日本ペットサミット 「ペットと暮らす高齢者:支えるシステムを考える」 報告

●開催日時:3月7日(月) 18:00~20:00
●場所:東京大学動物医療センター4Fゼミ室
 
西村会長

西村会長

 3月7日、東京大学動物医療センターにて、第1回の日本ペットサミットの例会が開催されました。例会の目的は,どうぶつ達と共に暮らす社会をつくるために尽力されている団体の活動を盛り上げていくものです。
星先生

星 旦二 先生

 今回の基調講演では、「我が国の高齢者における犬猫飼育と2年後累積生存率」という題目にて首都大学東京名誉教授である、星 旦二先生による、ペットと暮らした高齢者とそうではない高齢者での2年後の生存率についての研究結果を発表していただきました。

 もともと人間の長生きに関係するものは何なのかということについて研究されていた先生ということもあり、序盤は「どんな条件が揃った人間が長生きする傾向にあるのか」ということについて、様々な観点から研究結果を発表していただきました。

 人の「長寿の秘訣」と聞くと「健康的(バンランスのとれた)食事」や「しっかりとした運動」という印象をもたれるかと思いますが、統計学的に見たときに、実は「総コレステロールが高い」や「住居環境が整った住宅に住んでいる」や「かかりつけの歯科医師がいる」といった事実が重なったときだそうです。そしてなによりも「夢を持っている」ということが長寿への重要な条件であることがわかったそうです。

 また、収入の相関性もあるとのことでしたが、その背景には身体的・精神的ケアができているからこそしっかりと働けていて、健康でいられる。ということがあるからこそなのだそうです。

 また、「自分で健康だと思っている」という人は実際に長生きする確率が高いということも立証されており、「病は気から」という言葉は実際に存在しているとのことでした。

 そんな統計学的な話をいただいた後にペットと暮らした場合の実験結果を報告していただきました。結果としてただペットを飼っている人が長生き。というわけではなく「ペットを飼って世話をしている人が長生き」という結果になったそうです。

 つまり、一緒に暮している時間や、散歩などで外に出ることなど、長寿の秘訣にあった身体的・精神的ケアがされることで生存率が上がった可能性があるとのことです。

 「自分が亡くなってしまったらこの子はどうなってしまうのだろうか」や「ペットを愛せている」という意識自体も自分自身の健康に寄与し、長寿の後押しになっているのかもしれません。

後藤先生

後藤三枝子先生

 その後、日本動物病院協会のCAPP活動でチームリーダーをされている後藤三枝子先生より「高齢者と動物のふれあい&高齢者が引き続き動物と暮らすには」というタイトルで病院へ犬たちを連れていく活動報告をいただきました。

 高齢者がペットを触れ合うことで笑顔を取り戻し、幸福感を提供できており、触れ合っている本人以上に家族がよろこんでいるという話が印象的でした。

 そして、この活動をされている後藤さん自身が、今後この活動を支えてくれているペットたちと一緒に暮らし続けていく上で不安はあるものの、一緒にに様々な人々と触れ合っていけるということが励みになっており、今の活動を頑張り続けられているということでした。

 また質問では「犬が好きじゃない人もいると思うのだが、どうやって対応しているのか?」という質問に対して「嫌いな人に対しては、参加を希望するのかを確認しており、押し付けないようにしている」

 また、「嫌いな人でも少し遠くから見ているだけならよいという人もいたりする」と答えられていました。

 動物好きの人の意見を押し付けず、苦手な人の感情も考えながら取り組みを行っていくことは、活動をより多くの場所で行う上で大切なことだと思います。

 このようなケアを忘れずに、より多くの高齢者の方々と触れ合い続けていただければ、より多くの人の理解をいただき、もっと動物好きの人が増えると思います。

親跡先生

親跡昌博先生

 そして次に「高齢者のペット飼育支援における課題」というタイトルで,高齢者のペット飼育支援獣医師ネットワークの親跡昌博先生(まるち動物病院)が活動報告を含め「高齢者が動物を失ってしまう、飼いにくくなってしまうことに対して何ができるのか」という点についてお話しいただきました。

 高齢者の方々は自分の寿命や周りからの反対によってペットを飼うことを諦めることもあるそうです。

 しかし、そうやって飼うことを諦めてしまうことで生活が急変し、以前の元気をなくしてしまうことも多いとのこと。

 そんな問題をどうにか解決できないかとNPO団体を設立されたそうです。

  実際に飼育した高齢者たちは「自分が動かないとこの子が大変なことになる」という意識から自分の体を奮い立たせて行動しており、公園に出れば犬に詳しい人に出会えることでコミュニケーションも図れるなど、充実した生活と健康を手に入れられています。

 もともと飼っていた人がまたペットと生活を共にすることで元気を保ち続けられる、そういう生活を支援できるように今では「ペットのしつけの相談」や「通院の補助」「重量が重いペットフードの宅配」など様々な点で高齢者とペットの生活を支援されているとのことでした。

 そして最後に親跡先生が活動を通して感じたこととして、「ペットを飼育したいけどどうしたらいいのか?」という高齢者に対してどのようにコミュニケーション取るべきなのか,という課題に対しては次のように語っていました。

 ちゃんと家族の意見も聞いてみることや譲渡団体にまず聞いて見るなど、自分たちがちゃんとハブ(拠点)になるべきだとおもうし、ペットを飼うことをあきらめないでほしい。また、ペットは犬猫ではなくて、他の動物でも良いと思う。

総合討論

総合討論風景

 今回も前回のセミナー同様に全員で「どうするべきか」を考え、発言する場だったと思います。

 高齢者がペットを飼育する上で、自分自身の体力面や残りの寿命など、様々な点から飼うことを諦めてしまう人が多いのが現場です。しかし「だから飼育するのは難しい」ではなく「どうやったら飼ってもらえるのか」という考えを持ちながら各分野の人たちが協力し合い、より多くの高齢者がペットと幸せな生活を送りやすい社会を実現できるようにしていかなくてはならない,と感じた時間でした。

Knots 正会員 小早川 斉