5 考察
1.インスペクター制度を日本に導入するにあたっての考察
(1)誰がインスペクターの役割を担うのか
今回、RSPCAで研修を受ける中で気付いたことが、我々行政とRSPCAの立場の違いである。言うまでもなく、RSPCAは民間団体である。民間団体として独自の使命を持ち、その使命を実現するために全力を傾けることができる。
一方、我々は行政である。動物の福祉を守るという前に、住民の公共の福祉を守るという行政として大前提の使命を持っている。つまり、RSPCAなどの民間団体は徹底的に動物側に立つことができるが、我々行政はそうはいかない場合も多い。
従って、RSPCAのような徹底的に動物側に立って物事を考えられる民間団体がインスペクターの役割を担った方がより積極的な活動が期待できるであろう。しかし、現在の日本において、愛護団体が独自にインスペクター制度を導入し担っていくだけの力は残念ながらない。また、様々な調査を行う上で必要となる法律に基づく権限(立ち入り権や警告や措置命令を行う権限)は与えられていない事も、インスペクター制度が社会に認知されていない日本においては、愛護団体が独自に活動を行うには大きな障害となるであろう。
そういう事から考えると、法律で権限が与えられており、これまでも動物福祉に関わってきている行政が主体となってインスペクターの役割を担っていく方が、現在の日本においては社会の理解も得やすいのではないかと思われる。
(2)動物福祉に対する社会認識と我々の果たすべき役割
日本において、RSPCAのようなインスペクター制度を導入するために最も必要なものの一つが動物福祉に対する社会認識である。
RSPCAは動物福祉思想の推進と動物虐待の防止を使命として掲げる民間団体である。その使命に賛同し協力したいと望む人たちの寄付が年間140億も集まるほど、イギリス社会における支持を獲得している。つまり、イギリス社会においては動物福祉に対する国民の認識は非常に高く、これは動物に関する法令の数から見ても明らかである。そして、こういう社会を作ることができたのは、RSPCAや他の動物愛護団体が自分たちの活動を有利に進めるために社会の認識を変えるという活動を積極的に行ってきたからであると言えるのではないだろうか。
一方、日本においては、動物福祉に対する感覚は年々高まりつつあり、我々の業務においても動物福祉の視点が求められてきていることに間違いはない。
ただ、現在の日本の状況は、感覚つまりイメージだけが高まり、その規範は何かといったような本質の理解は進んでいないため、社会として動物福祉というものを本当に理解できていないというのが現状ではないだろうか(我々行政の担当者も同じではないかと思う。)。現に我々の拠り所となる動物愛護関係法令においても、動物福祉の理念については高尚に記載されているものの、具体的な動物の幸福や苦痛に関しては極めて抽象的な記述しかなく、積極的かつ具体的に述べられているとは言えない。
よって、日本において動物福祉に対する知識や技術を持ち、インスペクターの業務を誰が(行政もしくは動物愛護団体等)担ったとしても、現状では日本の社会自身がそれを受け入れるだけの力を持っていないため、そのスキルが遺憾なく発揮できる場は与えられていない。言い換えれば、現在の日本にRSPCAのようなインスペクター制度をそのまま導入したとしても、現状においては法令や社会との認識とのズレにより、宝の持ち腐れとなってしまうどころか、インスペクター自身の仕事に対する批判を生じる結果になりかねない。
よって、我々動物福祉に携わる者は、動物福祉に関する社会の理解、つまりは科学的根拠に基づいた正しい動物福祉の規範を具体的に社会に対して示していき、理解させるという事をやっていかなければならない。動物福祉に対する社会全体のボトムアップを行うことで、より積極的な法令を作ることが可能になるであろうし、我々自身も自信を持って仕事を行うことができるようになるであろう。
その規範を社会に対し示していくためには、行政の担当者全てが同じレベルの規範を持ち、社会に対して提示していく必要がある。そのために、我々には動物福祉に対する知識と技術を学び、その規範を持つことが必要となるわけである。
そしてそのスキルを持った上で、その次に我々に求められていることは、この規範と法令及び社会認識とのバランスの取り方について、冷静に状況を分析し、今現在我々ができることは何かということを判断できる能力である。
RSPCAインスペクターの仕事は、成熟した法令と確立された規範に基づき業務を執行することであるが、彼らもまたレベルの差こそあれ、同じことを要求されているのかもしれない。ただし、彼らはその組織力を用いて、常に新しい判断を司法という社会で最も正当な手段を用いて社会の中に認識させるという事を行っている点が現在の日本と大きく違うところであろう。
しかし、何も持ちえてない現在の日本において我々は、スキルを習得し、業務を行いながら、同時に社会認識を高め、法令を改正させていくということを行わなければならない。よって、我々がやらなければならない事は、RSPCAインスペクター以上に多いと言えるのではないだろうか。
そして、動物福祉にはこれで十分だという終わりがあるわけではない。そういう意味において、我々は動物福祉に携わる者として、動物の苦痛を見極め、そして社会の中でそれをどう解決していくことができるのかを考える能力は時代が進んでも常に要求されていくのであろう。
また、規範を持つということは、自ずと動物福祉に関して社会のオピニオンリーダーになるということである。従って、我々はインスペクターとしてのスキルを持った上で、自らが社会認識を高めていくというRSPCAが組織全体で取り組んでいる事を、一人一人が意識してやっていくことが、ひいては日本の動物福祉を進めることになるのだと思われる。
(3)動物を助けるためのシステム作り
次に必要なことが、動物を助けるためのシステム作りである。RSPCAにおいては、虐待等により飼い主から保護した動物を治療するための病院や、施設を
持っている。これらの動物は裁判での証拠となるため、裁判期間中は施設で飼育され、裁判終了後に飼い主が手放した場合は、譲渡の対象となる。
さらに、裁判で争うために虐待を受けた動物がどんな虐待を受けていたか(具体的には、ネグレクトの場合であれば、その動物の一般的な体重とその個体とを比較し、どれくらい餌を与えられていなかったかを獣医師に証明させる)を獣医師に診断させ、裁判資料として用意することすらやっている。
つまり、飼い主を動物虐待として罰するのと同時に、虐待を受けた動物を助けるシステムが確立されているのである。虐待を通報する側にとって、これはとても重要なポイントになるであろう。通報する側は動物を助けたいと思って通報するわけであるから、その動物を飼い主から引き離すことができたとしても、その後譲渡先が見つからず、結局安楽死となるのであれば、通報者も通報を躊躇するのは当然であろう。また、虐待を受けた動物をどこで治療し、その治療費を誰が負担するのかといった問題も当然出てくるであろう(RSPCAは飼い主にこの負担を課しているが、支払うことができなければRSPCAの負担となる。)。
日本においても、我々は今後ますます動物虐待に対する積極的な対応を取ることが求められていくであろうし、スキルを身につけていけば自ずと積極的な対応を取らざるを得なくなるであろう。その時に適切な対応ができるように、動物を助けるシステムを作っておく必要がある。
2.日本における動物管理愛護担当者に対する動物福祉研修への応用に関する考察
(1)基本的な考え方
今回RSPCAのインスペクタートレーニングコースを受講して最も強く感じた事が、彼らのプロとしての意識の高さとそれを作り上げることができるRSPCAの組織力である。確かに彼らは自ら望んでこの職業についていることから、意識は最初から高いと言えよう。しかしながら、この意識は系統だった的確な研修を受けることによりさらに高められ、その意識に自信と技術が加わることにより高い専門性をもったプロが養成されていくのである。
一方我々は必ずしも自ら望んで、もしくはこの仕事をすると最初から認識している者は少ない。よって、我々動物愛護管理担当者は、先ず自分自身の仕事に対する意識(自覚)を持つ必要があるのではないかと思う。つまり何のためにこの仕事をするのかというモチベーションが先ず必要なのではないだろうか。
そのモチベーションを持つための最も効果的な方法は、大学教育において動物福祉に対する基本的な考え方と我々獣医師の果たすべき責任と役割について学んでおくことであると考えるが、それが困難である現状では、先ず最初にこれらに関する研修が必要であろう。
