平成28年度 大村市人権教育講演会 報告

平成28年度 大村市人権教育講演会

●主催:大村市教育委員会
●日時:平成28年8月18日(木) 14:00-16:10
●場所:さくらホール
●内容:生きものとのふれ合いを通じた命の教育
●対象:大村市内小・中学校教員および保護者
●講師:柴内裕子先生
   ・公益社団法人日本動物病院協会 相談役
   ・赤坂動物病院 総院長
   (*公益社団法人Knots アドバイザリーボードメンバー)
●演題:「動物との正しいふれあいから命に気付く介在教育 Animal Assisted Education (AAE) 」

 

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溝江宏俊大村市教育長

 夏休みの1日、会場は、400名の学校の先生方で満席でした。これだけの数の先生がお集まりになり、動物介在教育について知見を深められるような講演会は、日本でもあまり事例がないように思います。大村市教育委員会の主催で、溝江宏俊大村市教育長のご挨拶から始まりました。「温もり、心の豊かさ、人を受け入れる社会」といった長崎県の人権教育のキーワードをご説明になり、確かな育ちに資する取り組みとしての人権教育、命の尊さを伝えていくには、学校が一丸となって取り組むことの重要性に言及され、ご挨拶とされました。学校教育課 丹野平三課長より、自他の人間性を確かにする教育としての動物介在教育への期待と講師の柴内先生のご紹介があり、講演が始まりました。

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柴内裕子先生

 柴内先生は、何度かご紹介している通り、大村市に日本最古の犬の墓石のある大村藩家老小佐々市右衛門前親のご子孫です。また、大村藩が派遣した天正少年使節の4人の少年の一人・中浦ジュリアンのご子孫でもあります。大村との縁をご紹介されると、会場からは驚きの声が上がりました。
詳しくはこちら(http://knots.or.jp/corporation/2016/01/nakamaru-seminor-20160110/)

また、日本で最初の女性の開業獣医師でもあられ、その生き方にも、多くの関心が寄せられました。

 

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講演風景

 講演では、身近な動物や自然から命の大切さに気付く重要性をお話になり、教育の場に動物たちを介在させる意義をご説明になりました。犬と猫の伴侶動物としての人間との関わりの歴史、伴侶動物と呼べる動物の条件(人と長い歴史を歩んでいる、習性や行動が熟知されていてしつけができる、人との共通感染症が解明されている、家族としての処遇が受けられる、陽性強化法でしつけをされ、社会化されている)、野生動物・家畜・伴侶動物の何れからも教育にメリットがあること、AAA(動物介在活動)、AAT(動物介在療法)、AAE(動物介在教育)の用語と説明など、次々とお話を進めていかれます。続いて、Human Animal Bond の歴史と概念の解説、IAHAIO リオ宣言における動物介在教育のガイドラインを中心にご説明されました。

その後、人が共に暮らす伴侶動物から受ける恩恵についても、「動物と触れ合うと前頭葉の血流が増す」「農場で育つ、兄弟が多い、ペットと暮らすといった子どもはアレルギー性の喘息や花粉症が少ない」等の世界での研究成果をご紹介されました。子どもについて、「規則的な生活、言語の発達、優しさの表現、温もりを体感、責任感、知的発達、ストレスの軽減、優しい男の子の成長と勇気と決断力、登校の促進、注意欠陥多動性障害や行為障害への好影響」などについてご紹介され、特に、10歳までの脳の発達期に体感・体得の教育の機会の重要性を強調されました。

 公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)のCAPP(Companion Animal Partnership Program)は、1986年5月から始まり、2016年5月までで、訪問回数は、18,281回です。

訪問されている場所:高齢者施設 270箇所、医療施設(小児病棟含む)46箇所、心身障害者(児)施設60箇所、児童関係施設(含学校)81箇所、

参加獣医師:25,978人 参加ボランティア:139,697人 参加犬:104,984_頭、参加猫;21,805頭、その他(ウサギ、モルモット等):7,105頭

アレルギー・事故の発生:0件

ご紹介の際、「社会的責任の持てない人々やグループが行ってはならない」ということを強調されました。大変厳しい基準を元に活動されているからこその積み重ねと思います。

引き続いて、CAPPによるAAEプログラムについて解説されました。訪問学校の先生と事前に打ち合わせをし、訪問前後のアンケートもご依頼し、成果を確認されています。実際に伺う前には、人も動物もしっかりと健康チェックをして、子どもたちの側も、動物に対するアレルギーの有無や怖いなどの気持ちも確認して、それぞれに合った授業の取り組みも工夫されています。プログラムは、先生のご要望や対象学年により多様なものが用意されています。最後に日本では特別養護学校の子ども達に活用機会があると考えられるREAD DOG (犬への本の読み聞かせ)についてもお話がありました。三鷹市立図書館でもこの秋から、READ プログラムを導入されるそうです。こちらは、図書離れ・読書力の低下を補うことを目的としています。

動物介在教育についてのベースをお伝えされた中身の濃いご講演で、先生方は、真剣に耳を傾けておられました。

 

講演の後半では、実際に4人の子ども達に舞台に上がって貰い、最も基本的な動物介在教育プログラム「犬を悪ものにしないために」のポイントをデモンストレーションでご紹介されました。

