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1 はじめに
 2000年3月28日に生まれたキャバリアKCSのねねも3歳になりました。3歳になったねねは、大人になり、身体的にも精神的にも今が一番安定し、落ち着いた状態なのだと感じています。
散々苦労しましたが、2002年11月に、優良家庭犬認定試験(CGCテスト)にも合格し、私とねねとの関係も、ゆるぎない信頼関係で結ばれていることを確信しています。正直、犬とここまでの信頼関係を結ぶことができることに、うれしい驚きと幸せを感じています。
Knotsのご好意により、ここに今現在に至るまでの、ねねとの生活を綴らせていただきますが、私自身は、犬と飼い主の関係は、犬と飼い主の数だけあると思います。だから、ねねと私の日々を綴ったこの日記は、あくまでも犬と飼い主の関係の一つの例にすぎませんが、これから犬を飼う人が、犬との生活ってこんな風になるのかなーなんて想像していただくための一助となり、現在犬との生活を送っていらっしゃる方には、そうなんだよねーなんて共感していただける所があればとても嬉しく思います。
   
2 なぜ犬を飼おうと思ったのか?
 犬を飼おう、そう思ったのは1999年の夏ごろです。2年ほど前から犬のしつけの勉強を始めていて、そこで勉強したことを実際にやってみたいという気持ちになったというのもあったけど、ここ何年かでいろいろと自分なりに見聞きし、いろんな犬と飼い主さんを見るにつけ、もう一度犬との生活を始めたい、今なら犬との生活をもっと楽しめるのではないかと思ったからです。
   
3 キャバリアにしたわけは?〜犬とどんな生活を送りたい?〜
 飼うと決めたら次に考えたのは犬種です。犬とどんな生活をしたいかと考えたとき、まず最初に思ったのが“どこでも一緒に行きたい!”“いろんなことを一緒に経験したい!”という事でした。そして、できれば一緒に福祉施設などへの訪問活動といったボランティアもできればいいなあ、なんて考えました。
そこで、犬種の性格と大きさが大きなポイントとなりました。性格は、少なくとも、本能的に人や他の犬に対してフレンドリーであること。そして、大きさは連れ歩くのに困らない程度の大きさ。キャリーバックに入る大きさでないと、街中では苦労しそうだなと考えました。そして、共働きという環境のため、大型犬では毎日十分な運動をさせてやる自信がなかったのと、自分の好みで中型犬クラスにしたかったという理由から、キャバリアをチョイスしました。
もちろん、キャバリアをチョイスするにあたり、雑誌や本やインターネット、あらゆる媒体を調べ、犬種の歴史、スタンダード、遺伝的に気をつけなければならない疾患などなど、自分で言うのもなんですが、かなり真剣にお勉強しました。
   
4 どこから手に入れる?〜ブリーダーさん選び〜
 いわゆる“純血種”の犬を手に入れるのはペットショップがまだまだ一般的だと思います。ただ、犬としてとても大切な時期をペットショップで過ごすことが子犬にとってベストではないことを私自身が知ってしまった以上、やはりペットショップから犬を得ることはできませんでした。
 そして、“ブリーダーさんから犬を入手する”こと、それも信頼できるブリーダーさんをみつけるということも、私にとっては始めての経験であり、チャレンジでした。
ただ、これが結構大変でした。ブリーダーさんを選ぶにあたり最低の条件としたことが、(1)犬舎を見せてくれるところ、(2)キャバリアの専門犬舎であるところ、この2つでした。まずは、雑誌のチェックやドッグショーに行きましたが、どちらも決め手に欠け、思うような出会いはできませんでした。次に、インターネットのキャバリアのサイトをいろいろと見ているうちに、ねねを紹介してくださったブリーダーさんのサイトに出会いました。キャバリアを心から愛して、自分の犬たちに自信を持っているのが、十分に伝わってきました。自分の中でこれだ!と直感したため、メールを出すことにしました。
 キャバリアの心臓疾患は遺伝病として十分に気を付けないといけないため、ブリーディングに際しどういう対応をしているかということと、犬舎を見せて欲しいことを伝えたところ、すぐに丁寧な返事が届き、1999年の12月の下旬に犬舎をたずねることになりました。
東京の郊外にある犬舎は、自宅の1階の一部分を改造して犬のお部屋になっていました。実際にブリーダーさんにお会いし、犬たちを見せてもらい(言うまでもなく犬たちは大歓迎してくれました!)、ここの犬たちから生まれる子犬なら何もいうことはないと自分自身で確信することができたため、次に生まれる子犬をもらうことで一応約束をしました。犬を飼おうと決めてから約半年。やっと自分の中で犬を飼うということが現実となり少しだけ安心しました。
 