私がRSPCAで学んだことの一つが、動物福祉は無知からくる見逃しが一番危険であり問題であるということである。人間は同じ動物ながら他の動物の痛みにはなかなか気づくことができない。残念なことに、我々は動物福祉に対する考え方について全く教育を受けずにこの職業に就いている。よって、動物の痛みについてどう考えるのか分からないし、気付かないのである。もし、気付いたとしても、それが感情的なものなのか根拠のあるものなのかの判断がつかないために、自らの仕事としての受け止め方がわからないというのが今現在の我々の正直な感覚ではないだろうか。
従って、次に我々自身が自信を持って仕事ができるために必要となってくるのが、科学的な根拠に基づいた正確な知識と技術の習得である。我々の仕事は、法令の解釈、我々が扱う動物の基本的な習性生理とハンドリング、負傷動物の初期治療、安楽死の考え方、飼い主や動物取扱施設への調査テクニック、動物虐待の査察方法等非常に広範囲かつ高度な知識と技術を要求されるものであることから、限られた日数で習得できるものでなはい。よって、研修に加え必要な知識と技術を習得するためのマニュアルが必要となってくるのではないかと思われる。RSPCAインスペクターはIS0(上述)をはじめとして、リーガル(法律)、動物種毎の習性生理やハンドリング、初期治療、安楽死ガイドライン等彼らの仕事を遂行する上で必要な知識と技術を確保するための本や資料を与えられている。こういったものは我々にも必要であろう。
(2)研修内容
我々が習得しなければならないスキルはあまりにも多いが、研修を行う場合、先ず最初に動物福祉の理念や基本的な考え方、さらに現在の日本の現状認識と我々が持つべき視点といったような現在の仕事をする上で最も必要かつ基本となる考え方を習得する必要があると思われる。
これについては、現在福岡市などが実践している行政改革の手法であるNPM(ニューパブリックマネージメント)の考え方(※)を取り入れ、「我々の使命は何か」「我々の顧客は誰か」「我々組織の将来像(ビジョン)は何か」ということを徹底的に議論することによって、一つの共通した認識を持たせることが有効ではないかと思われる。一旦共通認識が生まれれば、後のスキルの習得も自ずと積極的になるであろうし、何より我々担当者が同じレベルで社会に対して働きかけを行っていくことができるようになると思われる。そしてこの議論の場を定期的に開催し、業務の中で感じた疑問や行き詰まりを話し合い、議論することで、使命を再確認していけば、共通認識はさらに深まり、お互いに高めあっていけるのではないかと思われる。
少し余談にはなるが、この行政経営という考え方は、我々動物行政においても多いに有効である。例えば、犬猫の譲渡の制度に関しても、飼い主を我々の顧客とみなし、顧客満足という新たな視点を持って、システムを考えていくことで、譲渡が促進され、行政目標も達成でき、同時に顧客(飼い主)も満足するという双方にとって良い結果をもたらすことができるのではないだろうかと思われる。
※NPM(ニューパブリックマネージメント)
行政組織に可能な限り民間企業の経営手法を導入し、より少ない予算で実のある結果を生ませようという考えかた
3.日本における動物福祉行政の推進に関する考察
今回RSPCAにおいて研修を受けるにあたり、巨額の収入や充実したシステムなどは以前から耳にしていたため、今回はそこに囚われることなく、RSPCAの活動について、日本でどうアレンジできるのかという部分に意識を払うよう努めたつもりである。
しかしながら、RSPCAが組織として達成したい事がらについて、行政や他の団体からの援助や支援を一切うけることなく、必要なスペシャリストからそれをマネジメントするジェネラリストまで全てを自前で揃えることができるRSPCAの組織力と資金力にはただ驚くばかりであった。
例えば、愛護教育では、子どもの発達過程に応じた的確な愛護教育を行うために教師、動物虐待を起訴するための法律相談には弁護士、効果的な広報を行うためのカメラマン、国際協力には関係のある国の語学ができる者を雇うといったことができるわけである。
しかし、日本の動物福祉に携わる組織(特に行政)は、達成したい事がらがある場合であっても、そこに必要なスペシャリストやジェネラリストを全てそろえることは先ず望めないであろう。つまり、日本において、我々動物愛護管理担当者にめざすべき目標があった場合には、その目標を達成するために必要な専門家の協力を外部の組織に依頼することになる。
その場合、我々は先ず相手に対し、なぜ協力が必要なのかという我々の目的を説明し、理解を得るという非常に大きな段階を踏む必要がある。従って、我々日本の動物福祉に携わるものは、動物福祉に関するスペシャリストでありながら、同時にその他のスペシャリストと協力関係を結ぶことができるかといったアレンジメント能力も求められることになる。
今後日本における動物福祉行政を推進するためには、動物福祉は獣医師だけの力では進んでいかないこともまた認識し、いかに多くの組織や人間に動物福祉の重要性を理解してもらい、協力関係を作るためにはどうすればいいのかということも考えることも非常に重要である。そういう意味では、全てを自力でやっていけるRSPCAに比べ、日本の動物福祉を推進するための課題ははるかに大きいのであろう。
4.まとめ
私の今回のRSPCA訪問の目的は、RSPCAインスペクターのトレーニングを受講することにより、日本におけるインスペクター制度の導入と我々行政担当者に必要とされる動物福祉に関する研修内容の検討であった。
これについては、課題が多すぎるというのが正直な感想である。インスペクター制度を導入するための日本の社会の受け皿が整っていないというのが現段階における私の結論である。日本の動物福祉はイギリスに比較して100年遅れているとよく言われるが、単に時間の問題だけでなく、イギリスで動物福祉が発達した理由は、イギリスの社会的な背景やイギリス人の文化や思想も色濃く影響しており、それは日本とは全く違うものであることを今回の訪問で体感した。
課題は大きく、やるべき事は山積している。しかし、あせって事を進めても社会がついて来なければ何の意味もない。イギリス産の動物福祉という実は、今の日本の土壌では生ることができないのである。よって、我々動物福祉に携わる者は、動物福祉の実をできるだけ多くの人に食べてもらうために、土壌を改良し、日本人の味覚に合った実を生らすという視点を常に意識して、各々の業務や活動を行っていくことが日本の動物福祉を進めていくためには不可欠なのであろう。
次に私自身が最も会得したかったものは、動物福祉とは何かという基本の考え方を、RSPCAの動物福祉に対する姿勢を体感することによって自分自身の中に確立することにあった。これについては、ほぼ達成できたのではないかという手ごたえを今感じている。
私自身が現在の仕事に対して獣医師としてこれでいいのか、なぜ私は獣医師として今の仕事を選んだのかという疑問を持ってから9年がたった。その9年の中で自問自答を繰り返してきた。そして、その答えを探すために様々な人の話しを聞き出かけ、本や関係ある資料を読み、海外にも出かけ、必要だと思うことは手当たり次第やってきたように思う。その集大成が今回のRSPCAの訪問であった。その9年というベースがあったからかもしれないが、言葉の壁と1ヶ月という短期間にもかかわらず、動物福祉に関して世界で最もレベルの高い場所に身を置き、日々動物に関する研修を受け、話しをする中で、動物福祉に関する考えが自然と身についた。そして、私はなぜこの仕事を選んだのかという問いに対して「獣医師は世の中のどの職種の人間よりも動物の苦痛を知っているはずであるし、そうあるべきである。そして人間社会の中でその苦痛をいかに取り除き、減少させることができるかを考えることは獣医師としての職業を選んだものの使命である」という答えが自然に出てきたのである。
しかし、この使命は私一人だけのものであって、他の獣医師(行政獣医師)は全く違う考えを持っているのかもしれない。同じ組織で同じ業務をやっていながら、何を使命とし、何を目標とし、何に悩んでいるのかお互いに全く共有できていないのである。これが現在の行政担当者の偽らざる実態であり、組織として大きな問題点であると私は思う。
よって、我々が先ず最初にすべきことは、自分自身の仕事に対する使命の認識とその共有であろう。その認識と共有を図ることができれば、その使命を果たすためのスキルの習得は、モチベーションがある故に、そう難しいものではないし、皆で意見を出し合いながら、進めていけば良いことである。
先ずは、組織に属する個々人が高い意識を持ち、自信を持って仕事ができるためのしくみ作りを行っていくことから始めていきたいと思う。