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開演当初より、2頭のワンちゃんは、最前列のお席で、静かに講演を聞いていました。2頭の入場の際には、先生方から「わあーっ」と声が上がり、「かわいい」「おりこう」と先生方の注目度は大変なものでした。舞台上では、2頭のワンちゃんがオスワリ・マテをして、飼い主さんが離れていくのですが、その段階で、「おお~」と感嘆の声。「おいで」と呼ぶと走る姿にまた「おお~」。アイコンタクトにも「おお~」。飼い主さんと犬との絆を実感し、会場には温かい雰囲気が満ちていきます。それから、「大声をあげない」「突然走らない」「突然さわらない」という3つのお約束、飼い主さんと一緒のワンちゃんを触らせてもらう時の飼い主さんへのご挨拶やグーを作ってのワンちゃんとのご挨拶とふれあいの後のお礼のご挨拶、触ってはいけない時のクイズ、一人歩きしている犬に出会ったら木になろうといった、正しいふれあいの方法を伝えていきます。実際のプログラムでは、ここで、グループを作って、すべての子ども達がふれあいをします。

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大村市教育委員会 遠藤雅己政策監

その後、ハートサウンド(拡声器付き聴診器)で、代表の子どもの心音を聞き、その子に縄跳びをしてもらって心音の変化を確認します。また、犬の心音も聞きます。生き物には心臓がひとつしかなく、命もひとつであることを体感してもらいます。

そして、子ども達から質問を受けて終了です。

最後に、大村市教育委員会 遠藤雅己政策監より、ご自身のご愛犬との関係もご紹介されながら、柴内先生への感謝の言葉があり、動物介在教育についての講演会は終了となりました。会場には、とても穏やかで温かな雰囲気が残りました。

 

大村市立萱瀬小学校における動物介在教育

「育ちゆく子供たちと動物とのふれあい」(犬を悪ものにしないために)
●日時:平成28年8月19日(金)10:20-11:20
●場所:大村市萱瀬小学校 体育館
●対象:小学校1年生~6年生

 

 翌日は、実際に小学校を訪問してのAAE実践です。岩本昌弘校長先生からご紹介があると、子ども達は、ワンちゃん達の登場にワクワクです。萱瀬小学校は、明治時代に創立された、100年を超える歴史のある小学校です。子ども達は、とても元気で礼儀正しく、終了後の片付けの際には、学校の先生方と素晴らしい連携プレーで、あっという間に体育館の片付けを終了され、日頃からの素晴らしい教育を垣間見ることができました。ワンちゃんが苦手という子ども達も素直に手を挙げ、プログラムに参加していましたが、グループに分かれてふれあいをする頃には、お友達と一緒に、ワンちゃんとの出会いを喜んでいました。最後には、6年生の代表の方のお礼の言葉があり、訪問は終了しました。

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 この日は、熊本県から2組の飼い主さんとパートナーのワンちゃんが駆けつけてくれました。終了後、「私たちが来れたのは、偶然被害が少なかったからで、未だ未だ熊本は大変です。今日は、あんなに(子ども達が)笑ってくれて、こちらが、励まされて、元気を貰いました」とお話しして下さいました。

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 柴内先生は、長い間「人と動物の絆」について、私達を導いて下さっています。柴内先生がご継続されているこのCAPP活動の素晴らしさは、「伴侶動物とのパートナーシッププログラム」という名称の通り、ボランティアさんとそのパートナーであるご愛犬との絆が、活動の現場に集まる方々との人と人、人と動物の絆へと転換していき、その転換の過程を人々がそこで体感し、共有することができるということなのだということに、改めて気が付きました。これからの社会は、高齢化社会を迎え、第2の人生として伴侶動物との暮らしを楽しまれる方も増えるかと思います。例えば、そのような方が、このようなボランティアとして参加をされ、人と動物、人と人との絆を地域の子ども達に伝える姿そのものが、今回、大村市教育委員会が目標とされた、「ぬくもりや心の豊かさ、自他を大切に想う心」を地域で伝えていくことになるのではないでしょうか。家族の一員、つまり地域の一員でもある動物達にも、そのような役割を果たして貰うことは、社会として望んでいいことなのだと思います。

その際に、獣医師の先生が、その真ん中に立って、プログラムの実施における諸条件の確認・保障と社会的責任を担っておられることが、このプログラムの具現化を可能にしています。今回も、地元大村の堤 清蔵先生が大きな役割を果たしておられました。

人と動物、人と人の絆の素晴らしさを体感させて頂いた2日間でした。 柴内先生、本当に有難うございました。

 

公益社団法人Knots 理事長 冨永佳与子

 

CAPP ボランティアさんとパートナー

(大村)
浦郷 多恵子さん  メイ (ラブ・ゴールデンのmix) メス 7才 *講演会出演
池田 純子さん チャゲ(トイプードル) オス 13才     *講演会出演
野口 美佐子さん  クルワ (トイプードル) メス  7才
佐藤 千穂 さん  ヌカ(トイプードル) メス  9才

(熊本)
佐藤 亮さん ナツコ(トイプードル)メス 11才 
坪井芳子さん ベル( ラブラドール・レトリーバー)オス 12才