5 自分の好みの犬を選ぶということ
 ブリーダーさんとは、その後メールのやりとりを続け、キャバリアについていろいろと教えていただきました。2000年の3月下旬に3頭の子犬が生まれたという連絡を受けたため、私が飼いたいキャバリアのタイプを伝えました。まず雌であること。これは、単なる好みの問題なのですが、以前にブリーダーさんから、キャバリアは雌の方がより八方美人だというのを聞いていたので、どうせキャバリアを飼うなら、とことん愛想が良いやつにしようと思ったからです。次に、体格ですが、私自身が華奢なキャバリアよりどちらかというと、がっしりとしたタイプのキャバリアが好きだったので、できればそういうタイプを希望することを伝えました。そして性格ですが、同じ犬種とはいえ兄弟の中でも性格が異なるので、神経質でもシャイでもなく、かといってあまり強気すぎるタイプも避けたいという、かなり贅沢な希望を伝えました。これらの希望に対し、今回生まれた子犬は小さめであることと、すでに子犬を欲しい人が多くて、子犬のチョイスは先着順に決まってしまうため、子犬の性格判断ができる頃には新しい飼い主が決まってしまい、現時点で性格を把握するのは難しいとのことでした。自分の好みの犬を選ぶという事の限界を少しだけ感じました。
でも、ブリーダーさんより知人のブリーダーさんで生まれた子犬が骨量も多く、私が希望する犬に近いのではないかという連絡を頂いたため、ここは全てをブリーダーさんにお任せすることにしました。ブリーダーというのは、その犬種を愛し、その犬種のスタンダードを守ることに心血をそそいでいらっしゃる方であるから、素人があれこれ言うよりも、自分の希望を伝えるだけ伝えた後は、信頼してお任せしようと思いました。
そして、ブリーダーさんに出会ってから5ヶ月間。犬を飼おうと思ってから9ヶ月、思ったよりも時間がかかってしまいましたが、やっとねねとの出会いの日を迎えることになりました。
 
6 ねねとの出会い〜私はこの日を一生忘れることはないでしょう〜
 2000年5月29日、初夏を思わせるようなとてもよいお天気の日に、ねねは1頭で東京から飛行機に乗ってやってきました。長旅で疲れているだろうと思いきや、私の顔をみたとたんに、クレート越しにしっぽをふりふりしてくれました。車の中で、クレートから出したとたんに、ここが私の場所だといわんばかりに私の膝にのって、しっぽをふりふりして顔をなめにきました。“なんて人なつっこいんだろう”と感動しました。
 とても幸せな気持ちと、育てていく責任とが入り混じって、とても興奮していたことを今でもしっかり覚えています。
 
7 我が家の一員となる
 ねねは何の問題もなく、すぐに我が家に順応しました。肩に力が入っていたのは私だけで、ねねはまさしく“天真爛漫”という言葉通り生活していたように思います。私が仕事を持っていたため、今でもそうですが、朝実家に預けに行き、夕方(夜になるときもありますね)に迎えにいって、一緒に家に帰るという、いわゆる人間の子どもでいうところの“保育所生活”を送らせることになっています。
犬は群で暮らす動物なので、できるだけ1頭でいることを避けたかったので、犬を飼おうと思った時から、こうすることを決めていたし、実家の両親にも相談して承諾をもらっていました。今の日本では、“犬の保育所”のような施設はほとんどありませんし、お仕事を持っている方の中には、心配ながらも犬を1頭でお留守番させている人も少なくないと思います。そういう意味で私はとても恵まれた環境にいるのだと感謝しています。ただ、この1頭にさせないという私の思いが、後々、ねねの分離不安の傾向を強くさせてしまうことにつながっていったとも言えるのです・・・。
 
8 一番苦労したのはトイレトレーニング
 子犬時代は、とにかく寝て食べて遊んでの繰り返しです。ねねはこちらが驚くほど愛想が良く、好奇心旺盛で、神経質なところも全くなく、パーフェクト(?)な子犬でした、ただ一つトイレをのぞけば・・・。
 今思うに一番の敗因は場所。トイレシーツの上ですることはすぐに覚えましたが、サークルの中にクレートとトイレを置いていたのですが、ねねにしてみれば、サークルの中に入れられること自体が嫌だったようで、自ずとサークルの中にあるトイレを避けるようになってしまいました。それと子犬の頃はトイレが遠くにあると間に合わないようで、別の部屋にいるときなどは失敗しやすかったようです。そして何より飼い主である私の失敗させないようにという思いが強くて、いつもハラハラしてねねを見ていたし、ちゃんとできたときに大きな声で喜んだりしたことが、ねねにとってはとてもプレッシャーになっていたようです。今でも家では、トイレをするところを見られていたり、トイレのある部屋に誰かがいるときは、ちょっと嫌そうにトイレをします。そんなねねを見るにつけ、申し訳ない気持ちになります。
 