●平成14年8月30日(金)
いよいよ渡英する日がやってきた。5年越しの夢がとうとう実現する日がやってきた。
朝8:30家を出発。ねねを実家に送りとどける。ねねは置いていかれるのを感じて母が散歩に連れ出しても後ろばかりを気にしている。
関空には10時に到着。夏休みも終わりのせいか人は少ない。JALのカウンターでボーディングパスを発行してもらう。その後、ポールさんへのタイピンのお土産や薬などを買い、両替を行った。
ゲートには11時すぎに向かう。思ったより外人が多い。関空を発着しているヨーロッパ便が減っているせいかもしれないと思った。
飛行機は12時15分に離陸。しばし日本ともお別れだ。飛行機は特に揺れることもなかった。一つ一つの座席の前に画面があるので思ったよりも快適に過ごすことが出来た(いつものとおり眠れなかったけど)。イギリスに午後4時無事到着する。
イミグレーションは非常に混雑していた。30分は待っただろうか。ヒースローのイミグレーションはいつも厳しいので、少しドキドキしたが、特に問題もなく入国できた。
ヒースローエキスプレスに乗り、パディントン駅へ。回転寿司のお店があったりして、おもしろかった。そのままタクシーに乗り、ビクトリアステーションへ。二階建てバスや、ハイドパークなどの町並みをみると、イギリスなんだという実感がわいてくるとともに、とうとうここまでやってきたのかという感慨もひとしおだ。
ビクトリアステーションは非常に混雑していた。まず切符を買って(場所は人に聞いた)、画面でプラットホームの番号がでるまで待つ。12番線から出る6時27分のホーシャム行きに乗りこんだ。電車は非常に混雑していた。時差ぼけのせいか眠気がおそってきた。電車はロンドンから家に帰宅する会社員の人たちや家族連れが多いようで、駅に到着するたびに、降りていって、最後には車両に私と男性1名だけになってしまった。駅もほとんど無人駅のような小さい駅ばかりなので、タクシーがあるかどうかにわかに不安になる。
そろそろ体力も限界に達してきた。7時40分頃にホーシャムに到着する。ほんとうにこじんまりしたまちという感じである。タクシーはあった!!(神様ありがとう!)そして、タクシーで2〜3分であっと言う間に宿に着く。
確かにB&Bは普通の家である。オーナーはイメージしていたとおりの優しい女性であった。男の子の子供が2人いるようだ。お兄ちゃんの方が荷物を持ってくれて、部屋に案内してくれた。部屋はシングルベットが一つの6畳くらいの部屋だった。ホームステイをしているような感じである。
と、荷物の整理をしていたが、体力も限界が着て、そのまま眠ってしまう。現在深夜の3時30分。いつものことながら時差ぼけである。
●平成14年8月31日(土)
朝7時に起きた。日本で言えば10月下旬くらいの気候である。非常に快適である。先ずは朝食をと思いリビングに行く。しかし誰もいなかたので、新聞を読んで待っている。すると、娘さんと思しき人(後でスロバキア人のアルバイトだったとわかったのだが)が用意をしてくれた。といってもトーストと紅茶だけだった。後で同席したオランダ人のグループはチーズと卵を注文していたが、どうやらオーナーは留守のようで、彼女が代わりに朝食の用意をしてくれていたようだ。
その後、10時ごろにとりあえずホーシャムのまちを散策することにする。タウンセンターを目指し、10分ほど歩く。お店もたくさんあり多くの人でにぎわっている。
とりあえずどこに何があるのかを知るためにもウロウロする。途中コーヒーを飲んだり、ホットドッグを食べたりした。ペットショップも発見!小動物が販売されていたが、非常にクリーンな施設で広さも十分あった。特に驚いたのはいろいろな動物たちのためのおもちゃが置いてあるところだ。特にバードゲージには鳥が遊べるようなカラフルな揺れるおもちゃがたくさんつってあった。餌や水などの施設だけでなく、メンタルな部分にも配慮しているところがやはり素晴らしい。
キャバリアのトライの子犬のぬいぐるみを買った。ねねと一緒に来ることができたら楽しかっただろうなーと少しセンチな気分になった。
その後RSPCAの場所を確認するために地図で書いてある場所を探すも見つからない。そうこうしている内にツーリストインフォメーションを見つけたのでスタッフに尋ねてみると、思ったとおり移転したとのこと。そこまではバスを使わないと行けないようである。
2時頃帰宅する。そのままぐっすり眠ってしまい、起きたら8時だった!その後、メールを使うために、リビングに下りる。
そこで初めて、朝食を用意してくれた彼女がスロバキア人のアルバイト(だと思う)だったとわかり、昨日荷物を運んでくれたのが、ボーイフレンドのチェコ人のジョージ(英語バージョンの名前らしい)だったことがわかった。
彼らは非常にきさくな人たちで、何やかんやと尋ねてきた。日本人は初めてらしく珍しいのだろう。肝心のメールのほうはなかなかつながらず、かなりあせったが、最後に何とかつながった。つながらなかった理由もつながった理由もいまいちわからなかったけれど、つながったから良しとしよう!!
彼らと話をしたことで、少し気持ちがほぐれた。英語を習って4ヶ月だと言うと、非常に驚いて、ほめてくれた!!やはり英語に関してはネイティブより寛大だ!
明日は朝洗濯をして、行けたらブライトンに行ってこようと思う。
●平成14年8月31日(土)
今日は朝洗濯をした。ドラム式の洗濯機だった。そうそうこの家は陸亀を飼っていた。飼育許可がいるそうだ。
洗濯をしてから、いよいよブライトンへ行くことにする。駅まで10分ほど歩く。ほとんど人を見かけない。バスの時間まで実家に電話したり、ガイドブックを読んだりしていた。バスはほぼ定時に到着。ブライトンまでの往復切符を買う。1時間程度でブライトンにつく。いきなりインド風の建物が目に入る。ロイヤルパピリオンだ。早速中に入る。東洋風のつくりでやたらと竜が目に入る。きっと竜がお気に入りだったんだろうなあ。中は非常に豪華で、ヨーロッパと東洋の文化が非常によくミックスされていて、今までにみたことがないような華麗なものだった。その後、海辺につきだしたレジャー施設のパレスピアに行く。
子供づれが多い。そうだなあ日本でいうところの天保山って感じかな。ぷらぷら歩いた後、チキンアンドチップスを食べた。やはり量が多くて全部食べ切れなかった。そのあと海岸をぷらぷらあるいてまちの中心へと向かう。そしてスタバに入ってしばし休憩する。こんな贅沢な時間の過ごし方は久しぶりである。でも、周りをみると結構外国人はゆっくりと時間を過ごしている。たまにはそんな中に浸ってみてもいいのかなーと思ったりした。
4時15分のバスで帰路につく。帰りの運転手は運転があらくてちょっとこわかった。宿には5時30すぎに到着。非常に疲れたので、そのままぐっすり眠ってしまう。
●平成14年9月2日(月)
いよいよ今日から研修である。かなり緊張している。宿を8時45分くらいに出発する。RSPCA行きのバスは従業員はタダで、それ以外の人はお金がいるということだった。5日間通用するパスで8ポンドだった。バスは10分程度で着いた。テレビでみていたが、実際に目にするとでかい!一つの企業やんって思ってしまったが、これは後でまた同じことを思うのである。エントランスでポールさんを呼んでもらう。ポールさんは非常に温和で穏やかな人である。英語もわかりやすい。インターナショナル部に行き、先ずはオリエンテーションを受ける。私のための2週間のプランをたててくれていた。何を言っているのかはある程度わかるのだが、やはり伝えることができない。でも、ポールさんは一生懸命聞いてくれるし理解してくれようとする。非常にありがたい。その後、中を案内してもらう。とても静かなオフィスである。みんな余裕をもって仕事をしているようだ。いろんなセクションがあって、みんなそれぞれ仕事をしている。目的は動物福祉なのだが、それに関わるひとたちは必ずしも動物関係の教育を受けたひとたちばかりではなく、コンピューターが専門だったり、お金の管理が仕事だったり、法律の解釈が仕事だったり、そういう意味でも企業といえる。ポールさん自身ももともとは英語の先生で(企業で英語での交渉やプレゼンの方法を教える先生だったらしい)、中国や日本などのアジアに関係した仕事がしたいと思っていたときにこの仕事にめぐり合えたらしい。特に動物に関係する仕事がしたいと思っていたわけではなかったと言っていた。日本でもそういう幅広い視点が大切なのではないかと強く思った。これは自分自身にも言えることなのだけれど。
その後ポールさんと昼食を食べる。ここのレストランは非常に安い。2〜300円で食べることができるのだ。フリーダムフードのメニューもあった!
