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2016.10.31

【報告】日本身体障害者補助犬学会 第9回 学術大会「市民公開講座」

日本身体障害者補助犬学会 第9回学術大会
10月29日(土)「市民公開講座」報告

 *Knots 理事長 冨永が、同学会プログラム委員を務めさせて頂きました。

2016年10月29日(土)、神戸空港に於いて「日本身体障害者補助犬学会第9回学術大会」の一環として補助犬デモンストレーションの市民公開講座が開催されました。ゲストにタレントのタージンさん、また50歳の頃に難病の網膜色素変性症で視力を失われ、現在、盲導犬・デイリーと生活を共にしておられる桂文太師匠を迎えて和やかに行われました。この公開講座が空港で行われることはとても重要なことで、公共交通機関の一つである空港が身体障害者の方々にとって使いにくいと言われている場所であることから、空港関係者にも理解を深めてもらいたいという思いから様々な空港で開催されているそうです。

 

まず初めに、公益社団法人 関西盲導犬協会による盲導犬のデモンストレーションが行われました。現在、全国で盲導犬のユーザーは1,000人弱だそうです。また盲導犬は長い待ち時間が多いため、いつでもどこでも眠れる子が向いているとのことでした。

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目の不自由な方は、白杖を使って階段などの高低差を測るそうですが、この白杖の代わりに盲導犬がユーザーを誘導します。ハーネスの角度によって、ユーザーは段差の落差を知り、ハーネスが元の位置に戻ったら階段が終わったということを知ります。また盲導犬は左側につき、立ち止まって曲がり角をユーザーに知らせます。実際に盲導犬・へーゼルがその様子を見せてくれました。

桂文太師匠によると、急に犬に触る人がいてすごくびっくりすることがあるそうです。盲導犬には勝手に触らず、「何かお困りですか?」などとまずユーザーに声がけをしていただけたらとのことでした。また、盲導犬には信号はわかりません。車の走り出す音や雑踏などで判断するのだそうです。こんな時、無理な横断や信号無視をする人などによって困ることがあるそうです。わかりにくい信号なども困るそうで、やはりそういう時は周りにいる人間が気を配り、声がけをすることが大切になってきます。そして白杖を持っていて入店拒否されることはありませんが、盲導犬だとまだまだ入店拒否をされる場合があるそうです。盲導犬の普及と共に、私たち一人一人が盲導犬についての理解を深めることがとても重要であると感じました。

 

続いて、特定非営利活動法人 兵庫介助犬協会による介助犬のデモンストレーションが行われました。やはり、介助犬も待ち時間が長いことから、長く待てる子が向いているとのことでした。介助犬の活動は平成に入ってからで、約10年ほどになるそうです。全国で活躍する介助犬は72頭。介助犬の特徴は、ユーザーの指示に従って行動するということです。この日は落としたものを拾う、携帯電話を探して持ってくる、冷蔵庫の中から飲み物を取ってくる(冷蔵庫を開ける、飲み物を取る、閉めるという動作ができます)、靴や靴下を脱がせるという動作を介助犬・バービーが実際に見せてくれました。落としたものを拾う時には「テイク」と声をかけ、「ギブ」と言う声かけでユーザーに落とし物を渡します。介助犬がいなければ、いちいち人にお願いしなければならず、それが億劫で引きこもってしまう方もいるそうです。携帯電話は、決まった場所になくても介助犬が自分で探して持ってくることができるそうです。携帯電話があれば、万が一、転倒してしまった時などにも家族にすぐに連絡ができます。介助犬は右からも左からも介助できるように訓練することができ、訓練はユーザーと犬と訓練士一緒に行うそうです。訓練ではボールを使ったり、バンダナを引っ張り合いっこしたりして行われます。冷蔵庫を完全に閉めることはとても高度なテクニックで、鼻先に手のひらを押さえつけて「プッシュ」と声をかけて訓練するそうです。携帯や飲み物にはあらかじめ紐をつけておきます。介助犬は本体をくわえることなく、紐をくわえるので本体を傷つけることなく持ち運びができます。

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最後に一般社団法人 日本聴導犬推進協会による聴導犬のデモンストレーションが行われました。聴導犬は動物愛護センターなどから引き取られた雑種や小型犬などを訓練していることが特徴で、現在64頭が活躍しているそうです。聴導犬は犬が自分で判断して動くということが特徴的で、様々な音に囲まれた中、音の鳴る物に集中をして、音が鳴ったらまず確認をしてそれからユーザーに知らせます。訓練はキッチンタイマーを使って行われるそうです。外出中、見た目は健常者に見える聴覚障害の方は、後ろから自転車や人が来てもわからないことを理解してもらえないため、道を開けないことを嫌がらせだと思われることもあるそうです。そんな時、聴導犬がいれば、振り向いて知らせたり、ハーネスに「聴導犬」と書いてあることから周りからの理解も得やすいそうですが、雑種や小型犬なのでペットと間違われることも多いそうです。この日は聴導犬・アーミが実際に訓練の成果を見せてくれました。

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この後、タージンさん、桂文太師匠も交えてのトークセッションが行われ、桂文太師匠は相棒・デイリーのユニークなエピソードなどもお話下さいました。この日は3種類の補助犬のデモンストレーションを見学することができましたが、やはり大切なことは、私たちが今日知ったことを人に伝えるということです。ユーザーの方からは、一人でも多くの人に伝えて知ってもらいたいとの声がありました。そして、桂文太師匠からは周りの人の理解、犬ではなくユーザーに声をかけること、階段などに座らないといった当たり前のマナーが守られないと大きな事故につながることもあるということを教えられました。タージンさんは、同じマンションに盲導犬がいるけれど、介助犬や聴導犬については知らなかったとのことで、やはり今日見て感じたことを人に伝えることが大事であると仰っていました。

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最後に補助犬に関する「さしすせそ」が紹介されました。さ=触らない、し=静かに見守る、す=すっとよける、せ=席を変わる時は丁寧に、そ=そっと見守る。ちょっとしたことでユーザーや補助犬が大変な事態になることもある(死亡事故にもつながる)ので、温かい支援をよろしくお願いしますと呼びかけられました。