9 パピーパーティに参加する
 そんな悩みを抱えながら、ねねが生後2ヶ月半を迎えた頃、パピーパーティに参加しました。パピーパーティは、犬にとってとても大切な社会化期である2〜3ヶ月の頃に、1回目のワクチンを打った健康な子犬が集まって、社会化期の犬に必要な、他の犬たちと遊んだり、家族以外の人たちと接したり、飼い主のお悩みに先生が答えるといったような形式で行われているもので、多くの場合、動物病院で行われているようです。
人間で言えば、赤ちゃんの“○ヶ月検診”のようなものと考えていただくと良いのではないかと思います。
 まず、カルテを記入し、それぞれ今悩んでいることを話すことになりました。トイレはみんな悩んでいるようで、そういうのを聞くと自分だけじゃないんだと、何だかほっとしました。先生から、いろいろとアドバイスをいただき、私自身も悩みを話すことで、頭の中がすっきりしました。あまりプレッシャーを与えないで、もっと自然にさせてあげるのがいいんじゃないかと思えるようになりました。好きなところでやればいい、最終的にどこに落ち着くのかはねねに任せようと思いました。
 そして最初は部屋ごとにあったトイレでしたが、段々大人になるに連れ、少なくなり、結果的に一箇所に落ち着いたのは2歳になった頃でした。かなり時間がかかってしまったのかもしれませんが、私としてはまあこんなものではないかと思っています。
そしてパピーパーティの終わりの方で、参加した犬たちと遊ぶ時間がありました。最初は少し怖がっていたねねも最後の方はみんなに混じって大はしゃぎしていました。今でもそうですが、そんなねねを見ていると、本当にこっちも幸せな気持ちになります。
 
10 パピークラスって?
 そしてパピークラスに参加しました。パピークラスはその名のとおり子犬のしつけ教室です。ねねは3ヶ月になる少し前から週1回ごとに8回通いました。今振り返ってみて、パピークラスを受けてよかったことは、ねねが他の犬との付き合い方を遊びを通して勉強できたこと、みんなと一緒に勉強したり、宿題をいただいたりすることが“励み”になったこと、そして他の飼い主さんや先生とお話しする中で、いろんなアドバイスをもらえたことです。ねねにとっても、しつけ教室に通う中で、電車に乗ったり、いろんな人に会ったり、いろんな物音を聞いたりすることが、とても良い経験になったと思います。
 
11 不妊手術について
 ねねは11ヶ月のときに受けました。本当は半年くらいでやろうと思っていたのですが、あまりにまだ子どものような気がして、躊躇しているうちに1回目の発情が来てしまい、それが落ち着いてからと思っているうちに遅くなってしまいました。おそらく飼い主さんによって考え方はまちまちだと思いますが、私は犬を飼おうと思ったときから、不妊手術は受けようと決めていました。その理由の一つが、ブリーディングはブリーダーさんに任せた方が良いと思っていたからです。特にキャバリアは、心臓疾患や膝の関節など遺伝的疾患が多い犬種です。そんな難しい犬種を、素人が何の知識もないままに交配させて、生まれてきた子犬たちに、もし遺伝的疾患があった場合、とても責任が取れないと思ったからです。そしてブリーディングをさせる気がない以上、もともとある生殖本能を残したまま、それを犬に我慢させるのは、かえって可哀想だなあと思いました。また、子宮や乳腺などの生殖関係の病気の発生を抑える効果があるというのも理由の一つです。それと、これは飼ってから実感したのですが、年2回家が血だらけになる手間から解放される!ということもありました。
 とは言え、麻酔をかけて、おなかを切るなんて思うと、やはりかなり心配でした。1日入院して戻ってきたねねは、やはりちょっとつらそうで、そんなねねを見ると、何だか申し訳ない気分になりました。でも、犬って本当に強いですよね。人間がおなか切ったら1日で退院なんてできませんものね・・・。
 