さて午後からはいよいよ研修である。緊張が高まってきた。生徒は24人で、見た感じでは結構若い人が多い。男女はやや女性のほうが多いような気がした。ここでも思ったのだが、やはり動物に関わる人は女性が多いのだろうか。
今日のレクはいきなり法律で警察犯罪証拠法と人権法についてである。はっきり言って早すぎて何をいっているのかさっぱりわからない。ただ、かなり難しいレクだったようで、みんな難しいといっていた。確かに法律の話は日本でも難しいよなあ。
内容はちんぷんかんぷんだったけど、ここでは真のスペシャリストを養成しようとしていることはよくわかった。インスペクターは動物を守る仕事だけれど、やはりそれは対人の仕事だということである。だからこそ人権は守らなければいけないし、その部分を押さえておかなければ決して裁判で勝つことはできない。そういう意味でいうと、虐待はすぐさま刑罰の対象になるという考えがきちっとできていて、虐待の現場に一歩足を踏み入れたときから、その準備は始まっていて、そういう意味でもスペシャリストなんだと思った。普段の自分の仕事を考えたとき、スペシャリストとしての気概はあるのか。法の執行者としての自信をもって仕事をしているのかと自問自答してしまった。RSPCAのインスペクターは法の権力をもたない。でも私たちはもっている。使わない手はないんだと思った。ただし、それを使うにあたっては的確に使える技を持たないと使えないのであり、それが今の日本にはまだないのかもしれない。ポールさんが私たちが現場に行くときになんと名乗りますかと聞いてきたが、そういえば自分の職業を名乗ることはない。保健所です。としか言わないのである。ここでは制服を着て、RSPCAと名乗ればそれだけで虐待の調査にきたとわかる。そういう知名度の差、虐待は犯罪であり、それを調査する仕事があるという認識を持たせるのも大切なんだと痛感した。
スペシャリストにならなければと思う。今のままの中途半端な仕事のやり方ではだめだ。そのためのプログラムを考えよう。
研修初日でこんなに刺激を受けている。本当にきてよかった。言葉はわからなくても、自分の目と耳で感じるものは何より大きい。
●平成14年9月3日(火)
研修2日目。みんな一度に朝食を注文したので出来あがるまでにかなり時間がかかる。私は一番最後で30分は待った!さすが外国である。日本なら考えられない。ということで、8時40分のバスに遅れそうになり大急ぎでバス停に向かう。バスのドアが閉まってバスが行きかけたところに到着。なんとか乗ることができた・・・
午前中は生徒の10分間トークである。みんなそれぞれ話したいこと(旅行のことや以前の仕事のことなど)を0HPなども使いながら話す。要は人と話すというコミュニケーション能力を身に付けるということだろう。でも、みんなかなり笑いもとりながら上手に話しをしている!そういう教育を受けてきたのかもしれない。日本人ではこうはいかないだろうなーと思った。
その後、講義でバッキング&タッキング、つまりは証拠品の押収の仕方である。押収したものの一覧を作成し記録し(収去証みたいなもの)、袋につめる。必ずタグに記録に品と一緒に袋にいれる。袋は一度しめたら切らない限りはあかないもので封をする。はっきりいって警察の仕事だ。
昼食後は昨日の続きで警察犯罪証拠法の講義だった。今日はインタビューについて。午前と同様動物虐待はそく犯罪とみなし裁判となる。そのために必要なものを用心深くかつもれなくそろえるということである。そしてそれに当たっては人権を侵さぬよう注意深く行われなければならないということだろう。
記録をとる。確かに私もよく言われたしやっている。ただここでやられていることは完全に警察の調書だ。そしてわれわれの仕事においてはどこまでやるべきかきっちり線引きする必要があると思った。今後日本において動物虐待、特にネグレクトは犯罪行為であるという認識をもたせるためには、事例を増やす必要があり、そのためには告発を行うことになる。そうなるとこれらの事はきっちりやられなければならないのだろう。ただ、今の日本においてはおそらく警察を一緒に動くことになるのだろうが、それならそれできっちりとマニュアルをつくる必要があるのだろう。
●平成14年9月4日(水)
研修3日目である。今日は余裕をもって出かけることができた。今日の研修は午前中はまず犯罪者の扱いについてであった。しかしながらあまりよくわからなかったというのが正直なところである。次にと殺についてである。早い!それが第1の感想である。と殺については日本でもそう問題ではないのであろうが、豚を二酸化炭素で殺したあと鼻をピックで刺して死の確認をしているところが印象的だった。とにかく瞬間に殺し、すぐに放血することがポイントのようであった。
午後からは安楽死について。安楽死については非常に大きなテーマであり、インスペクターになるためにはここを避けては通れない。犬猫については当たり前のことながらペントバルビタールの静注がメインの方法で、時には銃という方法になるようである。
動物福祉を進めるにあたっては安楽死方法の見直しは外せない。もし今後神戸でインスペクターの研修をすすめていくのであれば、現在の処分に対する基本的な考え方もしっかり話していかねばならないのであろう。そのためには先ずセンターでの安楽死方法の見直しを進める必要があるのだろう。確かに現在のCO2による処分はここでいうところのテリブル(恐ろしい)方法なのであろう。
それにしてももう少し英語が理解できればと思ってしまう。悔しいけどやはり限界がある。ただ、インスペクターというのは何かということが少しずつわかってきた。やはりこれをそのまま日本に持ち帰っても役にたちそうにない。どうアレンジしていくかが大きなポイントになるのだろう。
●平成14年9月5日(木)
昨晩からネットの接続がうまくいかなくなり、いろいろと試してみるも全くダメになった。そのせいかなんとなく気分が乗らない。理由がわからないというのが最大のフラストレーションである。今日は11時30分からの講義だったので、かなりゆっくり時間をすごすことができたが、やはり気分は最悪だ。バスがないのでタクシーでRSPCAに向かう。10ポンド弱もかかった。講義の時間までインターナショナルデパートメントで過ごす。
ポールさんがたくさんのリーフレットをくれた。段々荷物が多くなる、帰りの荷造りが恐ろしい。
先ず最初はアニマルセンターの概要について。話ばかりでかなりつらかった。アニマルセンターについては来週訪問できるのでそのときにもう少し詳しくわかるであろう。
午後からは本当は安楽死のインジェクション方法の講義だったが、インスペクタースタンダードオーダー(ISO)についての講義に変わった。理由はわからなかった。しかし、このISOの講義が実におもしろかった。要はインストラクターのマニュアルなのだが、かなり詳細に決められていて、これは日本でもかなりの参考になるものになるであろう。明日コピーをもらえるようお願いしてみよう。とても印象的だったのは、この中に今回から児童虐待についての項目が増えたことである。虐待の連鎖に関する認識がかなり高まってきた証拠である。実に興味深いものである。この講義を受けているときに思ったことが、今度の山口先生のツアーの時に一緒にみんなで日本のインスペクタートレーニングシステムを考え、それを実際の自治体の研修プログラムの中に入れていくという試みをやってみてはどうだろうか。それこそ研修がそのまま生きてくるのではないだろうか。私一人が作るよりたくさんの同じ意識を持つ人たちを作るほうがずっと早いし、よいものが作れるのではないだろうか。それにアドバイスを受けることができる人がすぐそばにたくさんいるのだから最高の環境である。山口先生に提案してみよう!そしてそれが実現するのであれば、来年5月にもう1度ここに来たいと思う。
●平成14年9月6日(金)
メールの接続が成功した。なぜだかわかならないが、これで気分もすっきりした。今日は10時45分からの講義であった。みんなは朝からテストを受けていた。プログラムが変更になって今日の午前中は銃の取扱いについてであった。まああまり関係ないが、結構興味深かった。ただ、かなり重いので使いこなすのはかなり難しそうだ。
昼からは獣医の講義で、今日は初日だったので骨格についてであった。大学時代に戻ったようで、なつかしかった!
そして最後にポールとのミーティング。昨晩レポートを作成していたので、これをもとにディスカッションした。上手く話すことができないのに、一生懸命聞いてくれるポールに本当に感謝したい。神戸のゴールデンの放火について話をしたら、非常に驚いていた。飼育禁止が法律にない、飼い主から犬を取り上げることができないというのは、かなり信じられないことのようである。昨日思いついたことについて話をしてみたが、上手く伝わらなかったのか、あまり良い返事をもらえなかった。また山口先生に相談してみよう。
やっと1週間が終わった。かなり緊張していたのかすごくほっとしている。来週はまたさらに興味深い講義がある。がんばろう!
●平成14年9月7日(土)
今日はロンドンへお買い物と日本食を食べに出かけた。駅で往復切符を買おうとしたら、トラベルカードといって電車と地下鉄乗り放題のチケットをくれた。これで13ポンドだからかなりお得(ロンドンーホーシャム間は片道11ポンドだった)だ。
11時頃ロンドンに着く。先ずは旅行の予約に行く。ロンドンも3回目だとだいたいの地図は頭の中に入っているので問題なく歩くことができる。ただ、ホーシャムに慣れている身にとってはかなり騒々しく思う。まあ当然なのだけど。旅行会社の場所はすぐに見つかった。ただ、日本人の女性の対応がかなりビジネスライクでむかっとくる。同じ日本人だからもっとフレンドリーな対応を期待していた私が悪かった。久しぶりに会う日本人だから気持ちがゆるんだのかもしれないが、でもそれにしてもあの対応はかなりひどいと思う。日本だったらクレームの対象になるはずだ。とちょっと気持ちが落ち込んでしまったが、とりあえず20日から3泊4日のイギリス周遊の旅をブックしてきた。
その後、ちょっとウロウロしてからハロッズに行く!久しぶりのハロッズだから少し興奮気味。先ずはハロッズワールドでグッズをチェック。その後キャバの置物を探しにいく。ロイヤルダルトンで発見!とりあえず今日は見るだけにする。既にクリスマスコーナーができていた。見ているだけで楽しい。そして4階のハロッズワールドでバッグとシャーペンとボールペンのセットを買う。それだけで6千円、ちょっと高いかなあ。
その後、日本食を食べにピカデリーにいく。ポールから聞いていた店に向かう。ちょっと探したが割りと簡単に見つかった。太郎という店で、名前が笑える。カウンターでお寿司を食べた。8ポンドだからちょっと高いけど、味はなかなかであった。店内は日本人が多いかと思ったがそうでもなかった。外人がうどんをすする姿はなかなか笑える。
その後、バーバーリーに行き、スカーフをゲットする。もちろん犬柄である。そして、ウロウロしていたときに見つけたロイヤルダルトンに入り、先ほどハロッズで見ていた置物が20%オフだったのでゲットする。いろいろとお買い物できるとご機嫌である。
そしてジャパンセンターで新聞を購入し、帰路につく。ただ、どの電車に乗ればいいのかわからずちょっと悩んだ。結局聞いてなんとか乗り込むことができた。
ホーシャムには6時に到着。楽しかった!!
●平成14年9月8日(日)
今日は一日ホーシャムでゆっくり過ごした。とても天気がよく穏やかな日で、心の洗濯をしているようなゆったりした時間を過ごすことができた!
●平成14年9月9日(月)
今日から2週目である。午前中はイギリスの動物福祉に関する法律で最も古くそして重要な法律である「動物保護法1911年」についての講義であった。この法律自体は総論的なもので、虐待とは何かから始まる。もっと複雑なものであるかと思ったが、結構理解できたし、かつおもしろかった。ここまで動物虐待についてクリアーに書いてあるとかえってわかりやすいものなのかと思った。
午後からは2チームに分かれて、Aチームはロンドンのアニマルホスピタルへ、Bチームはインタビュートレーニングに入った。私はBチームのみんなと一緒に残った。今日から3日間インタビューテクニックのお勉強である。
●平成14年9月10日(火)
今日は一日インタビュートレーニングであった。いろんなシチュエーションを想定し、どういう風に査察を進めていったらいいかをみんなで考えながら進めていくものである。はっきり言ってやっていることはとても重要で、これを受けたかったんだ!というものであったが、いかんせん英語の理解力に問題があるので、やっていることの2〜3割程度しかわからずとてもはがゆい!!
我々がやっている苦情処理でもこのインタビューのテクがあればもっと有効な指導ができるのではないだろうか。戻ったらテキストを訳してみよう。
夜はみんながパブに誘ってくれて、ブラックジョークというパブに行く。といっても、集合が夜の8時30分というのは参った!一眠りしたくらいだ。でも、やはり飲み会になるとみんなはじけていた。いろいろと話もできてよかった!!夜11時に帰宅する。ちょっと飲みすぎたかな。久しぶりだったし・・・。でも楽しかった!
●平成14年9月11日(水)
今日はアメリカのテロの1周年だったので、お昼の1時45分にも黙祷をした。多くの国が悲しみにつつまれているのであろう。引き続きインタビューテクニック。しかし昨日の飲み会がこたえたのかかなりキツイ。頭痛が薬を飲んでもとれない。ということで、早々に帰宅し、風邪薬を飲んで眠った。今ここで寝込むわけにはいかないのである。
●平成14年9月12日(木)
早々に寝た甲斐があり、なんとか持ち直した。今日は裁判所とアニマルホーム(RSPCAのシェルターのこと)に行った。裁判所では1時間程度待たされた。裁判所は日本でも行ったことがなかったので初体験だ!裁判官のケープのような服がなかなか良い。はっきり言って何を言っているのかはさっぱりだったけど、インスペクターは裁判所に来て、動物虐待について証言を行うんだと思うと、彼らの仕事の重さを痛感する。
そして車で30〜40分程度走り、アニマルホームに到着する。よく見るシェルターである。特筆すべきは、犬猫だけでなく、ウサギ、モルモット、インコ、鶏、グース、ハムスター、フェレット等々ほとんど全てのペットが収容可能だという点である。インスペクターが保護してきた動物たちは、ここで飼育されることになる。ケージの前のメモには、ネグレクトで保護されてきたというようなものもあった。小動物はほとんどが捨てられて保護されたものだった。日本において動物福祉を進めるにはこういうシェルターが不可欠である。結局動物を保護する施設がなければ、誰も行政に救いを求めてはこないだろう。難しいことかもしれないがやはりシェルターは作らなければならないのであると誓いを新たにした。
帰りにチャイニーズのテイクアウェイで買ってきたチャーハンがめちゃくちゃおいしくて、今日の夜はごきげんだった!
●平成14年9月13日(金)
今日が最後の講義である。朝は先ず動物保護法の続きで、おもしろいことに、法律の概要をイラストに書かすという作業があった。なかなかおもしろかった!法律もこうやって覚えるとなかなか良いものである。次に動物遺棄法について。動物保護法との違いと適用についての講義だったがまたまた半分くらいしかわからなかった!そして獣医の講義。これははっきりいってほとんど聞き流していた。みんなもあまりおもしろそうではない。獣医は講義が下手くそなんだろうか。
そしてランチを食べて昼からミーティングかと思いきや、肝心のポールの姿が見えない!おかしいのでインスペクターの先生に聞くと、なんとポールはヨーロッパのどっかの国に行ってしまったらしい!何ということだ。私のこと忘れないでよ!!ということで、することもなくなったので、先生の車で宿まで送ってもらった。
なんか拍子抜けした最後だった。来週からの予定は聞いてないので、月曜日また行くことになった。ポールがどんな顔をするのか楽しみだ!
●平成14年9月14日(土)
今日はまたまたロンドンへ行く。前回中途半端で終わったナショナルギャラリーを制覇するためである。受付でガイドイヤホンを借り(もちろん日本語)、年代順に行くことにした。最初はやはり宗教が多い。作品もイタリアのものがほとんどだ。その後、オランダ、スペイン、フランス、イギリスと国の栄枯盛衰に従って絵も移り変わることがよくわかった。だいたい有名どころの絵は必ずあり、エルグレコの絵もちゃんとあった!やはりその収蔵数には驚くものがあった。4時間ちょっとかけてやっと全部みることができた。非常に疲れたがなかなかよかった。外国の美術館は人もそんなに多くなく、ゆっくりと休みながら見られるところがいい。美術鑑賞はやはり気持ちの余裕がないといけないなーと思う。そういう意味では、一人でゆっくりと時間を忘れて見るというのは大変よかった。
その後、観覧車に乗ろうかと思っていたが、ほとほと疲れおなかもすいたので、ご飯を食べにまたまた日本食店に行く。今日は太郎は準備中だったので、その近くの亮という店に行く。やはり留学生らしき女性のすました態度にむかつく。東京弁だからなあ。なんかむかつく!!店はやはり日本人の吹き溜まりのようだった。九州弁のカップルや、サイケな姉ちゃんや、やたらハイな女性や、逆に沈んでる女性とまあいろいろだ。そんな中私はどううつったのだろうか?ちょっと気になる。そのあと、マーブルアーチまで行って、旅行の集合場所のホテルの位置確認と、ウインドウショッピングをする。特にこれといったものもなく、7時10分のホーシャム行きの電車にのって帰ってくる。
●平成14年9月15日(日)
今日は1日ゆっくり過ごす。
●平成14年9月16日(月)
今日からの予定はまだ聞いていなかったので、取りあえず9時30分のバスでRSPCAに向かう。やはりポールは来ていなかったが、メッセージをインスペクタートレーニング部に伝えているということだったので聞きにいくと、秘書の女性にまたまたインターナショナル部に連れていかれ、今日はアニマルホスピタルに訪問することになっていることが判明する。どうやらインターナショナル部の女性が同行してくれるようだ。出発が11時30分ということなので、それまでデスクを借りて資料などを見ていた。
その後、その女性の車でホーシャムの駅まで行き、そして電車に乗って、ロンドンの南のプットネイというところに向かう。RSPCAのアニマルホスピタルは貧しくて獣医に動物を診せるお金がない人やインスペクターが保護してきた動物の治療などにあたっており、そういう意味ではやはり貧しい地区にある。到着すると、マネージャーの女性が病院内を案内してくれた。獣医は8名で、施設の職員数は47名と言っていた。
やはりロンドンでも野良猫の問題は深刻で、かなりの数が安楽死の対象となっているようである。FIVが陽性のものは全て安楽死となるようである。
ここはバタシーが近くにあるので譲渡の対象となる動物は数が少なかった。マネージャーに何か問題はあるかと聞くと、なにもないと言っていた。強いて言えば、VTの数が足りないということくらいかと言っていた。年間の予算は約3億。もう今さらRSPCAの組織力に驚くつもりはないけれど、やはりそれだけのお金をチャリティーとして使え、こういった病院を何箇所も持てるということを目の当たりにすると、やはり驚くしかない。
まあ日本ではこれと同じような施設を作ることは無理であろう。ただ、少なくとも、譲渡に出す動物や負傷動物、虐待などから保護してきた動物の治療くらいは、センターでできるような体制を作る必要があるのだろう。そのためには臨床の技術が欠かせない。我々は獣医であるのに臨床ができないというのはおかしいということをもう少し深刻に受け止める時期に来ているのだと痛感した。動物の痛みを理解し、その痛みから解放してやれる第一人者は獣医なのだという自負が必要なのではないのだろうか。先ずは臨床技術の習得という体制を作る必要があるが、これが何より難しいのである。
●平成14年9月17日(火)
今日はバス停でポールに会った。ベルギーに行っていたようである。今日は君の英語は良くなってるねえと誉められる。昨日いろいろ英語で話しをしたからかなあ。自分ではあまりよくわかっていないけれど、語学力ってそういうものかもしれないなあ。
今日は、特に予定はなかったので、RSPCAの他のセクションで興味があるところに話を聞きに連れていってくれるということだったので、フリーダムフードと愛護教育のセクションをお願いした。午前中はそのための質問作りの作業を行う。
昼からフリーダムフードのセクションにポールに連れて行ってもらい、質問に答えてもらった。思ったより理解できた。やはりイギリスでもBSEなどのフードクライシスから食の安全性が問題となり、それを機にRSPCAが畜産動物の福祉を推し進めてきたようである。やり方としては、大きなスーパーマーケットにフリーダムフードを売り込み、スーパーが提携している農場から始めていったようだ。日本で言えば自社ブランドを持つようなイオングループやコープのようなところになるのだろうか。資料に書いてあったが、マクドナルドが使用する卵をフリーダムフードに変えるということであり、フードクライシスにより企業が自社の食品のイメージをより安全であるとアピールすることに使っているようである。と殺から製品になるまでは徹底したトレーサビリティーにより管理されているとのことである。フリーダムフードの家畜たちに特有の病気はあるのかと聞いたら、徹底した基準により管理されており、フリーダムフードの家畜たちはより快適に生活することにより、より健康であり何の問題もないと笑われた。確かにそうだろうなあ。愚問であった。問題はあるのかと聞いたら、国民はインタビューをすると家畜の福祉は大切だと答えるが、いざスーパーに行きフリーダムフードより安い商品を見てしまうと、やはり安いものを手にしてしまうということで、これは確かに理解できる。フリーダムフードはそうでないものより5〜10%は高いようである。
そして前から欲しかったフリーダムフードボールペンをいただく!!