12 しつけについて
 生後6ヶ月を迎える頃から成犬クラスに移りました。現在も週1回1時間のレッスンを受けています。しつけの方法は現在家庭犬のしつけの主流である“陽性強化”によるもので、犬がして欲しい行動をしたときに、褒めてごほうびをあげることにより、その行動を強化していくという考え方に基づいたやり方です。
 しつけの基本である“アイコンタクト(飼い主と目を合わせる)”“おすわり”“ふせ”“まて”は、パピークラスでやっていたので、成犬クラスでは、これらをいつでもどこでもできるようにすることや、さらに“飼い主の横につく”“引っ張らずに飼い主について歩く”“ハウストレーニング”等、日常生活において必要だと思われる事を勉強しました。
 しつけ教室に通って感じたことは、“しつけは一日にしてならず”ということと、そして、“飼い主と犬との関係”は、犬と飼い主の数だけあるということです。上で述べたような、日常生活において必要なしつけの項目自体は、今となってみれば、基本的にそう難しいものではないような気がします。これらの項目は犬が本来持っている本能の部分を上手く引き出すことで、犬自身にとってもそう無理なく学習していけるのではないかと思います。問題は、飼い主が、犬という生き物を理解し、さらに自分と自分の犬の関係を十分に理解した上で、自分達に合ったやり方を見つけることができるかという事なのだと思います。
 そういう意味では、しつけ教室に通うことで、単にいろんな事ができるようになるというだけでなく、犬と飼い主双方が他者を理解しようとがんばる課程を通じて、両者の信頼関係がより強まるのではないかなと私は思います。
 
13 めざせCGC合格への道
 犬を飼おうと思ったときから、一つの目標としてあったのが、この“CGC(Canine Good Citizen)テスト”の合格です。平たく言うと犬のお行儀テストと言っても私は間違いではないかなーと思いますが、要するに犬が人間社会に受け入れられるだけのマナーとしつけを犬と飼い主の双方が持っているかどうかのテストです。
 ねねは、1歳になってから受け始め、1年7ヶ月かかり、回数にして8回目にようやく合格しました。記録を作ったのではないかなあと思っています・・・?!敗因は2つ。1つ目はねねのシャイな性格。飼い主の緊張がうつってしまったり、周りの人や犬に圧倒されて“こわい”と思ってしまったら、フリーズして、動けなくなってしまいます。だからいかにねねのテンションを落とさずに飼い主である私がねねをリードしていけるかというのがポイントだったように思います。そして2つ目ですが、クレートでお留守番という項目です。クレートの中で10分間1頭でいるというテストで、もちろん飼い主は部屋から出ていきます。先に書きましたが、最初は1頭でいることができず、外出先では私の姿が見えなくなると追い鳴きをしたり、家でさえ姿が見えないと探しまわっている状態でした。そんな中、“クレートを大好きにさせる”ことと“待っていればちゃんと飼い主は戻ってくることを理解させる”ことを練習しました。と簡単に書きましたが、本当に苦労しました。今でも、やはりまだ1頭でいることは苦手です。クレートでのお留守番もかなりできるようになっていますが、それでもまだ苦手な方だと思います。
 このテストでも、飼い主の犬の数だけウイークポイントがあるのだと思います。飼い主と犬のそれが何かということをわかった上で、どう対処できるかが合格のポイントなのでしょうか。でも、はっきり言って合格しやすい犬種っていうのもあるような気がします・・・。7回も落ちた私にはえらそうな事はあまり言えませんが、しつけのお勉強の一つの目標としてがんばれたし、合格したときの喜びは格別でした!私の喜びと同じだけねねも喜んだどうかはわかりませんが・・・?
 
14 今そして未来〜一緒に幸せになろうね〜
 3歳になった今も、ねねは変わってきています。半年ごろから少しずつシャイな傾向が強くなって、人見知りが激しくなっていたのですが、最近は、かなり寛容になってきて、他人に対してもしっぽを振って自分からあいさつに行くようになってきました。年を経て、精神的に大人になり、周囲の状況をねねなりに理解でき、それに対応できるようになってきたせいかもしれません。そんな発見がある度に犬との生活はおもしろいなと感じています。
 ねねとの生活はまだまだ始まったばかりです。これから年を経るにつれ、いろんな事があるでしょうが、何があったとしても、私たちはお互いに頼りあい、助け合って生きていけると思います。家族であればそれは至極当然のことであり、今の私には、飼い主の責任や義務といった言葉に違和感すら覚えます。
 ただ、いつも忘れてはいけないなと思っていることは、今の社会における犬と人間の“ものさし”です。犬を飼っている私たちはともすれば、自分たちの“ものさし”が正しいと思いがちですが、今の日本の社会はまだまだ犬が受け入れられているとは言えない状況です。だからこそ、犬を飼っている我々が、家族としての犬と人間が社会に受け入れられるように周りにも配慮し、人と犬との良い関係を作り、それを社会に対してアピールしていくことが、社会と私たちの“ものさし”を近づけることになると私は信じています。
 私に素晴らしい生活を与えてくれた多くの人たちに感謝しながら、これからもねねと一緒に楽しく生活していきたいと思っています。
 

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