日本で畜産動物に対する福祉が取り入れられるのはかなり難しいのかもしれないけれど、ポールが言っていたように、消費者の意識というのは非常に大きく、消費者がノーと言えば行政、企業は動かざるを得ない。そういう意味では、今現在自分たちが食べている食品はどうやって作られるのかという疑問が消費者に芽生え始めており、より安全で安心できる食品を求める声も高まっている。その中で私ができることは、より安全で安心できる食品を求めるためには、その動物たちにも安全で安心できる環境を与えてやることが必要なのだということを伝えていくことだろうか。先ずは監視員に、こういう概念は決して極端な動物愛護論者が狂信的に言っていることではなく、安全で安心な食品を突き詰めていけば結局はその動物自身の健康と福祉に行き着くというところの概念を伝えていきたいと思う。
●平成14年9月18日(水)
今日は午前中愛護教育のセクションに話を聞きに行く予定だったが、忙しいようで、代わりにポールが私の質問に答えてくれ、またまた山のような資料とビデオをいただく。ホントに持って帰れるだろうか。かなり心配である。
やはり思っていたとおり、愛護教育のセクションの担当者は教師だった!分かっていることとはいえ、ここまでプロを集められるRSPCAの組織力には頭がくらくらする。
RSPCAも愛護教育には力を入れており、各ブランチには愛護教育専門の担当者がいて、定期的に学校を訪問し、先生への教育と生徒への教育の両方を行っているようである。そういう学校外の団体が学校を訪問することはよくあることで、RSPCAなどの愛護団体などに限らず、警察や消防やいろんな団体が訪問しているようである。
以前ポールとも話したことがあったが、動物への共感を人々に植え付けさせるためには、幼少期からの愛護教育が欠かせない。日本でも少しずつ理解されつつあるが、まだまだこれからの課題である。そのためには教育委員会とのコネクションが必要である。今獣医師会による学校訪問活動が始まっているが、愛護教育に関しては獣医師を核にして行って行けば良いのではないだろうか。神戸では愛護協会がその役割を担っていけばいい。
ポールから君一人で全てのことをやるのは絶対に不可能だ。RSPCAには何人の人がいる?この仕事を君一人でするのかい?それは無理だよと。確かにそうだ。一人ではどうしようもない。私ひとりではだめだし、獣医だけでもだめ、監視員だけでもだめ。いかに動物愛護や動物福祉に対し理解してもらい、ネットワークをどれだけ広げることができるかそれが一番重要だ。そのためには時間もテクニックも要るだろう。私ができることは何だろう・・・。課題は大きすぎる。インスペクターの養成に関しては、ポールからもらった台湾のコースを参考に、山口先生とも相談して、来年の山口先生のツアーの中でコース作成に関するカリキュラムを入れてもらえるよう相談しよう。特に今回英語の理解不足で十分に物にすることができなかったインタビューテクニックなどはしっかりと研修の中で入れて欲しいと思う。シェルターワークに関しては、安楽死の問題なども含め、今現在の課題を上げ、それをいかに改善できるかという提案をしたいと思う。愛護教育に関しては、資料などを見せたうえで、いかに教育部局との関係を作っていくかというところをポイントにして、今後の展開について提案したいと思う。
やることが山のようにある。時間がいくらあっても足りなさそうである。
今日は午前中で終了。午後からはゆっくり過ごす。
●平成14年9月19日(木)
今日は実際のインスペクター同行させてもらう。非常に楽しみにしていた研修の一つである。朝8時30分過ぎに出発し、ロンドンへ向かう。ビクトリアからビクトリアラインで30分ほど言ったトッテナムヘイルという駅に11時にインスペクターが迎えにきてくれることになっている。
少し早くついたのでしばらく待つ。11時すぎにRSPCAのバンがやってきて、サイモンという男性のインスペクターがにこやかに迎えてくれた。いやいやかなり陽気な青年である。話すことも何とか理解できそうである。どこに行きたいかということだったので、ペットショップに行きたいと伝えた。今日の監視は、ネコがやせているという苦情と、犬がバルコニーにずっといて直射日光があたり避ける場所もないという苦情があるようだった。先ずはネコが飼育放棄されているという苦情の現場に向かう。2台の携帯と1台の無線が車には装備されており、しょっちゅう連絡を取りあっているようだ。現場につくとまず何時何分にどこに着くといった記録を先ずつける。生徒のみんなが1日のスケジュールを常にメモっているのを何をしているのだろうと思っていたが、要は自分の行動を記録するという癖をつけるためのものだったんだということがここで初めてわかった。ここが常に裁判を意識したプロの仕事なんだろうなあ。そして、現場に行く。ここはロンドンの北東地区で、地域的には貧しい地区のようであり、様々な人種の人々が住んでいる地区のようである。市営住宅のような趣の集合住宅で、飼い主は不在だったため、メモを入れていた。この辺りは私たちの仕事と同じようである。ただ、家に動物を置き去りにするといったような調査では、ドアにセロテープを貼っておき、もし次回訪問したときにそのテープがはがれていれば家に帰ってきているということがわかるといったようなテクも使うようである。なるほど!と思った。その後、ロンドンにある先日行った病院とは別の病院を訪ねる。まあ中はほぼ一緒のような感じだろうか。
その後、ネコがやせているという通報に基づき一軒の家を訪問する。中から中年の男性が出てくる。なにやらインスペクターと話しをしていたが、よくわからなかった。その後家に入り階下の庭にいるネコを見る。少し元気がないように思えたが、外飼いのネコとしては特に問題はないように思えた。それはインスペクターも同様で一般的なケア(ブラッシングや定期的な健康診断など)を説明し家を後にする。車の中で、あのネコが18歳であることを教えてもらった!獣医としてどう思ったときかれちょっと躊躇する。私としてはまあ問題ないと思ったが、口にして良いものか迷った。ただサイモンも同じ感覚だったようで、18歳だったらあんなもんだと言った。そしてすぐにサイモンはさきほどのメモに査察結果を記録し、携帯電話でその調査報告を送った。そうしている間にも携帯電話の留守電に数件のメッセージが入っており、査察依頼のものはすぐさまメモをとってファイルに入れている。かなり忙しそうである。
その後車の中で昼食タイムとなる。いつもこうらしい。その時にサイモンが起訴した動物虐待のケースファイルを見せてもらう。1件はロットワイラーのネグレクトである。飼い主が十分は餌を与えていなかったため30キロは通常ある体重が18キロしかなかった。録音した調書をおこしたものがあったのでそれを読んでいると、故意にしたものではなく、やはり貧しさからきているものであった。飼い主はとてもその犬をかわいがっており、手放す意思はないようであり、返して欲しいと懇願していた。結果罰金と社会奉仕を科されることになったようである。日本でこのケースを虐待として告発することはまず難しいだろう。最大の理由は飼い主が故意にネグレクトをしたわけではないからである。日本では非常に難しいケースになるであろう。結局何もできずに終わってしまうような気がする。それともう1点は獣医の診察治療に数十万かかっていることである。獣医が裁判で証拠としてこの犬は通常体重が何キロあるはずが現在何キロしかなく、結果この犬は何ヶ月にわたり十分な餌を与えられていなかったという証明を書くことが必要となる。この犬は現在RSPCAのシェルターで保管されているが、この保管料や治療費は全てRSPCAが負担することになる。日本ではこれらは全て行政の負担となるのであろう。
次に12歳の少年が鳥の足に靴紐をきつく結び、その紐を自分が持って飛ばせていたケースである。この鳥は紐が足に食い込んでいたため足を切断することになり、結局そのショックで死亡してしまった。また調書を見てみると、この少年は施設で暮らしており、数日前にどこからか飛んできて、入れる籠がないため逃げないように紐でくくったようである。後に施設の大人が紐を取り外そうとしたところ、鳥が強くかむのでさわることができず、そのままになっていたようである。これも少年が故意に動物虐待と認識して行ったわけではなく、子供ゆえの無知から行ってしまったことなのである。このケースは14歳以下ということでRSPCAは告発しなかったようであるが、このケースも日本ではかなり難しいケースになるであろう。まず少年であるということ、次にこれも故意でなかったということが理由である。このケースも獣医の治療費に8万かかっており、RSPCAの負担となる。
この2つのケースとも告発を行う場合には、RSPCAのHQの法律相談の部署へ相談し、過去の判例などからこのケースが裁判にもっていっても勝てるかどうかということを調査の上、告発を行っているのである。
確かに動物虐待は無知からくるものが多いように思うが、だからといってこれらのケースが日本でそく動物虐待として告発の対象になるかというと決してそんなことにはならないだろう。だからこそ、我々が動物の痛みに対して見逃さないしっかりとした目と知識を持ち、飼い主に対してそれが虐待なのだと飼い主に理解させ、そして指導により出来る限り改善させるということを行えるプロにならないといけないのだろうと思った。
そして次にアニマルホームに行く。最近リニューアルしたようで確かにこの前いったホームより新しかった。中はまあ同じようなものであった。
ここの駐車場でサイモンに車の搭載品を見せてもらう。捕獲用具、証拠採取用の袋、ケージなどなど入っていた。銃はロンドンの場合車に置いていると盗難の恐れがあるため家に保管しているとのことであった。安楽死用のペントや注射針もあったがやはり静脈に入れるのは難しいらしく腹腔にいれることが多いとのことであった。
そして私の希望であったペットショップに行く。ここでびっくりしたのが、パイソンなどの蛇が無許可で飼育できるということであった!イギリスでもエキゾチックペットは飼育されているようで、日本でみるような蛇、トカゲ、タランチュラなどが販売されていた。
そしてさらに驚いたのが、子犬や子ネコが売られていたことである!イギリスではペットショップでは販売されていないのかと思っていたからだ。そして施設も必ずしもきれいとは言えない施設で日本とそう変わらないものであった。そして店のおやじはやはりこれも日本と同じでやたら愛想がいいが何を考えているのかわからないといった感じで、RSPCAだと名乗るとやたら引っ付きまわって説明を始めた。挙句の果てには、RSPCAはとてもすばらしい!どうして日本にはないのか!とったようなことを言い始め、サイモンも苦笑していた。車の中でサイモンにあの手のペットショップはどうなのか?と聞くと、あのおやじは元ジプシーなのであんな感じなのだという。RSPCAインスペクターは先ずは彼らとよい関係を作りそして指導していきたいと言っていた。どうやらペットショップの許可権限は行政にあり、RSPCAは虐待などの通報があれば査察を行うというような関係にあるらしい。
ただ、あのペットショップのおやじの様子から、RSPCAはかなりこわがられているようである。アニマルポリスという言い方があるが、確かに彼らにとっては動物の警察官のような対象なのだろう。こういうペットショップをイギリスで見ようとは思っていなかったのでかなり勉強になった。どこの国でも動物を扱う商売というのはやくざな商売なのである。
時間になったので、サイモンに何かインスペクターの仕事で問題はあるかと聞いたら、やはりその忙しさを言っていた。緊急の場合24時間対応しなければならないし、土日も拘束されることがあり、もし結婚して家族を持てば家族にストレスがかかるといっていた。そして査察も毎日毎日特に問題のないようなケースが続くとやはり嫌になるよとも言っていた。これは私たちでも同じだ!使命感を持って仕事をしていても、それが日常になるとどうしてもだれてくるのは否めないであろう。
そしてサイモンに駅まで送ってもらう。とても充実した楽しい1日だった。やはり現場を見るという経験は多くのものを吸収できる。できれば2〜3日一緒についてもっと勉強したかったというのが本音である。
●平成14年9月20日(金)
今日から3泊4日でイギリス周遊の旅に出かける。朝5時17分の始発の電車でロンドンに向かう。ビクトリアからタクシーでシスルマーブルアーチホテルまで行く。6時45分頃に着く。ホテルの入り口で待っていると男性のガイドがやってきてバスに乗れといわれる。もう一人日本人の女性がいたが、あとはオーストラリア人やカナダ人、中国系シンガポール人などの外国人ばかり14名のグループとなった。
そしてバスでケンブリッジに向かう。英語はもう少しは理解できるかなーと思っていたが、やはり今ひとつ理解できない。ケンブリッジは大学のまちであったが、滞在時間が短くゆっくり見学する時間がなかた。これがツアーの最大の欠点である。落ち着かないのである。そしてあっという間にケンブリッジを後にしてヨークへ向かう。天気が悪いので寒く感じる。ヨークのまちでは建築様式の話を一生懸命していたが、途中でおなかが痛くなりトイレへ駆け込む。当然出てきたら誰もいなくなってしまった。仕方ないので一人でヨーク大聖堂などのみどころを見て回る。やはりツアーは時間が気になってゆっくりと楽しめない。といいつつキャバの置物を買う。高かった!!
帰り道で日本女性と話をする。大阪から来た29歳の女性だ。一ヶ月旅行をしにイギリスに来たらしい。
そしてダーリントンへバスは向かう。ダーリントンといえば5年前NCDLに行ったときに滞在しており今回が2度目だが、問題はホテルである。あのホテルだったら何か呼ばれているのではないかとかなりドキドキしてたが違っていたのでかなりほっとするも、ガイドさんがホーンテッドマンションだと言っていたのを聞き漏らせなかった!!ダーリントンはそういうホテルばっかりなんだろうか。ありがたいことになんでホーンテッドマンションなのかという理由は英語が理解できなかったのでわからなかったが、シンガポールの女性はかなりこわがっていた。夜は8時から食事で、日本人の女性の部屋に泊めてもらった。一人ではきっとこわすぎると思ったからである。あーよかった!!
●平成14年9月21日(土)
今日はいよいよスコットランドへ行く。朝7時45分に出発する。風景も平原と羊だらけになり雰囲気も高まってくる。途中スコットランドとイングランドの境界でバスを降り、写真を撮るがかなり寒い!!そしてウール製品のお店でセーターを買う。
そしてバスは一面緑の平原と羊さんの中を通り、昼ごろにエジンバラに到着する。そしてガイドが変わり、スコットランドの衣装をきたガイドさんだった。みんなでエジンバラ城へ行く。ガイドさんはとてもおもしろい人で、ブレーブハートの話をかなりしていて楽しかった!エジンバラ城はどちらかというと要塞といった感じの強い城だった。そしてその後自由行動となったのでまちを回ることになった。こども博物館に行き、ホリールード宮殿に行く。このあたりで時間切れ。あと1日は欲しいところである。夜はオプションで食事とバクパイプの演奏である。バスで30分ほどのところにあるパブとレストランで2つの橋がかかっており夕暮れの風景とあいまって非常にきれいであった。食事は30分程度待たされ、その間にパブで飲んでいたおっちゃんにとっ捕まり、飲みたくないのみワインを2杯も飲まされた。食事はかなりおいしかった。量が多かったのでちょっときつかったけど。そうそうハギスというスコットランドの地方料理を食べる。たぶん観光客用にかなりくせを抜いているのだと思うが、要は内臓肉を使った肉団子のようなもので、最初の一口は少しくせがあったのでげっと思ったが、2口目からかなりおいしく食べられた。
ホテルはエジンバラに似つかわしくないイタリアンモダン風なホテルであった。
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平成14年9月22日(日)
今日はエジンバラからチェスターに向かう道中となる。途中で駆け落ち結婚のメッカであるグレナダグリーン(だったけ?)に立ち寄る。日本人団体客も多いらしく日本語の解説がありかなりよく理解できた。要はイングランドで教会のお許しがもらえないカップルがスコットランドに逃避行しここで結婚したという場所らしい。結婚業が衰退したので観光業にシフトしたといったところか。
そして次に湖水地方へ行く。グラスミアという湖水地方のまちでバスを降り、湖まで散策する。天気も回復し確かにきれいであるが、まあ日本でもこういう景色は見ることができそうである。犬をつれた人がたくさんいた。どちらかというと、ゆっくり数日滞在して、ハイキングを楽しむようなところであろう。観光で来るところではないようである。
そしてチェスターのホテルに向かう。郊外のホテルであった。電気がつかないという問題が発生したがホリデイインなのでまあホテルらしいホテルであった。
夕方またまたオプションに参加する。まずは羊さんに餌やり。途中で運転手さんが何かを買っていたのだがこれがパンで羊さんにあげる餌だったようだ。こんなもの勝手にやっていいものか迷ったが、観光客ぶってあげることにした。そしてパブに行き、ビールを飲んだ。アルコール度数はそんなに高くないようであり、味も薄いのだが癖があった。
そしてなぜだかわからないがラブスプーンを売っているお店へ行った。ツアーで行くとこういうわけのわからないお店に連れていかれてしまう。お店のおっちゃんはやたら愛想がよく、ラブスプーンの説明をしていたが、ラブスプーンはウエールズのものではなかったかい?英語だったから余計になんだかよくわからないオプションであった。
夕食はホテルで食べた。毎度同じようなものがでてきた。オーブンで焼いたハムにゆでた野菜とグレービーソース。これが典型的なイギリスの料理なんだろうなあー。味はまあそこそこだから許せるのだが。
●平成14年9月23日(月)
旅行も4日目になるとかなり疲れがたまってくる。朝はチェスターのまちを散策する。またまた建築様式の話をしていたが、疲れているせいか頭に入れる元気がない。ぼーっとして写真だけ撮って歩いていた。次にウエッジウッドの工場へ到着。今回楽しみにしていた訪問先の一つである。まず最初に工場見学から。日本語ガイドもあったが、買い物に時間を費やしたいので足早に見学を済ます。そして買い物だが、思ったより種類が少なかった。値段は日本と比べて3分の2程度とそんなに割安感もない。まあせっかく来たのだからということで、ペンダント2個とタイピンを購入した。ロイヤルコペンハーゲンの方がガイドツアーも楽しく、製品も種類が豊富で値段も割安感があり、日本にないものも売っていたような気がする。ちょっと期待外れだった。
そしてバスは最後の目的地ストラスホードアポーンエイボンへ。シェイクスピアにはほとんど興味がないので、買い物に時間を費やすことにする。キャバの絵を発見し、ちょっと高かったがかなりかわいかったので思い切って買った。そして荷物が増えたのでリュックを購入した。そしてバスはコッツウオルズのまちを通り6時前にロンドンビクトリアに到着する。
楽しかったが疲れた。一人ではこの日数でまわり切れないだけの所に連れて行ってもらったが、やはりツアーは時間的な制限が多いので未消化のところも多々あるし、自分のペースではないのでその分疲れた。明日はゆっくりしよう。
●平成14年9月24日(火)
今日は山のような洗濯をして、後はゆっくり過ごした。
●平成14年9月25日(水)
今日はRSPCAに訪問する最後の日である。9時30分のバスで向かった。ポールは既に来ていた。電話してから来るのかと思ったと言われた。そんな約束したっけなあ・・・。やはりちゃんと聞き取れていなかったんだなあ。
そして最後の目的であるインスペクターへの質問であるが、ケビンをはじめ主要なインスペクターはボートとロープレスキューの訓練に行ってしまったので、残ったインスペクターとマンチェスターから来ているインスペクターの人にすることになった。が、ポールも心配してくれたがかなりしゃべるスピードが早くてほとんどわからなかった。ポールがフォローしてくれたが、それでもついていけなかった。ゆっくり話して!って言えばよかった。ここでもインスペクターの問題点を聞いたが、うまく伝わってなかったのか、後でポールに何を聞きたかったの?と言われてしまった。ただ、インスペクターの話とポールの話を総合するに、最近のインスペクターはテレビ番組の影響もあり、かなりハードなようである。そしてポールが言うには、やはりかなりストレスのかかる仕事であるということだ。5〜6年でやめてしまう人もいるらしく、ノッキングドア(家庭訪問)はやはりストレスがかかるということだろう。ただ、毎日が変化のある仕事だから、その点はいいんじゃないの?とも言っていた。
そしてポールとのお別れである。この人はいままで日本でも見たことがないほど、穏やかで優しい人だったように思う。感謝意外に言葉がない。もっとちゃんと話がしたいと思う。そのためには英語をもっともっと話せるようになりたいと思う。来年来ることになるのかなあー。もしそうなれば今度はもっと話せるようになっていたい。
RSPCAでの3週間は今まで生きてきた中でも数本の指に入るほど貴重な経験をすることができた。この経験を与えてくれた全ての人に心から感謝したいと思う。そして必ずこの研修を役立てるよう最大の努力をしたいと思う。
昼からはクルーリーのモールへ買い物にいく。キャバとボーダーのカードを購入する。
●平成14年9月26日(木)
今日はリーズ城へ行くことにした。ツアーも考えたが、この前のでしばらくは避けたくなったので一人で行くことにする。行き方は前日に駅で聞いていた。といきなり最初の駅で来るはずの電車がキャンセルになり1時間のロスがでる!そのあとロンドンブリッジからベアステッド駅に向か電車のホームが最初聞いていたものと違ってばたばたしたが、まあ何とかベアステッドに着いた。やはり怪しいと思ったら聞かなければ。バスは電車とバス、入場料が全てついたものだった。バスで10分ほど行きリーズ城につく。非常に広大できれいな公園の中に、これまたきれいな城が建っており、なかなか素晴らしいものだ。城の内部は現在でも使用されているようだが、椅子や調度品なんか使って壊したらどうするんだろうと思ってしまった。後はガーデンと鳥の展示があったりした。少し寒かったので、もう少し暖かいときにきたら公園でボーっとするのもいいんじゃないかと思う。4時にリーズ城を後にし、今度はロンドンビクトリア経由で帰ってきた。非常に疲れたが、なかなか良かった。電車の乗り方も何とかわかってきたところで帰国である。
●平成14年9月27日(金)
今日はまたまたゆっくり過ごす。ホーシャムのまちも見納めである。宿への帰り道でキャバに会う。思わず声をかけ触らせてもらった。早くねねに会いたい!
●平成14年9月28日(土)
ホーシャムを後にする日である。朝8時に起床。いつものとおりのトーストとゆで卵と紅茶の朝食をとる。そして部屋代の支払いなどを済ませ、10時30頃にジュディーに車で駅まで送ってもらった。本当に親切な人たちだった。今回たくさんの人に親切にしてもらった。決して忘れないで私がやれることを精一杯やろうと思う。
10時49分のロンドンビクトリア行きの電車に乗り込む。スーツケースが重くて駅員さんや通りがかりの人に助けてもらう。本当にありがたい。日本ではこんなにすっと助けてもらえるだろうか。本当にホーシャムともお別れである。心からありがとうと言いたい。
1時間でビクトリアに到着。タクシーでマンダリンオリエンタルホテルに向かう。チェックインは済ませたものの部屋の準備ができていないということで、荷物をあずけ、ハロッズに買い物に行く。何気なく歩いているとバーバーリーの犬柄スカーフを発見!!これがまた離れがたいほどのかわいさである。後ろ髪をひかれながらも、とりあえず買うべきものを買うべくクリスマスコーナーとハロッズワールドに行き、おみやげを買う。
その後、おなかがすいたので、かねてから行きたかった八ロッズの中のレストランに行く。ピアノの生演奏があったりなかなかの雰囲気であったが、なぜか横の席が日本人になるのでなんとなく嫌である。ここまできて日本人の会話を聞こうとは・・・。それも外国で会う日本人ほど怪しいものはない。という私も一人でうろうろしてそうとう怪しいのかもしれないけれど。
そして2時を過ぎたのでホテルに戻る。先ずはフロントの男性がフロアまで案内してくれる。そしてフロアマネージャという男性に引き渡され、その男性が部屋まで案内してくれた。そしていざ部屋に入るとびっくり仰天!!なんと豪華な部屋なんだろうか。ロンドンのホテルは高いので一泊3万8千円とはいえ期待していなかったのだが、これがまた、リッツカールトン以上の豪華さである!!あまりの快適さにそのまますぐに出かけようと思っていたのを取りやめしばし部屋でくつろぐ。RSPCAのビデオなどを見てしまった。
そして5時をすぎたので歩いてピカデリーに向かう。イラクへの攻撃を反対するひとたちのデモ行進にぶちあたったので迂回しながらグリーンパークの中を歩いてピカデリーサーカスに到着。ハロッズになかったキャバの置物をさがしにロイヤルダルトンを探すも地図に書いてあるところになかった。仕方ないので太郎でカツ丼を食べた。店はものすごい混雑ぶりである。やはり日本人より外人が多くてそういう意味でもこの店は結構気に入った。前の亮とは大違いである。
そしてハロッズに戻り、後ろ髪をひかれていたスカーフを思い切って購入してしまった!完全に衝動買いである!
そしてホテルに戻り、RSPCAのビデオの続きを見たりして過ごしているうちにうたたねしてしまったが、バーの大音量の音にうなされて起きてしまう。音だけならまだしも床が響いて非常に不快であったため、思わず苦情の電話をしてしまった!スペインなまりの英語の女性が応対してくれたが、あと15分(もしかしたら50分だったのかもしれないが)したら静かになるから我慢してくれと言われた。せっかくの気分も台無しである。目もすっかり覚めてしまったのでパソコンをしたり、お風呂に入ったりした。日本はもう朝である。
いよいよ明日イギリスともお別れである。お金も休暇も使い果たしたが、最高の経験をさせてもらった。
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